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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (67)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (43)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 10月号

Z. 先月号で、これまでの日本企業の組織の在り方と、欧米の組織の在り方の相違を説明した。そこで
日本国は何をし、どんな成果を上げたのか。何を失敗したのか
米国または他の国は何をして成果を上げ、何をして失敗したのか
それぞれ、時代に分けて説明して欲しい。

I. 承知しました。時系列で説明しましょう。
i ) 終戦からの困難期を乗り越えて、1990年で日本は製造業世界一になった。
理由: 朝鮮戦争で産業が復活した。池田内閣の所得倍増計画が日本人に火をつけた。
  高度成長で優れた経営者が現れ、米国産のモノより優れたモノに挑戦した。
  日本人の遺産:中国、後に欧州(シルクロード経由)の輸入品(モノ)の良さを愛で、その素晴らしさを発展させ、国民の審美眼を高めてきた。それが米国製品を凌駕した原動力となった。
  米国の製造業はテーラーの科学的管理法に従って生産を進めてきた。労働者に対する合理的な賃金対策、無理のない生産性(ノルマ)の確立。品質とコストの相関関係(安くすると、品質が下がる)を合理化した。
日本企業はドラッカー博士の勧めで、デミングの14の原則を採用し、品質管理で米国企業を凌駕した。しかし、自動車産業で米国に勝利したのは、第2次オイルショックで米国民が小型車を採用するようになったこと、トヨタの車の無修理的健全性が米国民を捕えた。1990年以降は米国もデミングを採用したが、サプライチェインでも日本の企業系列活動に勝てなかった。
参考: 日本の企業組織の特徴と米国企業の特徴との比較
日本企業の特徴: メンバーシップ型(終身雇用)、全社あるいは系列企業との一体化の特徴が勝利に貢献した
米企業の特徴: ジョブ型構造で上級職務、下級職務が独立しているため、デミングの採用や、サプライチェインでは後れを取った。

ii ) 日本企業のその後の10年間の低迷。
1990年後も好景気がつづくが、バブルであることに気づくのが遅れた。
製造業への未来に対する発想が経営者、社員ともども欠けていた。
日本企業は中国、韓国企業に対し、日本の技術の一部を開示してきたが、特に韓国サムスンへはCAD/CAMの技術の伝授。DRAMの製造への協力で墓穴を掘った。
参考 1: サムスンは韓国経済の30%を担う独占的大企業で、彼らはDRAM生産の必要量を自国利用分、自国以外むけに大量の生産額を企画し、生産コストを日本の数分の1で計画した。一方日本は大企業10社に割り振ったため、1社の生産数が足りず、サムスンのコストに負けた。また、サムスンは世界一優れた日本産DRAM生産機械、検査機械を活用し、商品の質を高めた結果、品質・コスト・大量産の面で完敗した。日本はサムスンに負けるという発想もなく、援助し、その後サムスンは製造ノウハウを持つ日本企業の現場責任者を日本時代の2倍で採用し、現場責任者の持つノウハウを、全部吸収されてしまった。日本には残念なことに、ノウハウの門外不出という概念がなかったため、ノウハウをタダ同然で放出した。同様に日本企業は企業の金で社員教育を実施したため、社員を評価する発想がなかった。残念ながら終身雇用の日本企業は自社の社員の頭脳にある自社の持つノウハウを書類で残すという習慣がなかった。もはや日本の企業にはノウハウがなく、優れたノウハウという武器はサムスンにあり、サムスンの製造業世界制覇に大きく貢献している。
参考 2: その後の日本製造業とサムスンの経営戦略の相違:
サムスンは基本的な製品の品質、価格への自信を深めた後、自社製品のグローバル化をめざした。世界戦略の基本的概念は相手国のニーズに合わせたマーケット開発を行う。そのため世界中にその国専任のマーケット開発員を派遣し、10年以上の時間の中で調査を実施し、韓国の商品を売る前に、自国の文化を売り込んだ。その中で現地の実情に合った製品開発をおこなった。その結果、当該国は韓国の文化に親しみをこめでながら、製品を購入した。日本企業はこのような商売をする発想をいまだに持ち合わせていない。それは日本の企業の組織構造が欧米のジョブ型でなく、メンバーシップ型で、人脈優先の組織で、出世主義が優先されているからである。
参考 3: 日本企業は終身雇用制であったため、社員教育を会社費用で実施した。多くの発明やノウハウを生み出してきた。欧米はジョブ型方式で運営されているため、個人は資格や学力の習得は自らの金を使ってきている。上級職務の人間は、資格、学歴を自分の費用で会社に提供し成果を上げることで評価される。彼らは更に価値創造が実施できれば、ボーナスとして巨額の収益を社員に渡す。日本は貢献者にもさしたる金を支払わない。そのため社員はイノベーションのために無理することをしない。インターネット以降のスピード化の世界では後れを取っていることに気が付いていない。
参考 4: 米国企業は経営の将来性をIT活用という発想を持っていた。それは1991年にソ連邦の崩壊を見て、次の戦略をグローバルへ向けた。
ロシア領土内での油田採油権の確立→エリチン時代にユダヤ資本が大活躍し、ほとんどが権利を取られかけたが、プーチン大統領に変わり、資源保護政策を発令し、ユダヤ資本の締め出しに成功した。
米国はグローバルに向けた戦略として経営のIT化を第一に上げた。第二に軍事目的で活用したインターネットを世界全土に広め、グローバリゼーションへ向けて大きな前進を図った。その結果1995にはインターネットの世界網が完備されIT化の利便性が世界中に広まった。これによる経済的影響やIT支配した時の大きさに向かって各国は邁進している。

