働きやすいプロジェクト環境のために
先号   次号

〜リーダーシップはあなたの中に〜

杉の木(すぎのき:ペンネーム) [プロフィール] :11月号

 「リーダーシップ」という言葉から、先頭に立ってぐいぐい引っ張ることをイメージしますか?それとも、後ろから荷車を押すようなスタイルをイメージしますか?「リーダーシップ」は、よく使われる言葉ですが、人によって意外とイメージが異なるものです。今回は、リーダーシップを考えるキッカケを提供したいと思います。

  リーダーシップとヒーロー

 冒頭にも書きましたが、あなたのリーダーシップのイメージは何でしょう。
 ・リーダーシップを発揮して、みんなをひっぱっていくのだ。
 ・リーダーシップとは、メンバー全員のことを理解することだ。
 ・リーダーシップとは、無償の愛を提供するものだ。
 様々なイメージが浮かんだのではないでしょうか。“リーダー”“シップ”といった単語から連想する人、自分の行動ポリシーを思い浮かべる人、あるリーダーを思い浮かべ、その人の行動スタイルがリーダーシップだ、という人もいるでしょう。リーダーシップを発揮する状況は、人によって様々です。そのため、人によって言葉のイメージが異なるのです。マインドルという学者がこんなことを言っています。
 「リーダーシップとは、ロマンス、ヒーローの待望に近い。」
 面白い定義ですね。この理論によると、リーダーシップとは、人々の期待感をあらわしているそうです。“ロマンス”や“ヒーロー”を待望するように、人はリーダーシップという言葉を使うそうです。
 例えば、プロジェクトがうまくいかず、寝ても覚めてもそのプロジェクトのことを考えて頭が痛いとき、「正義の味方が現れて、さっと問題を解決してくれないかな」「だれか優しい言葉で癒してほしいよ」と考えたことがありませんか?マインドルによると、実はそれが“リーダーシップ”だというのです。誰かに何とかしてほしいときに使う言葉が、“リーダーシップ”だなんて、新しい発想ですね。

 あなたの中のリーダーシップ

 現実には、トラブルプロジェクトの最中に、突然あらわれたヒーローがさっと問題を解決してくれることは滅多にありません。ヒロインが優しく世話をしてくれることも、まずありません。でも、「こんな風に解決したい」、「こんなことをやってプロジェクトを立て直すのだ」と想像したとき、あなた自身は、リーダーシップを発揮できる状況にあります。あなたに浮かんだヒーロー、ヒロインのイメージは、あなたが発揮したいリーダーシップなのです。
 ただ、リーダーシップを、あなたのイメージどおりに発揮するのはなかなか難しいです。あなたがイメージ通りに動いても、周りが同じように動いてくれるとは限らないからです。なぜ、周りが同じように動いてくれないのでしょうか。それは、あなたの考えるリーダーシップのイメージと、あなたの周りの人が抱くリーダーシップのイメージが違うからなのです。では、どうすれば良いのでしょうか?

 状況ごとに使い分ける

 うまくリーダーシップを発揮するために、二つの手が考えられます。
 一つ目は、メンバーが抱くリーダーシップを聞いてみること。それぞれ話しをすることで、プロジェクトに対する思いや、リーダーへの期待を分かり合うことができます。
 二つ目は、タイミングの問題です。今ここで発揮してほしい、という状況を把握し、ぴったりのタイミングでリーダーシップを発揮することです。
 これらに気をつけながら、時と場所、プロジェクトによって、リーダーシップのスタイルを使い分けるとよいのです。スーパーマンに来てほしいときと、マザーテレサに来てほしいときが異なるように、相手や状況によってリーダーシップを使い分けるのです。
 たとえば、会社の命運をかけた大プロジェクトと、プログラムを数本開発する程度の小プロジェクトでは、問題の発生する状況が異なります。大きなプロジェクトは、期間は長く、関係者も複雑です。パンチ1つで解決するほど問題は簡単ではありません。息の長いリーダーシップの発揮が必要で、公平にメンバーに気を配り、励まし、時には叱咤し、と、メンバーへの配慮の質が決め手になります。水戸黄門が難事件を解決しながら、長い旅を続けたのに似ているかもしれません。
 小さなプロジェクトは、期間は短いため、メンバーと一気に乗り切ることが必要です。そのための関係づくりが重要になるでしょう。メンバーの心をしっかり掴んでおくと、その後、少しぐらい放って置いても自立的に動いてくれるようになります。
 要は、プロジェクトの状況とメンバーの状況に照らして、リーダーシップのスタイルを使い分けるとうまくいくということです。

