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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (24)
地政学的戦略を考えよう (12)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 3月号

A. 「アベノミクス成功の切り札として地政学的戦略を考えよう」ダイジェスト版
 このタイトルが本年のテーマであった。毎月それぞれ方々からのご意見をまとめてきたが、なにせテーマが最先端の戦略であり、生まれたてのM2M(Machine to Machine,Man, or Mono),IoT (Internet of Things)などを扱うわけで、いろいろな本や新聞等情報を集めながらの1年間だった。16年3月号を書くために、読み返してみたが、内容的に冗長的なところ、不足部分があり、全体として洗練された文章になっていない。3月号は新しいことを書くのではなく、この1年間を整理し、わかり易いストーリーにしてお目にかけることが重要だと思った。分かりやすいということは1.地政学を取り上げた理由を簡単に書く。2.全体の流れを書き、詳細はXX号参照として省くことにした。言葉を替えると、本書の読み方として、最初に読んでもらう指針をまとめたものと思って頂きたい。ダイジェスト版としたのは、3.ここまでで“アベノミクスの問題点”を末尾に記したかったからだ。4.来年度は何を書くか を示した。

1. 3月号の目次
2. 地政学的戦略論を書き始めた動機とシナリオ
3. 21世紀型地政学的戦略の構図
 3.1 金融ビジネス
 3.2 ビジネスモデル
 3.3 観光ビジネス
 3.4 プラットフォーム
4.アベノミクス成功への道と問題点
 4.1 空白の20年へのコメント
 4.2 地政学的戦略へのコメント
 4.3 プラットフォームマネジメントへのコメント
 4.4 アベノミクス成功への見通し
 4.5 日本的ムラ社会への警告
5.アベノミクス来年度は何を書く


1. 3月号の目次
 PMAJのP2M研究会はグローバルビジネスで必要とされる事項をテーマとして、啓蒙活動をしてきた。理由は日本には『日本的ムラ社会』という「ムラ」が社会に、企業内にそれぞれ存在し、日本人の多くは、この『日本的ムラ社会』に心地よさを感じている。筆者が所属した日揮には『日本的ムラ社会』と『グローバル・プロフェッショナル社会』が存在している。国内プロジェクトは顧客が『日本的ムラ社会』の住人だから、日揮の社員も『日本的ムラ社会』的精神の持ち主になる。筆者が国内プロジェクトから海外プロジェクトへ移籍したとたんに『グローバル・プロフェッショナル社会』が待ち受けていた。冷たいけれどリーゾナブルな社会である。ただ冷たければ耐えられないが、リーゾナブルという救いがある。リーゾナブルであれば顧客に勝ってもいいのだ。1990年以降グローバル市場で日本が敗れているのは、皆『日本的ムラ社会』の住人だからである。特に2000年以降の負け方が尋常ではない。ここで気が付いたのが戦略の地政学的変化である。そこで『日本再生、“アベノミクス”を成功させるために何が必要か』で地政学的戦略を考えようとした。そして米国の変化である。
 ソ連崩壊により、怖いものがいなくなった、国際金融資本は帝国主義化し、牙をむき出しにしている。地政学的戦略が【地理的空間利用】地政学から【電子的空間利用】地政学的戦略にかわって、行動が飛躍的に早くなり、悪魔的になってきた。研究会テーマとして地政学的戦略を考えようとした理由である。
 オンラインの4月号から2月号までを読み返してみた。テーマが新しいので勉強をしながら書いた。冗長な部分、不足な部分とが混在している。そこで3月号は4月号から2月までの内容のまとめをすることにした。
 日本再生、アベノミクスが、現在進行中の生きたプログラムであること。成功しないと公言する多くの専門家の声がある。確かに日本的ムラ社会の住人だけで実施しても勝てないだろう、それを乗り越えるのがPMの役割である。
 現在の経済とは、国外問題に影響されるということでもある。しかし、長年プロジェクトマネジメントの責任者を自負する人間にとって、プロジェクトは常に生きたものであり、変化を乗り越えて、常に成功させてきたから、変化は当たり前である。正直言ってアベノミクスの成功は多くの困難を抱えている。しかし、筆者としては部分的にでも成功できるものがあれば、大きな収穫と言えるという立場で書いている。