Z. 戦後からバブル崩壊まである程度理解させてもらえたと思う。
そこで読者の皆さんに質問したい。質問は2000~2010までの間に、米国、日本は何をしてきたかを発表してもらいたい。

I. この質問の前に、米国企業の組織の仕組み、日本企業の組織の仕組みに差がある。
そこで、両組織の仕組みを再度勉強する。この仕組みの相違が将来の発展に大きく寄与してる。
日米組織の相違点

米国企業は
社会がスタンダードを提供している。企業はそれを受けいれている。
労働の流動化:
製造業の人々は各人が自分の得意な職務をもっている。彼らは最初職務に応じたユニオン(労組)に所属する。企業に人員不足が生じると当該職務のユニオンから人材の派遣を依頼する。ユニオンは当該職務に見合う人材を探し、企業に紹介する。ユニオンは実力を提示し、企業は報酬をきめ契約する。これはあくまで職務遂行者であって、社員になることではない。折り合いが就けば契約となる。年度内で実績評価が数回行われ、満足度に応じて報酬が決まる。成果を出すと報酬が上がるため、イノベーションを狙う人材は前向きな仕事に力点をおく。
上級職員は「目的を立て命令する業務」の遂行で成果をあげる。そのため彼の役割は新しいことへの挑戦が見られる。この組織は前向きの活動がおおくなり、イノベーション達成の可能性が増す。
下級職員から上級職員への移動は皆無である。

欧米企業は三層構造

日本企業は
概ね各企業がスタンダードを開発する。企業別であるため汎用性に乏しいが、外国企業の侵入の妨げとしては功を奏している。しかし逆にコストがかかっている不利がある。
企業は年1度4月に合格者が入社する。通常はそれ以外に採用は行わない。
大学では旧帝大卒、早稲田、慶応、一橋大、東工大がエリートとして期待されているが欧米と異なり、職務別でなく全員が一般社員として教育される。大卒と高卒は差別がある。
教育は全費用企業が持つので、資格、学力で給与に差をつけない。
社員教育は入社時の基本教育後、各種業務に2、3年間在籍し、実務を経験して歩く。
中堅社員教育が終了すると各部門の管理職に就任する。
好成績の人材が幹部教育を受ける。
日本の組織の特徴は技術的能力であるより、経験の豊富さ、人格、人脈の広さが昇格の対象となる。そのためこの組織は終身雇用のための内向きの組織である。私は【日本的ムラ社会】と呼んでいる。勝手な行動をとるとムラ八分に会うからである。
日本の組織の特徴に世界にない画期的な【タテマエとホンネ】の法則が存在している。
事例:企業とすると業績回復にはイノベーションが求められる。ある天才社員が素晴らしい提案をした。議論が沸きあがり、賛成論、反対論があった。そこで社長が立ち上がり、本件は50:50で引き分けであるが、単なる反対では成長がない。そこでまず、皆にはリスクマネジメントに取り組んでもらいたいという動議が入った。直ちにリスクマネジメント研究会が社長直属で発足された。
結果は数十個のリスクが存在した。しばらく保留して様子を見ようということになった。
社長の勝利になった。社長の任期中は取りやめ、次期政権にゆだねることができた。
社長のホンネ:「失敗防止策優先、タテマエ:リスクがありすぎる」で正当化した。
PM(プロジェクト・マネジメント)が求めているリスクマネジメントとは仕事の進捗に合わせて、リスクを減らしながらプロジェクトを進める方法がPMである。
この組織の真の危なさは善意の「ホンネとタテマエ」から悪質な「ホンネとタテマエ」優先されているからである。

日本企業の社員教育構造

問題の提起

1 ) 1997年日本でバブルがはじけた。2000年以降のバブル対策を調べる。
グーグルで調べても要点がわかる。興味のある人だけで結構です。

2 ) 2000年以降米国は経営のIT化を進めてきた。どのようなことをしたか、
事例を調べてみる。(IBMはハード製造会社がソフト企業に大変身)
解答は“デジタル・ビジネスデザイン戦略(DBD)
調査したい方はオンラインジャーナル2011.10月号執筆
日本は経営IT化は何をしてきたか?

3 ) この間米国はグローバリゼーションでどのような戦略を実施したか。
それはなぜか?成果を出したのか?興味のある方は

調査したい方はオンライン16年―3月号地政学的戦略を考えよう

連載では迂闊に読んでしまいます。執筆した人だけが覚えています。
答えは11月号に掲載します。

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