PMプロの知恵コーナー
先号   次号

ゼネラルなプロ (100) (実践力)

向後 忠明 [プロフィール] :2月号

 前月号では魅力あるPMというのは、認知力、自己規律、コミュニケーティングそしてリーディングといった総合的な能力と実践力を持った人だという話をしました。

 次に必要な能力は、プロジェクトを上手にマネージすることのできる能力ということになります。
 このマネージする能力とはプロジェクト使命について、そこに示されるコンテキストを的確に理解し、そこから見出された目的、内容、範囲、目標そして各種条件を読み解き、プロジェクトをどのようにして進めるかを計画することから始まります。
 そして、その計画に従って目標の達成を確実にするために、定期的なモニタリングとコントロールを行い、計画との違いを分析し、必要な調整を行うといった一連の流れをマネージすることがPMの役割です。

 プロジェクトマネジメントは日常の業務におけるマネジメントとは若干異なるところがあります。
 何故か?
 プロジェクトというものは非日常の業務であり、特命的な業務であり、新しい価値を生み出す業務である。そこに求められる業務の内容によっては多様な技術や知識が必要となるばかりでなく、経験を含むプロジェクトマネジメント及び関連する知識体系についての知見が必要となります。

 このプロジェクトマネジメント知識体系については多くのガイドブックが出版されています。よって、その詳細はここでは割愛します。
 プロジェクトマネジメントで一番大事なことは計画です。
 プロジェクト計画に示す内容や項目はガイドブックにいろいろ示されているが、大事なことはプロジェクト要件に示されている内容や目的や目標が明確になっているかどうかです。
 最近のプロジェクトは要件が曖昧なことが多くなっています。この場合、すぐにプロジェクト計画を作成することはできません。
 そのためにはプロジェクト要件の確定化といった段階が必要となります。
 この確定化の段階に必要な実践力はすでに「ゼネラルなプロ97」で詳しく説明している認知力というものでその詳細はここでは説明しません。「ゼネラルなプロ97」を参照してください。
 すなわち、認知力はプロジェクト使命に不確定要素が多くあり、何が起こるかわからないリスクや予測不能な場合に有効な思考方法です。
 この実践力によりプロジェクト要件の確定化を行った後にプロジェクト計画を立てます。
 しかし、「要件が決まった」と言ってすぐにプロジェクト計画が立てられるわけではなく、その前にいろいろとやる立ち上げといった段階があります。
 それはプロジェクトに関する重要事項の整理及び明確化でありプロジェクト要求に含まれる目的、内容そして範囲等を理解することです。また、顧客との契約行為の結果でのプロジェクトであれば契約書に示される各種条件を把握したうえでの重要事項の整理、明確化ということになります。
 この重要事項の整理、確認または条件の確認等はプロジェクトを担当するPMであり、そしてそのPMを任命するプロジェクト責任者の役割です。
 このように、立ち上げで一番大事なことはプロジェクトを確定化させる作業です。
 PMはプロジェクト要件を十分把握したらこのプロジェクトを進めるための体制作りをすることが次のステップです。
 すでに説明したようにプロジェクトは非日常業務であり、体制はプロジェクトごとに構築することが必要であり、そのためプロジェクトに必要な人材について必要数をその都度集める必要があります。
 このためPMはプロジェクト責任者の協力のもとで組織内の各部署から必要な人材を集めることになります。そして、プロジェクト責任者はPMとプロジェクト方針や仕事の進め方などをすり合わせ人選を行います。

 この時点では下記に示す内容でプロジェクト基盤を準備しておく必要があります。
プロジェクトの全体枠組み(WBS)、
プロジェクトマイルストーンスケジュール
大枠の実行予算などです。