 読み返し、わかりやすくするのも困難であるが、自分なりに納得している部分は明確に書き、詳細はXX号参照とした。疑問を感じた箇所は内容をわかり易くする努力をした。そして、これは2015年度P2M研究報告書として残す予定である。

2. 地政学的戦略論を書き始めた動機とシナリオ
(1) 14年度はアベノミクスを成功させるには何が必要かというテーマに取り組んだ。研究者にはそれぞれにテーマを与えて、発表させた結果、問題点が整理できてきた。
日本は高度成長期でモノづくり世界一になったが、世界一を維持拡大する意思があるのか、グローバルに通用する戦略研究所を日本国は持っていない。世界一になれたのも、米国の忠実なフォロアーだったからだ。しかし、好景気に浮かれた多くの企業、庶民は、手持ちの金で財テクをはじめ、経済バブルを引き起こし、多くの企業の倒産の危機があった。国は失業対策も含めて国債の発行で救済活動を行ってきた。
日本のバブル発生の時期はソ連邦の崩壊の時期と重なり、世界中がデフレ状況となって、恐慌寸前の事態になっていった。また、先進国の経済成長を引き上げる技術革新も見えなかった。しかし、ソ連の崩壊で米国の資本主義は強敵の存在がなくなり、マルクスが指摘した帝国主義化の動きをし始めた。幸いなことに1995年にはインターネットがグローバル的に普及し始めていた。米国と国際金融資本は、成長率の高い新興国に目をつけ、新興国への投資を考えた。新興国とは中国、インド、ブラジル等、人口巨大な国がおおく、実質経済から得られた利潤を投資に回すには新興国の規模がはるかに大きかった。米国は1995年に時の財務長官ルービン氏が世界中の余剰のドルを米国に集め、世界に投資できる体制を確立した。しかしそれでも量的にかなりの不足があるため、FRBは実経済の100倍にも上るドルを発行し、大掛かりな投資を新興国に行った結果、新興国が急速に成長し、日本より低コストの商品が大量に生産され、特殊な技術を持つ企業以外の日本製造業は地盤沈下の憂き目をみた。
日本ではこれを空白の20年と言っているが、議論した結果、日本の官庁はじめ多くの日本企業は、今世界で起こり始めているグローバリゼーションの実態を理解することも、21世紀型のビジネス戦略の変化を研究することもなく、従来のビジネス戦略を踏襲しているという反省がある。P2M研究会としては今回グローバリゼーション下での戦略の変化を摘出した。

3. 21世紀型地政学的戦略の構図
グローバリゼーション下での金融・ビジネス戦略の実態調査
ここでは結論だけを示す
  3.1 米国の金融ビジネス戦略
21世紀型【電子・金融(バーチャルドルでの投資→リアルドルで回収)空間】戦略
詳細はオンライン6月号
図1 米国の「デリバティブ証券の論理」の誕生
図1 米国の「デリバティブ証券の論理」の誕生

 金本位制を離脱した米国はドルを印刷し、デリバティブ証券として新興国向け投資案件に活用した。上記図に手順でバーチャルのドルは国民が新興国製品を買うことでバーチャルのドルをリアルなドルに転換し、バブルとなるのを防いだ。

