1. |
「プラットフォーム・マネジメント」と「共有の価値観づくり」 |
|
・ |
最新のビジネスは複合的で多くのステークホルダー (SH : 利害関係者) が関与します。まず、この複合プログラムをリードするプロデューサーは、実施するプログラムのための「価値共有基盤」を確立するという重要な初期ステップがあります。 |
|
・ |
プラットフォームマネジメントは初版P2M標準ガイドブックのプログラム統合マネジメントの中の重要項目でした。しかし度重なる改定で、プラットフォームマネジメントという名称が消滅してしまいましたが、P2M学会 2015年秋の大会ではプラットフォームマネジメントの研究成果が多く発表されるようになりました。ここではガイドブックにとらわれず、プラットフォームマネジメントの初歩的なお話をします。 |
|
・ |
プログラムマネジメントは多義性、拡張性、複雑性、不確実性をもったプログラムを実行するために開発されたものです。プログラムに多くのSH (ステークホルダー) が関与します。 |
|
・ |
プログラムマネジメントの第一の課題は複雑なプログラムの「使命・目的・目標」を決める前に、このプログラムのプロデューサーはプログラムを構築するために「共有価値を創造する」ためのプラットフォームをつくります。
プロデューサーは、まず創造する価値の大枠を決め、参入者を求めます。選ばれたSH間の議論で「望ましい共有価値」をつくりあげます。このプロセスを経て複数のステークホルダーが安心してこのプラットフォームに参加できます。入会のための手順をこれから説明します。 |
2. |
プラットフォームマネジメント |
2.1 |
最近の動き
私が最近購入したプラットフォームマネジメントの本を紹介します。 |
|
① |
平野 敦士著 「プラットフォーム戦略~21世紀の競争を支配する 『場をつくる』 技術」
2010.08.初版 : 本書でプラットフォーム戦略の基礎を解説します。 |
|
② |
尾原 和啓著 「ザ・プラットフォーム~IT企業はなぜ世界を変えるのか?」
2015.06.初版 : 本書でIT企業がプラットフォームマネジメントを重視していることを解説します。 |
|
③ |
笹谷 秀光著 「~ビジネス思考の日本創生・地方創生 『協創力が稼ぐ時代』 」
2015.10.初版 : 本書で地方創生の事例を取り上げてプラットフォームマネジメントの説明をします。 |
|
今、これらの本が出されたのは、グローバリゼーションが更に進化し、新しい価値観を求めて多くの企業がビッグビジネスを独占する方向で拡大進化してきたことを認識する必要があります。特に日本の官庁並びに既得権益者、更に日本人は、『日本中心の小さな価値観』 から脱皮できずにいます。日本は世界で最初に少子・高齢化社会に直面しています。困難を逆にチャンスの到来とするならば、“ゼロベース”発想で、『平和で、幸福度の高い社会』 を世界に先駆けて示す努力を実行したいと思っています。日本人は方向が定まると全員で成功に導く成果をあげる能力の持ち主と考えています。 |
2.2 |
今プラットフォーム戦略が注目されている理由 |
|
① |
技術進歩の速さ |
|
② |
顧客ニーズの多様化 |
|
③ |
IT進化による外部ネットワーク効果の迅速かつ広範な拡大 |
|
④ |
デジタルコンバージェンスが進化していく :
音楽や映像コンテンツ、コンピュータ、家電、ソフトウェアなど多くの産業の垣根が取り壊されていき、再び新しい産業へと「収斂 (コンバージェンス) 」していくことで、あらゆるコンテンツがデバイスを選ばずに配信されていく世界になってきた。
・ |
事例 : NTTドコモはもはや業界トップ10に入るクレジットカード会社 |
・ |
アップルはパソコンメーカーというより音楽配信事業者 |
|
2.3 |
プラットフォーム戦略とは
まず、平野氏のプラットフォーム戦略の内容の説明からする。 |
|
① |
プラットフォーム戦略は、リーマンショック以降も着実に成長し続ける企業に共通した、今最も注目されている世界最先端の経営戦略である。「多くの関係するグループを 『場 (プラットフォーム) 』 に乗せることによって外部ネットワーク効果を創造し、新しい事業のエコシステム (生態系) を構築する戦略」をプラットフォーム戦略と呼んでいる。プラットフォーム戦略は、グーグル、楽天といったプラットフォームを運営する側だけではなく、これを利用する側にも非常に重要で、いま目の前に存在するプラットフォームを活用するだけでは不十分である。 |