 以下にプロジェクト計画までの流れを示します。

プロジェクト計画までの流れ

 このように計画はプロジェクトに与えられた条件や取り巻く環境条件を考慮して、その目的達成ができるように経営資源の配分や仕事の進め方、期日、遂行メンバーを明確にすることです。
 計画の中身はプロジェクトを取り巻く条件を分析、洞察し、そこから得られた情報に基づきプロジェクト実行上の方針/目標の明確化、体制の確立、必要な業務の内容、資源配分(人、モノ、金)及びコミュニケーション手段を構築することです。
 ここで大事なPMの行動としては以下のようなことができていなければなりません。

自分の立場を考え、明確なプロジェクトに対する考え方や目標を持って、分析、洞察し、そこにある問題点や優先すべき事項を調整し、その方法や手順を適切する必要があります。
計画内容を関係者に周知する行動を取り、納得感を経て計画書に反映させる。また、プロジェクトスタートに当たっては、プロジェクトに関係する担当を集め、計画内容を説明するためのキックオフミーティングを開き、その計画内容を説明することが必要です。
その計画内容は関係者全員に受け入れられるに十分な羅針盤となっているものでなければなりません。そのためには関係者との十分なすり合わせができる時間を持つ必要があります。

 以上がPMの計画時点での行動であり、計画するにあたっての行動や指針です。

 さて次は計画を立てても実行面でのPMやプロジェクト担当者がそこに示されることを十分に守らなければ計画はあっても計画なしになってしまいます。
 そこで大事なのは計画に従って業務を監視し、業務遂行時における問題領域を早期に発見し、適切な是正措置を取れるように必要な情報を遅滞なく意思決定者に提供することである。
 これをプロジェクト計画に対してプロジェクトモニタリング/コントロールと称しています。
 すなわちプロジェクトマネジメントの中での用語としてよく使われているPDCA(Plan、Do、Check、Action)を回すと言われているものです。
 そして管理される対象はプロジェクト目標の品質(出来栄え)、コスト、スケジュールであり、これらの相反する目標を適切にモニタリング/コントロールしてプロジェクトを成功に導くことがPMの役割です。
 これを簡単に図示すると以下のようになります。

PJ目標(品質、コスト、スケジュール)達成管理

 なお、この図で課題管理という用語が出てきますがモニタリングの結果プロジェクトの進行に影響与える技術的問題やプロジェクト進行に影響を与える障害が発生した場合に発動する課題会議等の管理手順です。
 この結果での処置を是正処置と言い、課題管理の一環として見てもよいと思われます。
 以上がモニタリング/コントロールであるがこのことを適切にプロジェクト計画に従って仕事をマネージするには多くのプロジェクトを経験したものでなければ難しいことと思います。

  このためには:
プロジェクト計画の内容を見える化し、プロジェクト関係者が実行の進捗を容易に把握できるようにしておくことが必要です。進捗状況はマネジメントでの報告会での説明で終わるようなことも多いが、担当者には日々の進捗がいつでも見えるようにしておくとよいです。
計画との差異に限らず、技術的課題が生じてもその問題がどんなものか定期的に課題会議を開き関係者も含め真の問題を追及し、問題の軽重を認知し対応させることが必要です。
PMやPJ担当は机上でのマネジメントではなく直接現場の実行部隊とのコミュニケーションをとり、進捗も含め各種問題に取り組む必要があります。
計画から大きなずれが発生したら、遅滞なく関係者を集め、その原因分析を行い、適切な判断を行い問題解決を図ることが必要です。
 などのアクションを臨機応変に行い、処理していくことをできることがPMには必要不可欠な能力です。

 以上がPMがプロジェクトを的確に目標に向かって間違いなく進めていくためのプロジェクトマネジメント能力です。

 次はプロジェクトにかかわるステークホルダーです。プロジェクトにはステークホルダーという利害関係者が必ず存在します。このため、プロジェクト遂行中でのコンフリクトや人間関係をうまく処理し、プロジェクトを進めていくための方法及び最終的に問題をどのように処置するかといったPMとしてのプロジェクト実行面での実践力といったものが必要となります。

 次月号ではこの話をしてみようかと思います。

ページトップに戻る