PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (99) (実践力)

向後 忠明 [プロフィール] :1月号

 前月号ではコミュニケーティングについて話をしてきました。
 今月はグループの長に必要なリーダとしての能力についての話となります。
 チームの先頭に立ってメンバーを引っ張っていく能力はPMとして必要なものです。
 これはリーダシップと言われていますが、一般的に以下のような定義がなされています。

 リーダが、複数の要員に対して一定期間にわたりより優れたそして望ましい影響を及ぼし、集団の経営資源を最大限に利用して、集団目標を達成していくことです。プロジェクトは一過性の臨時的組織にて遂行される仕事であることと、スピードと効率が求められます。そのため、プロジェクトマネジメントはビジネスライクな管理手法になります。
 よって、PMによって実行される仕事はトップダウン的な管理手法を採用することになります。
 一方、プロジェクトのメンバーもプロジェクトの性格によって臨時的に集められた人達であり必ずしもPMが全員を知っているわけではありません。
 このため、PMの技術的側面でプロジェクトを進めるだけではなく、場合によってはチーム員と摩擦が生じないようなマネジメントも必要になります。

 よって、PMにはリーダに必要な人間的側面を持つと同時にリーダとして必要な以下のような能力が必要になる。

 ビジョニング
 チーム活性力
 率先垂範
 動機付け

 これらはPMが持っていなければならない不特定多数のメンバーを引っ張っていくために必要な能力となります。

 何故、PMにはビジョニングが必要か?
 その理由は、プロジェクトはどのような困難な状況に直面してもその目標達成のためには、メンバーが一丸となって目指すべき方向に向いて各々の役割を果たすようでなければならないからです。
 この場合、プロジェクトの当初においてプロジェクト計画をきっちり立てればよいことです。しかし計画は計画でありこの計画を実際に動かすのはチームのメンバーです。
 そのためにはPMだけが率先垂範を示して行動するだけではなくメンバーがそれぞれの役割において何をするべきかまた何を目指すべきかを考え行動できる環境作りが必要です。
 ビジョンはこのような環境作りのために必要なPMの示すプロジェクトに対する行動指針であり、大義名分であり、スローガンそして、志でもあります。

 その一例を筆者があるプロジェクトにて作成し、チームメンバーに伝えたビジョンを以下に参考として示してみます。

『本プロジェクトの成功はこれからの当社の礎となる第一歩である。
異なる専門分野と経験を持った多様なチームメンバーの構成であるが
与えられた責務を互いに協調性をもって行動していこう』

 上記は筆者が所属していた企業において初めて受注した大きなそれも会社としても初めてのプロジェクトであり、多様な部門から人材を集めたプロジェクトのケースです。
 このプロジェクトはかなり特殊なものでこれを成功させれば同類の仕事を継続的にほかの国からも依頼される可能性のある案件でした。
 そのため、「絶対成功しなければ」といった会社及びPMの意思を示したものです。そして、チーム全員にその気持ちを伝えたいということでプロジェクトの行動指針、すなわちビジョンとして考えました。

 もちろん、ビジョンを作成してチームメンバーを鼓舞しただけではプロジェクトの成功はありません。
 結果としてチーム全体が活性化されなければ意味がありません。
 そこでPMが次に持っていなければならないものはチームを活性化させる能力です。

 すなわち、メンバー相互の信頼関係を構築し、たとえ困難な状況となってもポジティブな行動を維持し続け、プロジェクト内においてメンバーが生き生きとしている状態を作り出すことのできる能力です。
 プロジェクトは何はともあれ一過性の組織でありかつPM配下のメンバーも各部署または外部から入ってきた者も含め、多様な人材をまとめて行く必要があります。
 それだけに、内部的な意見の相違や争いが発生することもあり、これを互いにプロジェクト目標に向かって助け合って、仕事を楽しむ雰囲気を作る必要があります。
 このためにはPMとメンバー間が相互に信頼関係を構築することが重要であり、すでに前月号で話をしたコミュニケーションクライメートを作り出すことが必要となります。
 PMとメンバーとの信頼関係はもちろんPMのプロジェクト進行中での普段の行動のあり方によることも多いに関係あります。

 なお、本題から少し離れるが,ここで少しPMおよび管理者が持っていなければならない資質や行動についてのネガティブな意見をアンケートとして筆者が某講演にて取ったものを披露します。

