働きやすいプロジェクト環境のために
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〜お願い上手になりませんか〜

銀杏(ペンネーム) [プロフィール] :4月号

 読者の皆さんは、一日に何回くらい「よろしくお願いいたします」と書いたり言ったりしていますか?数えてみると、意外と多いのではないでしょうか。もし、「上手にお願いするスキル」があるとしたら、それを向上させたいと思いませんか。今回筆者は、この「お願いするスキル」に注目して、その要素を分解してみました。もしかすると、お願いが上手になるかもしれません。

  「お願いをきいてもらう」ことは「ソーシャルサポートを得る」こと

 相手に「お願いをきいてもらう」ことは、「ソーシャルサポート」と呼ばれるもののひとつと考えられています。ソーシャルサポートとは、対人関係をもとにそこから得られる支援のことで、@情緒面に働きかけるサポートと、A問題解決のために資源を提供するサポートの2つがあります。具体的には、前者は、共感する・慰める・勇気づけるなどのことです。後者は、お金を貸す・情報を提供する・仕事を手伝うなどがあります。
 ビジネス上では、このソーシャルサポートの後者を活用して「自分の問題解決のために相手の“資源を提供するサポート”をどう引き出すか」が重要です。仕事をしていると、時間配分や仕事の分担などを同僚や上司と調整したり、お願いしたりすることが多いでしょう。特に、仕事以外に何かをやりたいこと、〜例えば大学でもう一度勉強したいとか、趣味の時間を持ちたいとか〜、そのような自分のやりたいことがあったとしたら、時には、上司・部下・同僚に仕事を変わってもらったり、家族に休日の時間をもらったりしなければなりません。もし、「上手にお願いするためのスキル」というものが存在し、それを身につけることができれば、ハッピーではないでしょうか。

 ソーシャルサポートを得られやすいスキルとは

 私は、ソーシャルサポートに興味があったので、どのようなスキルを持つと、周りの人のソーシャルサポートを得られるのかというのを計ってみたくなりました。大学の先生に相談すると、それはどうやら「社会的スキル」と関連しそうとのことです。「社会的スキル」とは、対人関係を円滑に運ぶために役立つスキルのことです。そこで、社会的スキルを測る質問を使って、アンケートをとりました。同時に、職場の人や家族のソーシャルサポート関係も調べてみました。
 その結果、社会的スキルの中でも、「計画を立てるスキル」と「相手を助けたり和解したりするスキル」があると、周りの人からのソーシャルサポートを受けやすいということが分かりました。「計画を立てるスキル」は、問題の原因を発見する、目標を設定するなど、相手と協力して仕事をすすめるためのスキルです。「相手を助けたり和解したりするスキル」は、許可を求める、分け合う等、自分から他人への行動を能動的に起こすスキルです。

 それらのスキルを高めるには

 では、この2つのスキルを高めるにはどうしたらよいのでしょう?
 まず、「計画を立てるスキル」を持つ人は、自分の時間と仕事や家族との時間配分を、事前に明確にできるだろうと思われます。その計画性が、メンバや家族に安心感をあたえ、まわりからのソーシャルサポートを引き出すのではないでしょうか。このスキルを高めるには、以下のようなことができるようになることを目指すと良いようです。
仕事をするときに、何をどうやったらよいか決められる
仕事の上で、どこに問題があるのかすぐに見つけられる
仕事を始めたら、そのことに集中できる
 もうひとつの、「相手を助けたり和解したりするスキル」がある人は、上手に他人を助けられたり、人間関係上のトラブルを上手に処理できたり、気まずいことがあった相手と上手に和解できます。実は、このスキルの話の原典(注)では、「相手との付きあいの中で、時々起こる、相手を攻撃したいという気持ちをコントロールする力(攻撃に代わる力)」などと説明されています。攻撃したいという気持ちを、すぐに行動に移したり身体的攻撃で示したりすれば、対人関係を悪くしてしまいますので、その気持ちを何かに変えることが重要なのでしょう。具体的には、下記のようなことです。
相手に許可を求めなくてはならないときに、上手にそれができる
自分の大切にしているものを、他人に分けてあげられる
自分の気持ちをうまく押さえることができる
必要なときには、自分の権利を上手に主張することができる
まわりの人たちからいじめられても、それにうまく対応できる
少しくらい失敗しても、ファイトを保つことができる
 まずは、このようなことができるように、目指したいものです。
 会社での仕事やプロジェクトは、メンバからのソーシャルサポートを得られると良い運営ができると思います。このようなスキルを高めることは働きやすいプロジェクト環境のヒントになるのではないでしょうか。