  3.2 米国・欧州ビジネスモデル戦略
21世紀型【電子・ビジネスモデル(バーチャル→リアル)空間】戦略
 ビジネスモデルは単独でなく種々の組み合わせがある。しかしここではドイツ方式のIndustry 4.0 、およびGEのIndustrial Internet 方式を代表として選び8月号で説明した。世界中の人々が実施するビジネスモデルは無数にあるが、無数にある中で大切な要素として、関係者間の討論とアイデアの創出の場となるプラットフォームがある。20世紀のビジネスは1企業や系列を含めた企業群で展開するビジネスモデルは出尽くしたために、新しいビジネスモデルが枯渇しているのが現状である。次に起こるイノベーションは異質な業界、企業等によって組み合わされた機能、製品が出現して次世代を再構築することになる。そのためには次世代を考察する基盤としてのプラットフォームが求められる。ドイツ、GEのビジネスモデルも同様にプラットフォームが必要と思うが、プラットフォーム上の検討は済んでいるかもしれない。そこでプラットフォームマネジメントに関しては次のテーマとして12、1,2月号で詳細に説明した。
Ⅰ. ドイツ方式 IoT(Internet of Things) 8月号参照のこと
ドイツInd4.0は単独ではなく、産業全体を俯瞰することで機動力を高め、顧客への付加価値や事業効率性をさらに向上することを狙いとしている。
開発からアフターサービスまでバリューチェーン全体のシームレスな連携、個社でなくプレーヤーをまたいだ連携、10年、20年後を含めた将来の見える化によって、産業全体の認識力を高めている。
産業全体を俯瞰することで、リソースの最適配置による効率的な事業拡大、頻繁なトライアルエラーによる顧客への付加価値向上が可能、事前の織り込みによる迅速な商品、サービス提供が可能
工場の生産ラインを流れる部品、湿度や気温を測定するセンサーなど、あらゆるものがネットに接続する。機械同志が「会話」し、人手を介さずに、ラインを組み替え、在庫に応じて、生産量を自動で調整する。部品工場から組み立て工場、物流のトラックから販売インターネット会社まで様々な現場が結びつき、一体化する。
これは単なる生産の効率化や省人かではなく、やり取りされる儒応報のスピードや量が、人手時代に比べて数千倍になり、3つの新しい改革が行われる。
①カスタムメード量産時代
②車のモデルチェンジの概念の変更
③膨大なデータを操るIT企業の活躍

Ⅱ. GEが意図している改革
IoTはすべての既成概念を破壊する要素を持っている。
GEの改革には従来の製造業を激変させる3つの切り札がある。
インダストリアル・インターネット:『ソフトで引き出すハードの潜在力』
航空会社はGE製のソフトを利用することで年間の燃料消費を低減してきた。すなわち航空機に搭載する数百個のセンサーから出される、エンジンの稼働状況、温度、燃料消費量などの多様なデータを収集し、解析することで、理想的な飛行機の操縦方法を指南し、燃料費削減やその他運用費用や保守費の削減を提案できる。しかし更に重要なことは従来捨てていた膨大なデータから、このソフトの活用でハードが持つ潜在的価値を引き出すことを実施しようとしている。
GEのインダストリアル・インターネットの根幹をなす技術は同社が独自に開発したソフトで、このソフトは燃費向上だけでなく、航空会社の課題解決に役立つソフトを次々に製品化し、顧客を獲得している。この活動は航空会社だけでなく、発電用タービンにおいても、病院や様々な顧客企業から集まる膨大なデータを解析し、運用の効率化や改善や最適化につなげ、新たな価値を引き出すための道具になっている。
センサーから集まるビッグデータの価値は機械の保守や効率改善にとどまらない。食品や日用品のメーカー、インフラ企業などあらゆる業種で、在庫、物流の最適化、需要予測に威力を発揮する。そこで解析を担うソフトを多くの企業に提供すれば、データ解析を通じて、GEには様々な業界のノウハウが集まってくる。
これらの業務を通じて、GEは多様な産業機器を取りとめる共通プラットフォームとなる“Predix”を2014年オープン化して、社外企業にも提供していくことを決めている。このソフト開発に1,200億円を投入している。

アドバンスト・マニュファクチャリング:『極小工場』へ3Dプリンターの活用
機械やクルマ、インフラなどがインターネットに繋がる時代。IT企業がその覇権を握る試みをしているが、IT企業はハード面に弱い欠点がある。GEがIT企業差別化するには、ソフト面だけでなく、ハード面のモノつくり技術を一段と進化させる必要があるとして、既に量産部品の生産に踏み込んでいる。
事例1. 「航空機エンジンのタービン重量を2割削減」を目標に実施している。
顧客に密着した討議で、3Dプリンターを活用し、開発を容易にした。労働コストの削減にも貢献している。
事例2. 欧州エアバス社の次世代旅客機「A320neo」などに搭載されるエンジンLEAPで3Dプリンターでつくった約20個の燃料ノズルが搭載される。3Dプリンターで溶接回数を1/5に、耐久力を従来の5倍に高めた。
事例3. 2014年に米コネティカット州にアドバンスト・マニュファクトリー・ラボを開設:電力関連新製品開発に取り組む。
 