自分の好みだけで仕事をする人(メンバーを守れない人)
結論・方向を示さない人(話を聞くだけで決断しない人)
率先して仕事をしない人(困難な仕事から逃げる人)(ピンチの時、にげ腰になる人)
思い込みや先入観が強く人の話を聞かない人(人の話やアドバイスを謙虚に聞かない人)(固定観念の強い人)(自分の常識にこだわる人)(絶対に妥協しない人)(柔軟性の無い人)
コミュニケーションの出来ない人
部下の指導・育成の出来ない人
コスト意識の低い人
総合判断力の無い人(場当たり的な人)(現状分析の出来ない人)(技術的志向が強く、他の分野に目が向かない人)
上にへつらい下に厳しい人(権限をひけらかす人)
生意気な部下を嫌う人(偏見を持ち人を見る人)
細かく・内向的で信用できない人
交渉力の無い人(洞察力の無い人)
自己過信の強い人(自分のエゴの強い人)
統率力の無い人
部下にモチベーションを持たせることの出来ない人(動機付け)

 このアンケートを見て、読者の皆さんも自分たちの上司に対して同じ思いを持った人もいるかもしれません。

 なお、この中の一部にはこれから話をするリーダとして持っていなければならない能力としての率先垂範や動機付けなども入っています。
 一方、このアンケートを見て読者も人の上に立ってPMや管理職といった仕事がいかに大変かということも分かったと思います。
 皆さんも、将来、管理職またはPMになろうと考えているなら、胸に手を当てて自分を見つめてみるのもよいと思います。

 さて、少し話を広げすぎましたが、チームの活性力というものはそのチームを引っ張ってゆくPMのあり方にかかっていると言っても良いかと思います。

 さて、次のリーダとして必要な能力は率先垂範です。

 このことはチームの活性力と多いに関係があり、必要と判断したことに対して自発的に、かつ模範となる行動を起こし、周囲の人々の結束を図り、そしてチームの結束も図り、その結果として、チームの活性化につながることになります。

 特に、プロジェクトを構成している多様なメンバーを率いて仕事をまとめていくにはPM自身がどのような困難な状況に会っても逃げたり言い訳をしたりせずに、自ら率先してその困難を克服する姿勢を見せることが大事です。
 メンバーもこの困難な状況の中で、PMの行動を見て学び、同じような困難な状況になっても逃げることなく挑戦する気概を持つようになります。

 ここで、リーダにとって参考となる言葉を以下に示します。これは、第二次大戦の時の司令長官であった山本五十六元帥の言葉です。

 「やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」

 この言葉は筆者の座右の言葉となっていますが、言うは易しく、行うは難し、であり簡単な言葉ですが、これには相当の知識、経験、度量の大きさがないとできません。
 しかし、リーダの率先垂範といった能力をうまい言葉でまとめているような気がします。

 特に、誰もやったことのないプロジェクトにPMとして指名されたとき読者ならどう考えるか?
 挑戦してみるか、言い訳をして逃げるか、もしくはもう少し考えさせてくださいの三つの選択肢があります。
 この時、言い訳をするような人はPMに向かないのは当然ですが、挑戦するといった人も、根拠もなく突っ込むことでありこれも進められません。
 もう少し考えさせてくださいというのが最も上司としては安心できるものです。
 このように考える人は気持ちの中では挑戦したいがこのプロジェクトをやった場合、どのようなリスクがあるか、自分にできるか、そして調査分析等々を行い、時間をかけてこのプロジェクトの背景や状況を見てから決める人です。
 その結果として、「やるか、やらないか」を決めることになります。しかし、状況からどうしても自分しかいないと判断したら、自らこのプロジェクトをやらねばと思ったら、率先してメンバーにこの仕事の重要性や、会社としての必要性を説明し、やる気にさせ、メンバーを導いていく必要があります。
 会社の命令で「いやいや」な気持ちで仕事を進めるとメンバーもその雰囲気を読み取りついてこなくなります。
 この場合、少し上記の山本元帥の言葉と異なるが、「やってみせて、言って聞かせて、させて見せ、・・・」です。

 もちろん、困難な仕事であるので、部下も失敗する場合もあります。そこは叱らず、指導し、そのままさせて見せ、結果が良ければ褒めてやるということが大事です。

 最後に動機付けですが、自発的にプロジェクト目標に向かって、または仕事の中でのPMの行動に魅かれ等々、いろいろな要因があるが、このようなことでやる気が出るということもあります。
 その他、サラリーマンであれば昇進、ボーナスや表彰などが動機づけとなります。
 しかし、このようにニンジンをぶら下げるような動機付けは余り感心するものではありません。
 PMとしてはやはり、このプロジェクトを魅力あるPMの指導によりメンバー同士の絆が深め合っていて、メンバーがやる気になる雰囲気そのものが動機づけとなることが重要です。
 この魅力あるPMというのが、これまで述べてきた、認知力、自己規律、コミュニケーティングそしてリーディングといった総合的な能力と実践力を持った人ということになります。

 さて次はPMとしてプロジェクトを上手にマネージするために必要な能力とその実践力が必要となります。

 これは次月号とします。

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