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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (68)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (44)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 11月号

Z. 日本再生“アベノミックス”は67回目になる。私がIさんのエッセイに興味をもったのは、『エッセイとは原則として何らかのホンネが顔を出す場面があり、タテマエとホンネの小さな葛藤があることで、読者に葛藤の中から自分なりの評価を下せるという楽しさがある』からだ。本エッセイの主役はIさんであるが、Iさんとは違う角度から『モノ・コト』を眺め、大所・高所から意見を出すのが私の役割であるが、実は私は一人ではない。毎号読んでコメントをだす切れ者が数名協力してくれている。

本エッセイは地方自治の再開発(地域再生協議会)にPMが効果的でないかとの考えで、Iさんは地元の再生協議会の募集に応じて参加した。そこでIさんはいろいろなことを学んだ。同時に官が絡む事業に首を突っ込むと、欧米では優れた手法と称されるものが、「新しすぎて日本では使い物にならないモノ」という捉え方をされる。そして内容に関する議論すらしない。はじめは失礼な連中だとおもったが、対策を考えた。世の中には下記に示す「集団の論理」がある。
まず、「20:60:20」の法則がある。組織をリードできる人材は20%で管理職になれる。60%は仕事の実務者としてまじめに働く。残りの20%は能力不足か癖のある人間の集団である。
私はこれに追加した。管理職20%の内訳である。スティーブ・ジョブスのような天才は1%以下である。天才を含めた5%の人材は将来が読める。この5%を見出す上司がいる場合、その組織は向上心が強く、手掛けたものは失敗を重ねながらでも最後は成功させる組織になる。

Iさんが言う【日本的ムラ社会人脈重視組織】はでタテマエとホンネを上手く組み合わせながら組織運営をしてきた。2000年以前の組織なら、大海をうまく泳げたが、ITとインターネット出現で情勢が変わった。グローバリゼーションが社会秩序を大きく変えようとしている。AIが人間より賢くなってくる時代である。ここで後れを取るとグローバル競争の落後者になることは明白だ。しかし、日本国民は海外との交流に熱心でない。そのため、【日本的ムラ社会人脈重視組織】という集団は常に国内人脈を優先するため、ある意味で外国音痴である。

Iさんが町の募集に応じたのは、「町が専門家に作らせた新しい街づくりのビジョンが全体観として素晴らしかったが、具体的な提案となっていないため具現化する提案書をつくった」。要求の中に組織の維持可能性があったので、PMの専門家であるIさんはPM推進の機会でもあると考え「最先端のプログラム・マネジメントを持ち出し、“関連企業でコンソーシアムを構築し、複数の組織の個別の能力を結集することで、本件の悩みが解消できる提案書」を提出してしまった。

Iさんは「地域再生協議会は町の担当部署が主導で、民間有識者を採用し、現状維持をこえる提案をするもの」と思っていた。しかし町の組織も【日本的ムラ社会的人脈優先組織】であることがわかり、Iさんも最後は納得して引き下がった。

Iさんを含め、私たちPM推進者は、グローバリゼーションの中で【日本的ムラ社会人脈優先組織】の発想では年々下がる日本の競争力を回復することはできないと考え、戦後から今日まで日本の発展とその要因、衰退の要因を、(1) 戦後~1990年、製造業世界一位 (2) 1990年~2000年、バブル崩壊とインターネットの出現の活用 (3) 2000年~2012年グローバリゼーションと社会の急速な変化への対策:米国、EU、中国、日本 (4) 2013年~今日まで、“アベノミックス”の時代の国内外への大きな対応 と分けて問題点を摘出することにした。

( 1 ) 戦後の日本:終戦から1990年まで
  戦後の困難を乗り切って「モノづくり」ビジネスに走り出した時、欧米が考えている基準値に素早く到達し、産・学・官が一体となって彼らの基準を上回る製品を世の中に提供し、更に努力し、製造業世界一を獲得した。考えてみると、それは日本の得意技である。日本はFar Eastの国で、アジア・中国の文化が日本に伝わると、日本はそれを東へ輸出することができない。そこで伝来した文化を大切にし、自らは、さらに高度なものに仕上げることに熱中した。日本の製造業も先祖に負けず高品質商品の生産で製造業世界一を獲得したといえる。

別の見方をすれば、日本企業の組織構造がメンバーシップ型であり、人脈優先組織のため、目標が定まると、集団での結束が高まり、実践的に産学官が一体となって目標に向かって努力し目標達成に貢献する。
特筆すべき点は生産方式の相違である。米国はテーラーの科学的管理法を続けてきた。米国企業の発想は品質を上げるとコストがあがると考え、最適値を見出し、それを基準値と決めていた。日本はドラッカー博士の勧めたデミングの14の原則を採用し、部品の品質向上で、部品のパッケージ化の品質が向上し、ロスを減らすことで生産性向上を高めた。
更に、オイル危機発生で米国民の多くが小型で、低燃費型の自動車が、大型好きの米国でも高く評価された。

