働きやすいプロジェクト環境のために
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〜サポートチームと開発現場との愛のある関係〜

覇王樹(サボテン) [プロフィール] :8月号

 プロジェクトには、現場でお客様と向き合う担当者以外にも、サポートチーム−いわゆるPMOのメンバーや、標準管理チーム、技術検証チームなど−プロジェクトのサポーターとして参加する役割の人がいると思います。今回はこのようなサポートチームと開発現場が、よりよく協同してプロジェクトを成功させるためのノウハウを考えてみたいと思います。

  開発現場とサポートチームの対立

 開発現場は「お客様が求める商品を作る」ということを目的として動いています。一方で、ドキュメントの作成や進捗管理、品質や契約書のチェックなどの専門ノウハウをもつサポートチームの作業も欠かせません。ところが、同じ目的を共有しているはずの現場とサポートチームが、対立する現場を見かけることが少なくありません。もし対立がない現場であれば、それはとても幸せな環境です。
 サポートチームは、定義されているドキュメントが正しく運用されていることのチェックや、進捗遅れの指摘など、開発現場の問題点を指摘することが多いので、開発現場から敬遠されることがあります。このことが緊張や対立関係を生む原因となっているようです。
 サポートチームとの対立関係がある現場は、現場内のセクション意識や仲間意識が強いことが多く、外部からの意見に反発しがちです。しかも、サポートチームの指摘は、必ずしも開発現場に直接的なメリットを与えるとは限らないため、なかなか受け入れにくいようです。これは両者の信頼関係ができていないから起こることだと思います。反対に、信頼関係が築けている場合は、サポートチームの指摘が、開発現場の中からの意見のように感じられ、スムースにことが運ぶのではないでしょうか?
 本来、同じ目的を共有しているはずのチーム同士の信頼関係を作るには、どうすればよいのでしょうか。

 毎日短く会う

 筆者は長年、このようなサポートチームで仕事をしてきた中で、次のような点に気をつけてお互いの関係がスムースに運ぶよう心がけています。
 まず、心掛けていることは、毎日開発現場に足を運び、メンバーと会話をすることです。ここで大事なことは、一度に長い時間をかけて会話するよりも、毎日、邪魔にならないほどの短い時間でよいので会話の回数を増やすことです。繰り返し会うことで精神的・物理的の両面において、相手の警戒心を解き、信頼関係を高めることができます。
 心理学では「単純接触仮説」と「好意の返報性」と呼ばれる考え方があり、前者は「接触頻度を高めるほど相手への好感度が増す」、後者は「自分を好きになってくれる人を好きになる」というものです。サポートチームが毎日、開発現場を訪れて短い会話をし、さらに現場の努力を認めるサインを送れば、両者の関係は良好になることでしょう。対立が愛に変わるかもしれません。

 細かい問題解決も

 近年の開発は短納期であるため、迅速な問題解決が求められます。このような環境下では、サポートチームの仕事としてドキュメントの運用方法や指摘をすると、開発現場のメンバーにとって余分な手戻り作業と感じられ、プロジェクトの遅れの一因になると思われがちです。
 そんなとき、サポートチームが開発現場で抱える問題を、すばやく解決してみてはどうでしょうか。プロジェクトに直接関係するような技術的な問題を現場に代わって検証したりできればベストですが、日常的に発生するような些細な問題や要望への対応でもいいのです。例えば、「設計やプログラムに関する議論を手軽に行えるような場が欲しい」や「決定事項や連絡事項を正確かつすばやく開発メンバーに通知する手段が欲しい」などという要望について、何かを提供してみてはどうでしょうか。
 現場で日常的に発生する小さなストレスを軽減するだけで開発現場は仕事がしやすくなり、開発現場のメンバーに対してサポートチームのメリットを感じてもらえます。元々、プロジェクト成功という目的は同じなのですから、一緒に問題を解決することで、一体感を醸成することができるでしょう。
 どれだけ開発言語やツールが発達したとしても、プロジェクトはやはり人と人とのつながりで成り立っていると思います。世の中にはプロジェクトを成功に導くための開発プロセスや新たな開発言語、ツールが存在していますが、どのような方法も「人と人」を意識して利用しなければ成功に導くことはおろか、開発現場のメンバーとも上手に付きあうことができないと感じています。

 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
花水木(はなみずき、以下「は」)「そういえばね、友達がその彼から毎日、欠かさず短いメールが来るって話しを思い出したよ。そのマメさに、思わず好きになっちゃうのだって」
木犀草(もくせいそう、以下「も」)「積み重ねの勝利やね!毎朝、守衛さんに挨拶してると親近感が沸いたりするもんね。」
は:「あるある。」
も:「ある人が、サポートチームってのは、まず存在を知ってもらうのが大事って言ってたよ。次が、協力しあうで、その次が仲間と思ってもらう、なんだって。」
は:「へぇ〜。人間関係の成長モデルと同じなんだね。知ってもらって、協力して、信頼がうまれ・・・その先には、愛!?」
も:「おお、ロマンスやねぇ。じゃあ、まずは存在を覚えてもらうために、毎日、声をかけようっと!」
は:「え、ダレに!?」
も:「社食の定食コーナーのお姉さん。知り合いにはコッソリおかず大盛りにしてくれるんだって!」
は:「ちょっとちょっと、結局は食べ物なのぉ!?笑」


 編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
PS研究会メンバーで本業はIT企業の技術職。現在は、教育企画部門に所属し、現場に役立つ研修を試行錯誤している。長年にわたり、プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求中。花水木の花言葉は「私の思いを受けて下さい」と「華やかな恋」。当コラムの編集チームの編集長。
 編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの副編集長。
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Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
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