働きやすいプロジェクト環境のために
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〜チームビルディングに終わりはない〜

まりも(ペンネーム): [プロフィール] :7月号

 私は6年前から、所属するプロジェクトが開催する「チームビルディング」合宿研修の運営に携わっています。今回は、そこでの私の経験を踏まえて、チームビルディングを「継続する意義」についてお話ししたいと思います。

  チームビルディングはプロジェクトの土台づくり

 私たちのチームビルディング研修は、プロジェクトメンバ全員が参加する一泊二日の合宿研修として半年に一度、定期的に開催しています。プロジェクトメンバは、自社だけではなく、協力会社およびそのマネージャを含み、複数の企業にまたがっています。合宿研修は、外部講師の支援のもと、さまざまな演習や話し合いを通して、業務におけるコミュニケーションの重要性について考えることを目的としています。
 チームビルディングを実施する前は、プロジェクト内のコミュニケーションが円滑とはいえない状態でした。お互いを良く知らないため、どのように話しかけて良いのかさえわからなかったり、相手に伝えた言葉が自分の意図とは異なった解釈をされたりすることが頻繁にありました。お互いの業務の状況がわからないために、所属するサブチームの都合で勝手に業務を進めてしまうこともあり、チームで連携してプロジェクト全体を進めることが難しい状態でした。
 初回のチームビルディング後、このような状態が目に見えて変わりました。まず、それまでピリピリとしていた職場から笑い声が聞こえてくるようになり、見た目にもプロジェクト全体の雰囲気が和やかになりました。所属を越えた話し合いが持たれるようになり、プロジェクト全体を改善する建設的な議論が行われるようになりました。私自身、2日間の合宿研修でこんなにも雰囲気が変わるかと驚き、業務はコミュニケーションが土台となって成立していることを改めて認識しました。
 多くのプロジェクトは、さまざまな企業や組織に所属するメンバで構成され、短期間に成果を出すことが求められます。プロジェクトのゴールを目指すためには、チームで助け合いながら、それぞれの能力を発揮することが重要です。多種多様な考えや思想を持ったメンバが、個々の違いを認識し、他者を理解することがその出発点であると思います。私たちの実践するチームビルディングは、相互理解のためのきっかけを作り、プロジェクトでコミュニケーションが重要であることを共通認識とする、つまりプロジェクトの土台を作る作業そのものと考えています。

 チームビルディングは「継続がチカラなり」

 6年の間に、プロジェクトの状況や所属するメンバはずいぶん変わりました。現在、初回から参加しているメンバは全体の約2割です。メンバが少しずつ入れ替わりながらも、前回の参加者たちが新規の参加者を巻き込み、ムードをもりあげてくれます。
 6年間を通して、「業務におけるコミュニケーションの重要性を考える」という基本テーマは変えていませんが、合宿研修での具体的な演習や議論する内容は毎回、変えています。チームビルディングで「何かを納得するきっかけ」は、人によって異なります。そのため多種多様なメンバに合わせて、さまざまなアプローチで多角的に実践する必要があるのです。アプローチを変えることによって、いろいろな人のいろいろな納得ポイントの隅々まで、広く深く届くことが可能になります。また、このような違いがあるということ自体が、お互いの違いを認識し、認め合うためのきっかけのひとつにもなっています。
 チームビルディングを継続することで変わってきたことがあります。まず、1年半位経った頃から、メンバのプロジェクトへの参加意識が変わってきました。業務や職場環境についての要望や改善案が出るようになったのです。たとえば、他チームの状況が不明なので全体で進捗状況を共有してほしいという要望や、プロジェクト内の負荷に偏りが出ているという気遣いが見られるようになりました。次のチームビルディング研修で使いたい、新しい演習のアイディアも出てくるようになりました。
 さらに回を重ねると、プロジェクトを円滑に進めるための具体的な活動を自主的に実施するようになってきました。たとえば、全体やサブチームの状況を分かりやすく「見える化」するためのツールの導入や、サブチーム内のメンバ同士による助け合い、業務理解を促進するための自主的な勉強会などです。「こうしてほしい」と求めるだけではなく、「こうしていきたい」「こうしよう」とメンバが自主的に動くようになってきたのです。
 私は「チームビルディングは、合宿研修の時だけに行うものではなく、日々積み重ねていくもの」と考えています。業務の中でコミュニケーションを活性化しつつ、より良いチームやプロジェクトを目指して試行錯誤を繰り返す過程こそが、まさに「チームビルディング」なのです。また、チームビルディングは、一度経験したらその効果が永遠に続く魔法ではありません。チームを維持するための施策を、絶えず実践し続ける必要があるのです。チームビルディングによって、自分たちが働きやすい職場を自分たちで作ることに終わりはありません。まさに、いつも今、Team Build“ing”なのです。

 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
花水木(はなみずき、以下「は」)「この連載もけっこう長くなってきたよね。」
木犀草(もくせいそう、以下「も」)「そうやね、でも、毎回、著者が変わるから新鮮だし、新しい発見があって、編集してても楽しいよ。」
は:「同じメンバで新しい発見をし続けるって難しいけど、メンバが変わっても、同じ目標を同じ温度感で目指すのも難しいよね。」
も:「まりもさんの研修を見学に行ったことがあるんだけど、最初は、嫌そうな顔をしている人もいるねん。それが途中から、“a-ha!”って顔になったのよ。すごいなって思った。」
は:「まさに、研修を通してTeam Builud“ing”しているってことだよねー」
も:「そうそう。それで職場に戻っても、それが続いていて、また研修で新しい発見をして、ってサイクルが成長しながら回ってる感じ。」
は:「プロジェクトって動き続けるから、チームも変わり続けるんだろうね。それがプラスの方向に変わるためには、いろいろ仕掛けが必要ってことかな。」
も:「私たちも、動き続けないとねー。ってことで、新しい発見を探して次の原稿の仕込みをしなきゃ!いい仕掛けどっかにないかなー?」
は:「動き続けるのはいいんだけど、自転車操業にならないように気をつけなきゃね!笑」
も:「どき!がんばりまーす!笑」


 編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
PS研究会メンバー。IT企業の技術職、教育企画部門を担当後、現在はスキルや人材育成の研究職に従事。長年にわたり、プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求中。花水木の花言葉は「私の思いを受けて下さい」と「華やかな恋」。当コラムの編集チームの編集長。
 筆者・編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。本業ではIT企業の人材育成企画と並行してPMOを担当。現場を走り回ってます。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの副編集長。
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Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
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第45回目2010年5月号  〜働きやすい職場なんだけれど〜(松ぼっくり)
第44回目2010年4月号  〜お願い上手になりませんか〜(銀杏)
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第41回目2010年1月号  〜じょうずに「ごめんなさい」〜(松葉簪)
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