( 2 ) 1990年からの10年間を振り返る:
 
日本国大蔵省の弱み:
日本は土地投機で地価はうなぎ昇りの好景気で、ゴルフ場の会員権が退職金を上回り、 国民は全て中流の上と認識したが、気分は上流階級的な楽しみに興じていた。この間大蔵省はバブルと見抜けず、景気政策を続けていた。ところが1997年に突然山一証券の倒産があり、てんやわんやの騒動で国民は冷や水を浴びせられた。これがトラウマとなり、これ以後は世界では珍しいデフレ政策信奉者になって今日に至っている。
日本企業のおごりと失敗:
日本は1994年頃より韓国サムスンの実力を軽視し、CAD/CAMの技術を丸々伝授した。DRAMの製造では日本式ノウハウを持つ最先端製造機、検査機械の活用を指導することで、サムスンはDRAM生産量を日本企業の数十倍の量まで生産し、低料金で世界への輸出に成功した。このため、日本の電器産業は自らの行動で世界的ブランドをサムスンに譲ってしまった。
実はこれまで韓国には資金援助、技術援助を行ってきたが、韓国人のものの考え方を理解していなかった。九州電力に韓国電力の技術者が訪れ、技術解放について依頼があり、訪問者に資料を提供した。それからしばらくして別の韓国電力の技師の訪問があり、資料の提供を要求した。九州電力は先の訪問者に提供してある旨説明し、資料の提供を断った。ところが訪問者は「あの資料はA氏が九電からもらったもので、彼の資産だ。あなた方は私にも平等に提供する義務があると粘って資料をせしめていった。日本人には理解できない、韓国の常識のようである。
日本の経営者たちはこの10年間の社会情勢の変化を理解できなかった。
インターネットの出現とその将来的発展性への勉強不足で次世代事業に向けた研究がなされていなかった。
一方米国は1990年以降、製造業で日本に敗れた反省から、産業の将来はIT活用にありという路線で、着々と準備をしていた。1995年に米国は軍用のインターネットという通信網の将来性を考え、一般普及に踏み切った。
米国企業は経営のIT活用を命題に経営陣が新事業を模索し始めていた。
1998年:デル・コンピュータの「チョイスボード(顧客主導による選択システム)」の導入。顧客がPCの必要な仕様を書き込むと、顧客仕様のPCが短期間で送られてくる方式を開発、短納期で顧客仕様のPCを低価格で提供し始めた。
利用者が「生産性の10倍増」と呼ぶもの:コスト、資金需要、サイクルタイムの桁違い向上がデジタル技術の使用を可能となることが明らかとなった。
99年初めAOL(アメリカ・オンライン)、ヤフー、イーベイがインターネット上で存続可能なビジネスモデルを作り出すことが明白となった。
2000年初め世界最大級の「伝統的巨大企業」GEがビジネス・モデルをデジタルに移行するべく積極的に活躍していると発表。

( 3 ) 2000年からの10年間(米国企業の巻き返し)
 
i ) 米国のグローバリゼーション
米国の経営者はIT活用で生産性向上を考えた。
2000年以降になるとインターネットを活用した経営を考え、インターネットを使うと国境がなくなることに気が付き、グローバリゼーションというイメージで戦略を考え始めた。
この時期になると先進国の生活必要品は満ち足りて、世界経済が拡大されず、目先に第二次大戦前の大恐慌が浮かび上がり、米国は恐慌回避の策を練った。

 
米国の課題1:図3は上記の文章を図式化したものである。米国、日本等の先進国は国内成長率1.1%となっている。いろいろな策を講じても新しい必需品や、魅力的な新商品が出ない限り恐慌は避けられない。それに比べて発展途上国は6%以上の成長率がある。
これをテーマに米国人は何をしたか?考えてみましょう!
  ボーモル/デロングの成長収斂仮説
解答:頭の素晴らしい米国人がいた。「米国債を使って、中国に巨大製造工場を建設し、中国との合弁会社にする方式」を考えた。合弁会社は中国に巨大工場を建設し、中国の安い賃金を活用し、低価格製品を製造し、その一部を米国に輸出する構想であった。この方式のユニークなのは、「デリバティブ方式といって、債務者の出資金の100倍まで国債を貸すという約束で、国債の利子を7%としたことである」。
この結果中国は米国の新会社と49%の合弁会社を設立した。この工場は中国側で経営しており、農村部からの低賃金労働者を教育することで運営を高めていった。但しこのようなやり方ができたのは、その合弁会社は米国の国籍でなく、米国に税金を納める必要のない低税金国を国籍とした。これらが実行できるのは、すべてユダヤ資本に起因するからである。