(注)「社会的スキルを測る:KiSS-18ハンドブック」 菊池章夫編著 川島書店

 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
花水木(はなみずき、以下「は」)「はぁぁ、どうしようかなぁ・・・」
木犀草(もくせいそう、以下「も」)「どうしたの?」
は:「うーん、行きたいコンサートがあるんだけど、その日に会議が入っちゃってさ、どうしようかなと思って。」
も:「会議ってあれでしょ、春の全体編集会議でしょ?」
は:「うん、そうなの。あのさ、もくちゃん、悪いんだけど、事前準備はやっておくから、代理出席お願いしてもいいかな。30分ぐらいで終わると思うんだ。」
も:「うん、30分なら楽勝だよー。代理で出ておくよ。コンサート楽しんできて。」
は:「わーありがとう!!すっごく嬉しい!」
も:「編集長はお願い上手だよね〜。理由がハッキリしてるし、できるところまで自分でやって段取りつけてくれるから、こっちも、いいよって思うもん。」
は:「ほんと?でも、うまくお願いできる相手と、お願いが難しい相手がいるんだよねー。」
も:「わかるわかる!私は何かお願いしたときの相手の反応が悪かったら、お願いしたくせにイラっとしちゃうねん。」
は:「もくちゃんは分かりやすく態度に出ちゃうよね。笑」
も:「あ、バレてる?そうやねん。”相手を助けたり和解したりするスキル”を、今年の目標にしようかな。」
は:「スキルが具体的だと目標にしやすいね。」
も:「じゃあ、さっそくお願いなんだけど、あれと、これとそれと・・・・」
は:「ちょっと、ちょっと、お願いの前に、この原稿をもう一回校正してね。やることはちゃんとやらなきゃダメだよ!」
も:「おっと、そうでした。編集長の計画性のスキルには敵わないわ。笑」


 編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
PS研究会メンバーで、IT業界のなんちゃって技術職。現在は、流れ流れた末に、研究機関に勤務し、ITエンジニアのスキルアップとキャリアを研究している。長年にわたり、プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求中。花水木の花言葉は「私の思いを受けて下さい」と「華やかな恋」。当コラムの編集チームの編集長。
 筆者・編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。本業ではIT企業の人材育成企画と並行してPMOを担当。現場を走り回ってます。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの副編集長。
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Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
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 バックナンバー
第43回目2010年3月号  〜分かってないことを分かる〜(木犀草)
第42回目2010年2月号  〜めげない心・折れない心〜(花みずき)
第41回目2010年1月号  〜じょうずに「ごめんなさい」〜(松葉簪)
第40回目2009年12月号  〜「ないよりまし」の方針の話〜(楠木)
第39回目2009年11月号  〜リーダーシップはあなたの中に〜(杉の木)
第38回目2009年10月号  〜コミュニケーションのきっかけ〜(山桜桃梅)
第37回目2009年9月号  〜人間関係の改善を脳科学から考える〜(万両)
第36回目2009年8月号  〜サポートチームと開発現場との愛のある関係〜(覇王樹)
第35回目2009年7月号  〜苦しい時には待ってみる〜(扁桃)
第34回目2009年6月号  〜ポジティブな雰囲気を醸し出すリーダシップ〜(木犀草)
第33回目2009年5月号  〜「終わりよければ‥・」は真にあらず〜(はなみずき)
第32回目2009年4月号  〜『ダイバーシティ & インクルージョン』を推進しよう〜(とりかぶと)
第31回目2009年3月号  〜メンバーの価値観を感じよう〜(あじさい)
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