PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (38)

向後 忠明 [プロフィール] :12月号

 先月号はマネージングについての話をしました。今月はエフェクティブネスについての話をします。
 エフェクティブネスについても同じくゼネラルなプロ (35) の表35-1に示していますが以下の3つの構成要素から成り立つとしています。

コンフリクトマネジメント
関係調整力
判断力

 何故、これらをPMコンピテンシーのカテゴリーに入れたか?
 プロジェクトの実行にかかわらずあらゆるビジネスまたは社会生活においても常に何らかのトラブルが発生します。これがコンフリクトです。これを解決する方法には、「協働」を目指してその問題を解決する必要はあるが、時間的な制約などもあって、「妥協」という道を選ぶこともあります。また、「妥協」さえ望めない時などに、仕方なく「回避」「強制」「服従」といった道を選ぶ場合もあります

 しかし、このようなケースはプロジェクトやビジネスの世界ではあってはなりません。
 よって、当然のことであるが、問題に対しては正面から解決する積極的な行動が必要となります。そのためには何らかの行動すなわち解決のための調整、いわゆる根回しといった行動を行い、そして判断材料を仕入れて最後に相手との交渉に入ります。
 プロジェクト活動でのコンフリクトから判断までの活動を適切なリソース、ツール、およびテクニックを使用して望ましい結果を導き出す効果的な行動がエフェクティブネスです。
 このようなことは当たり前のように思いますが、意外と問題が起きても自分勝手に物事を判断したり、調整を怠ったり、そのため後で問題をさらに大きくするといったことも多く見受けられます。よって、PMコンピテンシーのカテゴリーに入れました。

1 ) コンフリクトマネジメント
 コンフリクト(conflict)とは、「意見や利害の衝突、葛藤、対立」といった概念を意味する言葉です。組織運営においてネガティブに評価されがちなこうした状況を、組織の活性化や成長の機会と捉え、積極的に受け入れて問題解決を図ろうとする考え方を「コンフリクトマネジメント」と呼びます。
 すなわち、生産性、チームワークを維持・向上をさせるために、様々なコンフリクトについて、第一は状況に応じてそのトラブル等の解決のための方針の明確化をすることが必要である。 そして組織の文化、公式・非公式のチャンネルを利用し、情報の共有化を図り、方針に従ってステークホルダーを巻き込んで調整を図り、最適な対応を図るといった行動を言います。
 ここでの行動で大事なことは現在起きているトラブルや問題が直面している状況を把握し、その状況分析を行い以下のような期待する成果を念頭に置いて作業を進めることです。

分析や検討を始める前に当該課題そのものを具体的に本質や確信を突く
直面する状況の全体像が分かるように聞き取りなど行い状況を把握する
問題を具体的に課題化し「どこから」「どのように」手を付けるかを明確にする

 このことにより、プロジェクトマネジャの責任上「何とかしなければならないこと」「気になっていること」「おかしいと感ずること」「手を打たなければならないこと」等直面する状況の一覧表などを作成すると良い。
 よって、プロジェクトにおける問題やトラブル発生時のプロジェクトマネージャに保有されるべき能力についての参考例を以下に示します。

 この考え方は投資型または問題解決型プロジェクトにおける初期フェーズでの事業化計画や要件定義に関するコンサルティングそしてプロジェクト進行中での問題等の効果的課題解決に必要な基本的な思考法です。

 なお、この他にプロジェクトマネージャは常に問題にさらされることを考えると小さな問題でも、ロジックツリーを使い、“何故の繰り返し”と“それでどうするの”と言った思考法(クリティカルシンキング)もあります。
 すなわち、過去の成功体験や自社・自分門の常識にとらわれず、経験や常識に基いた思考をゼロベースとし、物事を論理的に課題を整理、確認し、相手に正確にメッセージを伝えるための思考法である。
 例えば、“気になってはいるが次のステップに移れない”このように考え込むのは的確な状況分析ができていないことに原因があります。その結果、現在起きている事象に対しどのような判断をして良いか迷うことになる。
 上記の関係の一連をさらにわかりやすく下図38-1に示すようになる。

図38-1 効果的マネージメントのための各種分析

図38-1 効果的マネージメントのための各種分析


2 ) 関係調整力
 問題や課題解決にあたり発生するコンフリクトに関連した利害関係者との関係調整の能力を言います。すなわち、それぞれに違った思い、行動パターンを持った人や組織を共通の目的や行動に向かわせていくことです。
 一般的にリーダに求められるものには統率力とともに調整力が必要です。独りよがりの自分の考えで物事を進めるとチーム員はそのリーダにはついていけません。
 また、利害関係者との関係調整を行わないまま物事を進めた場合は後でさらに大きな問題となってくることがあります。
 この関係調整力はすでに以下のようにコミュニケーティングにて説明したような手段をとる必要があります。

 「コミュニケーティングとは口頭、文書、または合図等による個人(相手)、集団への伝達、連絡、相互意志疎通に必要なコミュニケーションの手段であり、業務においては共通基盤の構築および情報収集の手段として利用し、行動することである。
 プロジェクトマネジメントでは社内プロジェクト関係者間、ステークホルダー間、異業種間、異文化間等のインターフェースの問題を防止するために良好な関係を常に維持することが必要である。」

 もちろん、上記は手段であるが関係調整力は上記の手段を使用して行動することのできる能力を言います。
 もちろん、この関係調整力にはコミュニケーティングにより得た対象となる問題に関する情報を図38-1に示す手順にて状況分析を行い、次のステップである判断への材料を供給する役割もあります。

3 ) 判断力
 ここで言っている判断力とは「最終的にある答えを導き,ある事柄を決定する」力と解釈しています。
 すなわち、判断力とは、知識的な学習と論理的な分析力・思考力を知的能力ベースとして持ち、多くの経験を踏まえた経験則に裏打ちされた「正しい状況の把握」と「正しい判断のタイミング」と「正しい決定」が出来る能力と考えられる。
 つまり理屈ではなく,真理を見極めることに限りなく近いのが「優れた判断力」であると言える。
 そのためには、
優れた分析力・思考力にを持ち、知的学習と多くの経験に基づく経験法則によって磨かれた、
「物事の真偽・善悪などを見極める能力」,「真偽を見抜く純粋理性と何をなすべきか、事の善悪を見抜く実践理性との間に橋を架けるような能力」を持ち、
判断すべき事項とタイミングを的確に認識でき、その時点で最良の結果を導き出す方法を決定する能力が必要である。

 ちょっと理屈っぽい言い回しになりましたが、問題やトラブルが発生した時、瞬時に判断し決定しなければならないといっても戦争のような非常に厳しい場面は別として一般的にはその問題やトラブルの解決には若干の時間があります。
 その時間を利用して該当する問題やトラブルについて、その直面する課題の分析をコンフリクトマネジメントや関係調整力により作成された判断材料を自分なりの判断基準を持って物事を決定することができます。
 以上がエフェクティブネスの移管するPMコンピテンシーです。

 それでは来月号は認知力についての話をします。

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