中国産の製品は自国用と輸出用に分けられるが、合弁会社の役割分担では、米国内での役割は企画、計画までとし、製造業の製造部分はすべて中国に移した。この結果米国内の白人労働者は職を失った事実がある。私たちはこの事実を大統領選挙後に聞かされた。
これで読者の皆さんもグローバリゼーションの意味を理解されたと思う。米国のFRB(中央銀行)は株式会社で筆頭株主はロスチャイルド家である。この会社は自己資金の100倍の金を使って中国に巨大製造設備をつくり、これまで中国になかった巨大施設は生産性向上に深く機能した。この合弁会社はユダヤ資本の独占企業である。そしてこの中国企業も独占的な収益を上げている。独占企業ゆえに競争力が高く、粗利益も独占的に高い。国債金利が7%でも採算を上げることができた。
  米国の「デリバティブ証券の論理」の誕生
  この政策でユダヤ資本は世界の50%から今や60%にあがったと新聞に書いてあった。この方式は1/100の資本で100倍の資本とその収益を作り出すことができたことを物語っている。
そのためトランプ大統領は中国からの輸入は(理不尽に米国白人労働者の職場を失わせた相手として)莫大な関税の引き上げを実施している。
私たちはグローバリゼーションという得体のしれないものに、今後も支配される可能性が高い。世界は金が金を生む資本主義に変わったことを学んだ。

更に学んだことはオバマ大統領以前の大統領候補者はほとんど石油系ユダヤ人(ロックフェラーの眼鏡にかなったものといわれてきた。これも事実のようであるが、今回は別件でトランプが大統領になり、グローバリゼーション系の勢力が阻止されたことで、今後の展開がどのように変わるか不明である。

 
ii ) 米国企業のIT化戦略の躍進
 :インターネット普及を育てた米国企業のデジタル化という概念の構築

米企業の指導者たちが、「デジタル化」が人々の仕事、娯楽、通信、購買、販売、生活に変化をもたらす破壊的かつ創造的な力があることに気が付いた。
パソコンの出現、電子メールの急増・統合業務のパッケージ化(ERPパッケージ)インターネットの普及
「デジタル・ビジネス」が顧客に与える恩恵、持続的な成長率、人材開発力、財務実績において大きく貢献できるユニーク性が高かったことが理解された。
最強の「バリュー・プロポジション」実現のために!「デジタル・ビジネスデザイン戦略」2001年出版

 
iii ) 日本企業の経営体質:残念ながら日本企業は日本人同士の人脈・団結がビジョンを上回りビジョンなき経営体質で経営を続けている。
日本の製造業は米国企業の模倣から始まったが、現場職員の学習能力の高さで、製品質の向上がみられ、次第に製品の質で、米国製品を凌駕するものが増えていった。当時は製造業という分野で産・学・官の協働戦線が功を奏し、製品性能と品質の高さが評価され、欧米製品を抜いて製造業製品性能・品質世界一となった。これで現場人の仕事に対する現場での学習能力の高さが評価された。同時に企業の縦系列が完璧な下請け体制を構築し、ラインの動きと、正しい部品の提供という複雑な製造ライン構築を完成させた。部品の縦系列ライン構成ではトヨタ工場外の道路もライン系統の一部となって活躍していた(笑い)。
トヨタの更なる特徴は全ての部門の改善に向かって、なぜ、なぜ5回考察する方式が効果的な役割を果たした。
日本企業は製造業世界一になってからの将来戦略が全く見えなくなった。その理由を考えてみる。
日本の世界一は常にボトムアップ的で進行した(現場主義)。しかし、日本は世界一になって次の課題が見えなくなった。日本の経営者でも将来が見えていた経営者は今も、好業績を収めている。それは社会が常に進化するものという原則を重視し、新規研究を進め、失敗を重ねながら、時代に遅れない努力をしてきた人たちの存在である。
それに引き換え、多くの日本企業の組織の特徴は基本的に人脈優先主義である。人脈型企業の経営者は、勉強しても簡単には、望む研究成果を出すことができない。理由は官が支配する研究は成果が出ていないことで成り立っているからである。官の人材の特徴は偏差値優先の頭脳だから、既存の研究の延長しかできない。発想の転換による成功を起こす気力を失っている。特に官が行う研究所では失敗がない立派な体質であるが成功もない。それは業績を評価する機能がなく、倒産がないからである。これができたのは国債を官が独り占めしてきたからである。若し米国のように海外の有能な人材を成果主義で採用すれば日本の研究は進化するが、その外国人に成果を持って退職されると、日本の官庁に成果物が残らないので、官僚機構は成果を出す人材を投入できていないという矛盾がある。
欧米の組織はジョブ型組織で、成果を出したものに報酬を与える仕組みである。ジョブ型組織は米国の国立研究所は研究レポートをPM(プロジェクトマネジメント)を使って実施することを指示している。PMはまずプロジェクトの目的(何のために実施するか)、使命(何をやるのか)、目標(いつまでに)、(幾らで)、(製品が求められる品質の程度)を自ら明確にする習慣をつけることから始める。官もPMの精神にのっとり、研究や事業の成果を上げる試みをしてほしい。

12月号は日本国の国債発行とその使い方への疑問を話題とする。

以上

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