 成長するリーダーシップ

 ロマンスは人によって違うものですから、リーダーシップも人によって異なって当然です。時には、そのことで周りの人とケンカになるかもしれません。しかし、自分の枠をつくらず、理想を大切にすることが大切です。そして、あなたが自分の理想を大切に思うように、周りの人もその人の理想を大切にしています。ほんとうのリーダーシップはそのことに気づくことから始まります。
 もし、あなたの考えるリーダーシップと、周りの人の考えるリーダーシップが異なるのであれば、チャンスです。それを言葉にして紙に書いて確認しあいましょう。どんなヒーローに来てほしいのかを、みんなでしっかり確認しあうのです。そして、それに近づくために、何をすればいいのかを考えればいいのです。
 理想を大切にすることと、理想に固執することは別物です。状況は刻々と変化しますから、「これでなくちゃダメ」というリーダーシップはありません。状況を確認し、都度、理想のリーダーシップを考える。この繰り返しが、あなたがヒーローになる近道なのです。
 リーダーシップとは、あこがれの自分に近づくためのツールなのかもしれません。

 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
花水木(はなみずき、以下「は」):「ねぇねぇ、もくちゃんのヒーローとかヒロインって誰?」
木犀草(もくせいそう、以下「も」):「うーん、子供の頃は、必殺仕事人に憧れたなぁ。特命係長も好きだし。ヒロインだと、うる星やつらのラムちゃんとか、ルパンの峰不二子。」
は:「世代感バラバラだね。笑 ・・・で、どの辺りがいいの?」
も:「正義の味方っていうか、なんか筋が通ってるところがいいんよね。強そうに見えないのに、ここぞって時に強いのがいいんだな。」
は:「なるほどねー。ってことは、もくちゃんの理想のリーダーシップって、遊び心があるのに筋が通ってるコトなのかもね。」
も:「ふぅむ!一理あるかも。楽してるけど、ちゃんとやるってスタイルに憧れるもんなぁ。」
は:「それにしても、リーダーシップ論って色んな理論があるんだね。」
も:「このマインドルさんが言うように、ロマンスみたいなもんだってんなら、百人いれば百通りってことだもんね。」
は:「私たちもまだまだ勉強しなきゃいけないね!」
も:「そうだねー。編集長って、私にとっては身近なヒーローだね!ここぞってときにピリっと締めてくれるもん。」
は:「お、それ誉めてくれてんの?嬉しいな〜。でも、それを言うならヒロインだぞ!笑」
も:「ありゃりゃ。突っ込みの鋭さは、必殺仕事人だな〜。笑」


 編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
PS研究会メンバーで、本業はIT企業の技術職。長年にわたり、プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求中。花水木の花言葉は「私の思いを受けて下さい」と「華やかな恋」。当コラムの編集チームの編集長。
 編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。本業ではIT企業の人材育成企画と並行してPMOを担当。現場を走り回ってます。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの副編集長。
 このコラムについてのフィードバック:  こちらまで、お気軽にお寄せください。感想、コメント、激励、お問い合わせ等、なんでも大歓迎です。
Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
ページトップに戻る
 バックナンバー
第38回目2009年10月号  〜コミュニケーションのきっかけ〜(山桜桃梅)
第37回目2009年9月号  〜人間関係の改善を脳科学から考える〜(万両)
第36回目2009年8月号  〜サポートチームと開発現場との愛のある関係〜(覇王樹)
第35回目2009年7月号  〜苦しい時には待ってみる〜(扁桃)
第34回目2009年6月号  〜ポジティブな雰囲気を醸し出すリーダシップ〜(木犀草)
第33回目2009年5月号  〜「終わりよければ‥・」は真にあらず〜(はなみずき)
第32回目2009年4月号  〜『ダイバーシティ & インクルージョン』を推進しよう〜(とりかぶと)
第31回目2009年3月号  〜メンバーの価値観を感じよう〜(あじさい)
第30回目2009年2月号  〜プロジェクト現場における「親」たるべし〜(金木犀)
第29回目2009年1月号  〜群群力(ぐんぐんりょく)アップのすすめ〜(行者大蒜)
第28回目2008年12月号  〜リーダーとしての行動の原点〜(糸瓜)
第27回目2008年11月号  〜働きやすい環境を実現するためにPSができること〜(松ぼっくり)
第26回目2008年10月号  〜途中参入者が教えて欲しいこと〜(木犀草)
ページトップに戻る