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「私たちのP2M (Project & Program Management )」とは何か、考えてみませんか
-発注者が求めるプロジェクトの見える化をしよう (10)-BMの勉強③-

渡辺 貢成:10月号

BM(ビジネスモデル)の話も3回目になります。

1. 先月号のあらすじ
  1) BMの定義
BMの定義から始めました。
  2) アナログ時代のBM
続いて古い時代のBMの説明をしました。アナログ時代の発想でのBMです。
製造業を中心とするSCM(サプライチェイン・マネジメント)の流れの中で、縦系列の一貫した流れを持つBM、バリューチェインのコア(会社の付加価値の高い得意分野)を残し、それ以外はアウトソースするBM、問屋抜きのBM、生産性の工場とコスト削減を中心としたBMが続出しました。また縦系列から、水平分業という流れも出るようになりました。
  3) デジタル時代のBM
    i ) 日本製造業に対する米国製造業のリベンジ:「グローバル水平分業」BM
米国では日本の製造業に敗れた悔しさを、日本製造業へのリベンジとして、インテルはPC(パソコン)のMPUをブラックボックス化し、OSを除くそれ以外の部品を標準化し、世界中のどこからでも購入できるグローバル水平分業製造方式を確立し、日本PC企業の新興国市場への進出の阻止を図りました。
    ii ) DBD(デジタル・ビジネス・デザイン)
米国は次に経営にデジタル技術を導入することで、経営の強化を図ることを多くの企業が試みました。以下はD技術を大きく活かすBMの型です。
①顧客への価値提案型:顧客の価値を高めるためのD技術活用型
②社員に付加価値の高い業務をさせるためのD技術活用型
③10倍の生産性にまで業務を高めるためのD技術活用型
④業務プロセスのデジタル化とそれによる事業変化への対応力向上型
⑤業務の意思決定のスピードと確実性の向上へのD技術活用型
⑥顧客サービスのモデルを「供給者によるサービス」から「顧客のセルフサービス」への転進型
⑦社内の情報の流れを「ラグタイム(遅延)」から「リアルタイム(同時)」するスピード型
⑧組織を「独立したバラバラな活動」から「統合されたシステム」への発展型
  この主な内容の説明をしました。
今月号はここから始まる。

2. 日本企業の経営におけるデジタル化の現状(大いに遅れている)
  1) デジタル化技術の進んだ業界
日本企業で経営のデジタル化の進んだ業界はグローバル展開した企業群です。金融、航空等、金の決済、航空機の予約システムは共通性が求められているから当然です。米国のその他の業界で言えば、企業はデジタル技術を経営に導入し、投資効果を挙げ、経営の競争力を付ける努力を惜しみなく実施しています。
  2) デジタル化(IT化ではない)導入の進んだ日本企業は30%
図1 日本企業のIT化ステージの状況 左図はIT経営協議会が発表した「IT経営ロードマップ2008」から引用した図です。日本企業のデジタル化の遅れを示しています。ロードマップでは現在のステージ2を3から4にし、日本企業のグローバル化を促進したいと考えています。
その理由を挙げます。
  全社統一のDB化30%(素早い意思決定ができていない)
現在日本企業70%のIT化が事業本部別で実施されており、全社統一のDB化が進んでいない。市場変化の速い時代に企業として素早い意思決定がなされにくい状況のままである。
  グローバル化に備えるならばステージ4が求められる。
自社以外の企業との業務提携や連携が容易にできるからである
  グローバル化に移行するための具体策
図2 IT経営ロードマップ全体図  現状分析:
米国産パッケージの導入を図っているが、業務現場は現在の業務の踏襲を要求し、カストマイズ化という作業を要求している。結果的に業務のデジタル化を図ったシステムをアナログ型システムへ逆行する形になっている。
 IT経営ロードマップはこの点を問題視している。即ち現在の経営はデジタル化技術採用の時代であるが、残念なことに、多くの企業は経営者からのビジネス要求が出されておらず、基本的に米国で成功したパッケージの導入で代行している。しかし、企業ごとに相違する業務プロセスを業務改革という努力で、デジタル化の持つ経営的効果を採用する代わりに、従来型の業務プロセスを維持する独特の業務スタイルを創出している。ロードマップはこの弊害を除くため、これからのIT化は、まず目的とする「業務改革を見える化」し、経営・現場双方で合意し、経営改革をすすめ、その中でIT化できるものをIT化することを勧告している。
  業務改革の実施
図3 要件定義・仕様とテストの関係 上記③の勧告を実施するには超上流で投資計画を経営者自らが実施しなければならないとIPAは勧告している
経営者及び経営企画部門は経営ビジネスの要求(DBDデジタル・ビジネス・デザイン)をおこない、業務改革を伴うIT化を進めることになる。
しかし、現実はなかなか経営層からビジネス要求が出されてないようです。そして任命されたCIOがそれにふさわしいプロフェッショナルとしての能力を持っていないようです。その大きな理由は、経営を俯瞰して、問題点を常に把握し、他のグローバル企業と比較をする日頃の努力が不足しているようです。また、デジタル技術の持つ価値を理解していないのかも知れません。さらに、グローバルが要求しているレベルが理解されていないのかもしれません。
サムスンの会長は毎日世界一になるために必要な各種技術、管理方式、BMを自ら収集し、実行していると聞いています。

以上
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