アドバンスト・マニュファクチャリングの究極の目的は顧客に密着した生産体制として『マイクロ・ファクトリー(極小工場)』という構想で、ネットワーク化された小規模工場を世界に分散させ、3Dプリンターやロボットなどの先端技術を活用して、顧客が求める製品を、顧客のそばで、迅速に開発、生産するというものである。
例えば航空機のジェットエンジンや、発電用のタービンは高温・高圧の過酷な環境で使用されるため部品が摩耗しやすい。顧客に近い小型工場で必要なときに必要な補修部品を供給すれば、顧客満足につながり、在庫リスクも減らせる。

ファストワーク:『スタートアップ流で開発を迅速化』:実用最小限の試作品「MVP」 新製品開発素早く行う新しい手法である。
インダストリアル・インターネットでは、機械類(例えばジェットエンジン)の運用データからハードの持つ新たな価値を発見し、機械の持つ能力の向上(燃焼効率の改善)や、自社が関与しない着陸時のフラップの操作方法で、燃費の削減を提案した。
アドバンスト・マニュファクチャリングではデータ分析から得られた結果を具体化するために「極小工場」を顧客に接近した場所に設置し、実物を3Dプリンターで製作し、顧客と一緒に改善活動を行ってきた。
ファストワークでは開発者の思い込みで顧客にとって価値のないものを製作する過ちが多く見られた。この過ちを防ぐために顧客が求める製品を迅速に創り上げること目指す。
具体的には顧客と相談して顧客が望む、実用最小限の試作品「MVP」の製作を90日程度で実施する(万能な製品を試作化しない)。
次に半年か1年でバーションアップしていく方式。
開発プロセスは以下のとおりである。
 
事例4. ①「顧客の要望や悩みを理解する」→②「製品の成功に不可欠な要素を探す」→③「実用最小限の製品を定義する」→④「顧客の要望などから課題を探す」→⑤「製品を改善する」
 
重要事項: 21世紀型【電子・ビジネスモデル(バーチャル→リアル)空間】戦略で重要なのはバーチャルで(誰よりも早く)企画することである。早く手を付けたものが世界一の座を勝ち取り、世界一だけが大儲けできるグローバル社会をいま巨大企業は画策しているからだ。

  3.3 観光業でのビジネス展開(9~10月号)
21世紀型【電子・観光(バーチャル→リアル)空間】戦略 基本形
アベノミクスの観光戦略:
2014年実績:1,300万人
実績をベースに2020年2,000万人(年間増加120万人)、2030年に3,000万人(100万人/年)なら達成は難しくない。
デビット・アトキンソン著「イギリス人アナリスト “日本の国宝を守る”」
日本人の経営者には「サイエンスがない」、「効率の悪さ」、「おもてなしが得意か」
「日本の経営者に必要なのは分析」:①の外挿方式には根拠がない。
アトキンソンの言うサイエンス(分析)
世界では国のGDPに対する観光業は平均9%、日本は2%と低い
観光客の多い国:仏8,300万人/年、米6,900万人、日1,036万人/年(香港の半分)
観光収入:日149億ドル(マカオの30%)
日本に来る観光客は金を落とさない人種(お金を落とさせる工夫をしていない)
日本は文化資産を活かす発想が少ない(日本人自身が文化的価値を重く認識していない。観光客がどんな価値観を持っているかの研究が足りない)
文化財に金を掛ける外人10万円/日、 京都1.6万円/日
アトキンソン氏からのヒント:長期努力年間GDPの8%を狙い対策をとれ(40兆円)
中期的対策:日本へ観光誘致する相手国ブリッジプロデューサの開発と日本側受け入れ開発者とのコラボレーションの育成
短期的対策:親切な受け入れ案内、施設整備(港施設が不備)、案内人育成
アトキンソンとJTB田川博己会長との会談:
日経9月20日日曜に考える『観光立国 ここがたりない』
田川会長コメントは「成長戦略に責任と期限を」は傾聴に値する。アジアの海外旅行
の成長は日本の3倍のスピードで伸びる。「誰が」、「いつまでに」、「どのように」といった明確な工程になっていない。今のままではリピータ客を逃すことになる。