|
② |
プラットフォーム戦略は新しいレバレッジ戦略である
・ |
多くの関係するグループを「場」にのせ、 |
・ |
マッチングや集客などの様々な機能を提供し、 |
・ |
検索や広告などのコストを減らし、 |
・ |
口コミなどの外部ネットワーク効果を創造する |
ことで、新しい事業のエコシステムを構築する戦略である。
|
|
③ |
プラットフォーム戦略を採用すると、複数の企業とアライアンス (提携) を組むため、プロジェクト全体にまたがる超組織戦略が必要になってくるため、従来の 1 企業で実施する戦略とは大きく異なり、企業の戦略・組織・収益・管理方法・人材評価と育成・顧客との関係性など、ビジネスの全体を変える必要がでてくる。
注 : |
日本企業の凋落は「グローバル市場をターゲット」とした戦略発想に乏しく、全てが遅れてしまったことによる。 |
|
|
④ |
プラットフォーム戦略思考型人材とは「多様な考え方を理解し、顧客のニーズを把握するだけでなく、その場で問題解決を行う思考力を持った社員、自社の製品やサービスが満たしている 『根源的な要求』 が何かを認識・把握し、顕在化していない次のニーズを予測し、国内外を問わず、競合商品やサービスの動きを捉え、IT化やグローバル化、技術革新の動きなどを正確に認識したうえで、それらを戦略として経営層にフィードバックすることができる人材、そのビジネスモデルを構築できる社員、さらに企業の枠を超えたアライアンスを推進できるエバンジェリストともいうコミュニケーション力、人脈力を持った人材」をいう。 |
2.4 |
プラットフォームビジネスと5つの機能 |
|
1 ) |
プラットフォームビジネスは複数のグループのニーズを仲介することによって、グループ間の相互作用を喚起し、その市場経済圏をつくる産業基盤型のエコシステムである。
① |
2 つ以上のグループを結びつける。 |
② |
あるグループは他のグループを必要としている。 |
③ |
グループ単独では得られない価値を創出している。 |
④ |
グループ間での相互作用によって外部ネットワーク効果 (クチコミ) を誘発し、新しい価値を創造する仕組みを担っている。 |
⑤ |
プラットフォームは二つのグループを結びつける「ツーサイド・プラットフォーム」、多くのユーザーを結びつける「マルチサイド・プラットフォーム」がある。 |
|
|
2 ) |
プラットフォームの 5 つの機能 (図 1 プラットフォームの 5 つの機能)
① |
マッチング機能 |
② |
コスト削減機能 |
③ |
検索コストの低減機能 (ブランディング・集客機能) |
④ |
コミュニティ形成による外部ネットワーク効果・機能 |
⑤ |
三角プリズム機能 |
図 1、図 2 プラットフォームの 5 つの機能参照のこと |
|


|
2.5 |
勝てるプラットフォーム 3 つの特徴とプラットフォーム構築の 9 つのフレームワーク |
|
1 ) |
勝てるプラットフォームの持つ 3 つの特徴
① |
自らの存在価値を創出すること (検索コストと取引コストをさげる) |
② |
対象となるグループ間の交流を刺激すること (情報と検索) |
③ |
統治すること (ルールと規範を作り、クオリティをコントロールする) |
|
|
2 ) |
プラットフォーム構築の 9 つのフレームワーク (事例付)
Step 1 |
事業ドメインを決定する |
Step 2 |
ターゲットとなるグループを特定する |
Step 3 |
プラットフォーム上のグループが活発に交流する仕組みをつくる |
Step 4 |
キラーコンテンツ、バンドリングサービスを用意する |
Step 5 |
価格戦略、ビジネスモデルを構築する |
Step 6 |
価格以外の魅力あるグループに提供する |
Step 7 |
プラットフォーム上のルールを制定し、管理する |
Step 8 |
独占禁止法などの政府の規制・指導、特許侵害などに注意をはらう |
Step 9 |
つねに「進化」するための戦略をつくる |
これらの詳細は読者が実践するときに本書を購入されることをお勧めする。
本書はアマゾン的評価でいえば4☆~5☆である。 |