寺島実郎著「新・観光立国論」:10月号
アジアダイナミズムを理解し、観光客が日本に何を求めているかという発想で創造的に対応せよ。
観光立国として日本の持つ優れた交通体系をどのように生かし、総合交通体系の整備を主張する。
「移動と交流」という観光をささえる哲学:人は移動することで新たな発見があり、交流することで双方大いに学ぶ『創造的観光』を提案していく。将来の若者が創造力を発揮できる創造の場「プラットフォーム」をつくろう。

  3.4 プラットフォーム戦略
21世紀型【「地政学的空間」電子空間・「ビジネス内容」金融、ビジネス各種、観光、「生活空間」コミュニティ】とプラットフォーム戦略
21世紀のビジネスはP2Mが求める多様性、拡張性、複雑性、不確実性あるプログラムです。21世紀は変化のスピードの速さ、グローバル経済の基盤の不安定さ等で、プログラムを成功させることが難しくなっているが、異業種同志のコラボレーションで成果を出す方式が求められており、プラットフォームマネジメントが重要となっている。
この21世紀型戦略ではプラットフォーム上での創造性が成功につながるものと理解している。そこで12月号では
平野敦士著「プラットフォーム戦略~21世紀の競争を支配する『場をつくる』技術
尾原和啓著「ザ・プラットフォーム~IT企業はなぜ世界をかえるのかな」(1月号)
笹谷秀光著「~ビジネス思考の日本創生・地方創生『協創力が稼ぐ時代』」(2月号)
上記3冊の本では①平野氏のプラットフォーム戦略が基本を書いてある。

  3.4.1 「プラットフォーム戦略~21世紀競争を支配する『場をつくる』技術」
平野敦士著 詳細は12月号参照
1) 今最も注目されている世界最先端の経営戦略である。
「多くの関係するグループを『場(プラットフォーム)』に乗せることによって外部ネットワーク効果を創造し、新しい事業のエコシステム(生態系)を構築する戦略」をプラットフォーム戦略と呼んでいる。プラットフォーム戦略は、グーグル、楽天といったプラットフォームを運営する側だけではなく、これを利用する側にも非常に重要で、いま目の前に存在するプラットフォームを活用するだけでは不十分。
2) プラットフォームビジネスと5つの機能
図2、図3 プラットフォームの5つの機能参照のこと
図2 プラットフォームの5つの機能

図3 プラットフォームの5つの機能

3) 勝てるプラットフォーム3つの特徴とプラットフォーム構築の9つのフレームワーク詳細は12月号参照

  3.4.2 尾原和啓著「ザ・プラットフォーム」2015.6.初版)
本の内容は第1章から4章まで図解でわかり易く説明した。1月号を参照願います。
第1章 プラットフォームとは何か?
第2章 プラットフォームの「共有価値観」
   巨大IT企業のプラットフォームの特徴(グーグル、アップル、フェースブック)
第3章 プラットフォームは世界の何を変えるのか

   1) 3Dプリンター、2) 教育、3) シェアリングエコノミーの原理
第4章 プラットフォームは悪なのか?
第5章 日本型プラットフォームの可能性
   1) リクルート、2) iモード、3) 楽天
第6章 コミュニケーション消費とは何か
第7章 人生を幸せにするプラットフォーム(PF)
   1) 「リベラルアーツ」のPF、2) 人生を幸せにするPF、
   3) 未来に楽観的であること、4) 自己実現のPFへ

  3.4.3 笹谷秀光著「ビジネス思考日本創生・地方創生『協創力が稼ぐ時代』」
序章:「顔の見える国」日本へ「発信型三方よし」のすすめ
3.11.以降、社会貢献意識、人とのつながり、「協創」の必要性の認識が拡大。
キーワードは「絆」「安全・安心」「エコ(環境・節約)」の3つです。
「協創力」のための連携の場、プラットフォームづくり(第1~3章)
具体的には①製品・市場の見直し、②生産工程、③産業集積(クラスター)の形成
国際的「羅針盤」の活用と「発信型三方よし」の提唱(第4章)
これらの結果得られる日本型の「共有価値観造成戦略」の提唱
日本創生、地方創生への緊急提言:今まで世界に見える顔をつくること
第1章「ご当地キャラ」と「食グランプリ」の活用術
第2章「自転車シェア」にみる複合課題への対応

図4 複合課題解決に役立つ国際標準「社会的責任に関する手引き」
社会が豊かになり所有からシェアへの意識改革。
コミュニティの多くの課題は個別に解決するのではなく、複合問題で解決する。
社会的共有の価値が高まると、社会的責任に関する責任感も高まった。
第3章「共有価値創造」(CSV:Creating shared Value)戦略
発想の異なる人々でコミュニティを構成する価値ある本質を捉えること。利害関係者の知恵を集めて共有の価値を創生し、次元の高い価値を共有することができる。
第4章「発信型三方よし」の提唱

図5 「発信型三方よし」による「協創力」の発揮
第5章「まち・ひと・しごと創生への関係者の結集」
まち・ひと・しごと創生とは「地方創生」を意味し、どのような課題があるかを調べる。
図6 まち・ひと・しごと創生法(地方創生法)の体系
第6章「地方創生で共通価値を創造する」
1.地方創生は複合課題の処理
2.クールジャパンとは
世界から共感を得る日本を目指し、世界における日本の価値を示す
クールジャパンの目的は「日本はあなたの役に立つアイデアをもっている」からアクセスしてみないという各国へのメッセージ
課題先進国日本がクールジャパンで多くの課題を解決してきたかを知ってもらう
手をおもんぱかるクリエーティブな課題解決という役割がクールジャパン
今後のクールジャパンは、外人の眼で、日本にある興味を日本人と論じ合い、相手国TBで共感を得ること。

4. アベノミクス成功への道と問題点
  4.1 空白の20年へのコメント
問題点1: 20年間国債を活用した官は約1、000兆円を使ってきた。しかしこの間日本のGDPは500兆円と一定。1,000兆円の金は誰がどのように使ったのか。 韓国はハブ空港の建設、釜山のコンテナ船ハブ港湾を建設したが、国民からみえる投資がなかった。グローバリゼーション下での後れを証明。
問題点2: アベノミクス約束のGDP600兆円は実現できるのか?
この20年間の実績は1990年時点のビジネス領域を出ていない。これは国が新しい分野への投資や、イノベーションをおこなって達成できるもの。国に成長戦略は全くない。省庁の予算獲得、権力増大にしか機能していない。
問題点3: 賢者は歴史に学ぶ、愚者は経験に学ぶ(高橋是清の哲学に学ばないのか)。
図7 日本国歳入・歳出図(1985~2015)
  歴史から高橋是清が2.26事件で暗殺される前の国会は「財政再建は国債の減少でおこなう。国債発行のまま税金での財政再建は国家の予算枠を増やすことになり、軍費の拡大につながり国家の危険が増す」という理由で国債削減を実施した。その結果2.26事件で、高橋蔵相暗殺の翌年盧溝橋事件で日華戦争に突入し、日本敗北を招いた(出典:志賀桜著タックスイーター)。

  4.2 地政学的戦略へのコメント
 日本は昔から戦略が弱い。官と大企業のトップ(高偏差値エリート)は失敗を恐れて、リスクに対する実践的経験をしないから競合者の戦略に勝てない。2000年以降は家電製品、携帯等主流となる製品を持ちながら、「モノつくりは得意だが、売り方」を考えてこなかった。「経営のIT化(デジタル化)」多くの経営者が自社のビジョンを持たず、ベンダー任せの「アメリカ出羽の守」(米国発のソリューション・パッケージの導入)を行い、IT化の結果は経営者が行っているアナログ方式の経営稟議システムとの整合が取れず、アナログに逆戻りした事例が多く、20世紀時代の戦略でも負けている。これからの戦略は地政学的戦略が電子空間である。リスクの取れない経営者は失格となる。各種研究会へ参加してもはつらつとしたものがない。
 但し日本の製造業は部品面で頑張っている。ミッシングリンク分野での企業の協創力関係がつくられれば希望がもてる。しかし、官の予算で実行するものは、タテマエで君臨されるので成功しない。発想を転換し地政学的戦略で勝利を挙げてほしい。

  4.3 プラットフォームマネジメントへのコメント
 プラットフォームマネジメントはP2Mのキイであるが、プラットフォーム構築の経験が不足している。日本的縦関係から横関係の拡大を期待する。庶民の発想が優れている。中小企業群の奮闘を期待したい。大企業は金に余裕があるが、社員が利口で失敗しないから、意識改革が必要である。

  4.4 日本的ムラ社会への警告
高度成長時の日本企業は無い無い尽くしから成長した歴史があり、成長にあたって日本独自の経営陣と労働者間の協力関係があり、外国にない助け合いが存在した。 これは良い意味での“日本的ムラ社会”というモノが存在した。
欧米企業は長い歴史の中で契約による厳しい雇用関係があり、企業外労働組合員であり、解雇関係が容易である。
時代の変化とプロフェッショナルという概念の必要性
 日本は企業内労働組合方式を採用しており、解雇が困難である。この制度は労働者に多くの恩恵を与えたが、外部の経済環境の変化に追従できる体制が不備で、グローバリゼーション下の経済環境に追従できる能力に欠けている。(経営者とミドル社員)外国ではその職種の専門家としての能力が求められ、評価され賃金が支払われている。したがってプロフェッショナルという自負が求められている。プロフェッショナルとして評価されておれば、就職は容易であり、自己の主張も堂々と行える。
 これに対し日本的ムラ社会組織個人のプロフェッショナルより、組織としての成果に評点を置くために、努力をしても、額面通り認められることが少ないが、賃金も能力要素より年功(経験量)が優先されているという関係が継続している。
 しかし何らかの理由で失業すると、もはや労働組合員でもないので、浪人後の個人は自分で就職先を探さなければならず、困難を極める。そのため、通常から自己主張をしない努力をしている。そのため自主的にイノベーションに取り組む人間が現れない。高度成長期がおわり、空白の20年期にはいると、何をするべきか、組織に迫力がなくなり、ムラ社会の気力的、能力的レベルが低下している。このレベルで欧米との戦いは厳しくなっている。
 経営のデジタル化の必要性(グローバリゼーションを理解していない経営者)
 経営陣に関しては経営のデジタル化に遅れがある。未だにアナログ的稟議主義から脱皮できていない。組織のナレッジ・マネジメントも遅れている。
 経営者の行動が消極的で、新しいものに向かい合うと、リスクと考え避けている。海外経営者はリスクをチャンスとみて行動し、小さな失敗は本人の経験とみなし、評価されるという社会的風習がある。
 事業者とはプログラムの本質を捉えて計画し、実行段階で、予想されたリスクは遭遇しない工夫をし、遭遇したらゼロベース発想で乗り越える。これがリスク回避のコツである。
参照: 矢島宣之著「ソフトを他人に作らせる日本、自分でつくる米国」にこれらの実態が書かれているので是非参照してほしい。

  4.5 アベノミクス成功への見通し
本テーマがこの研究の主題である。見通しは苦しい。
景気対策を常に消費増税で破壊されている。官が自らデフレ対策を実施している。国民の金を借りながら、自らが債権者と勘違いしている。政府が財務省を抑えられない限り成功にほど遠い。
経営者の質が良くなっていない。
アベノミクスが兵器生産にすり替わる危険性がある。イスラエルとの協調を進めている。
よい、材料が見つかっていない。

5. 来年度のテーマ
地方創出のテーマで【電子・コミュニティ空間】戦略で、地元に潜り込み、がんばってみる。

以上

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