PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (37)

向後 忠明 [プロフィール] :11月号

 先月号はリーディングについての話をしました。今月はマネージングについての話をします。
 マネージングについても同じくゼネラルなプロ(35)の表35-1に示していますが以下の2つの構成要素から成り立つとしています。
計画性
モニタリング
 何故、これらをPMコンピテンシーのカテゴリーに入れたか?
 意外と人は物事を始める前にきちんとした計画を立てずに行動を起こす人がいます。また、計画は立てるがそれを定期的にその内容を追跡し、問題あればその修正や変更に対する行動を面倒に思う人もいます。

 マネージングとは“マネジメントする”と言うことです。マネジメントとは与えられた業務の目標達成を志向し、計画.・リソース(人、モノ、金、情報、そのほか無形資産)の適正な配分を行うとともに、その実行、検証、調整など業務のライフサイクル全般にわたって管理活動を行うことです。
 これらの動きを自然体で行う習慣を身につけているかどうかがPMとしてとして必要な特性です。
 以下にマネジメントの構成と流れについて示します。


 マネジメントを大きく分けると計画とモニタリングとなり、このモニタリングにはコントロールすなわち調整業務も含むことになります。
 プロジェクトではマネジメントサイクルを的確に運用することが重要であり、このためには以下に示すように計画やモニタリングの実行においてプロジェクトマネジャの行動特性が重要な要素となります。

1 ) 計画性
 プロジェクトに与えられた条件や取り巻く環境条件を考慮し、経営資源の配分や仕事の進め方・期日、遂行メンバーを明確化することが計画です。
 計画性とはその計画を計画的に行動できるタイプの人の特性であり、“先または与えられた目標を握握した上で、それを達成するには、今これから何をどのようにすべきか良く熟知していてそれを自然体で行動できるような習慣”をもつことと考えられます。
 計画には国の施策、企業の戦略的企画、事業計画、プロジェクト計画そして日程計画と各種の計画があります。基本は自分のおかれた位置や立場で先または与えられた目標を取り巻く環境や事象を俯瞰的に洞察し、それを達成するための羅針盤となるものでなければなりません。
 プロジェクト計画においては、その内容は対象となるプロジェクトの規模、および特性により千差万別です。プロジェクト計画は与えられた目標の達成のため何をどうするべきかと言った進むべき道を示す羅針盤でありプロジェクトの成否を決定づけるものです。
プロジェクト計画はプロジェクトライフサイクルの内容を俯瞰的に把握し、そして与条件とその他のプロジェクトを取り巻く条件を分析/洞察し、そこから得られた情報に基づきプロジェクト実行上の以下に示す要素を構築することにあります。
方針/目標の明確化
プロジェクト体制、
必要な業務(スコープ)の内容、
資源配分(人、もの、金)
コミュニケーション手段を

 そのためには、その実行に当たっては
計画そのものがプロジェクトの方向性や内容が信頼されるものであり、
プロジェクト組織体制がプロジェクト内容にそったもので要員配置も適切になされ、
ステークホルダーとの人間関係(相互理解)も良好なものにするものであり、
計画実行に関する技術的手順やコミュニケーションが効果的かつ適切に行われるもの
である必要があります。

2 ) モニタリング
 モニタリングとは「監視、傍受、(調査)」の意であり、プロジェクトでは構想や計画に準じてプロジェクト全般の運営が遅滞なく実行されているかどうかを監視すること、またはその仕組みを言います。
 モニタリングの結果として構想や計画との差異が発生した場合の検証およびその調整に関する作業もこのモニタリングの一環として行われることになります。
 この検証および調整そして是正処置を一般的にはコントロールと称することもあります。
 モニタリング対象の主なものはコスト、スケジュール、品質でありこの相反する対象を的確に監視し、調整しながらプロジェクトを進める必要があります。
 さらに、要員、資機材および図書等の管理はプロジェクト業務遂行にかかわる書類、必要機材および人材等のリソースそして要求事項変更に伴うコストの変化への対応などを含み、リソースモニタリング(またはコントロール)と称します。
 これらの機能は品質やコストそしてスケジュール等に関するモニタリングの補助機能としての役割をもっています。
 以下にプロジェクトマネジメントにおけるモニタリング対象項目の主なものを挙げます。

管理対象項目 モニタリングの種類
・ 要員
・ コスト(資金ないし費用)
・ スケジュール(時間、納期)
・ 品質(製品ないし技術)
・ 資機材
・ 図面(図面、仕様書、報告・連絡等々)

・ 業務負荷状況/要員状況/稼動時間状況
・ 実施予算状況/追加・変更
・ スケジュール進捗度合い
・ 検査/クレーム/仕様・スコープ変更
・ 調達項目/調達時期・機材入手
・ 図書類の発行/承認/変更


 モニタリングのあり方には以下のような行動をとる必要があります。
捗状況の監視
“突然の変化”や“驚き”の状況が発生しないように効果的かつ定常的にプロジェクトの現状を計画に従って常に監視する必要がある。
達成状況の分析と評価
現状の動向をよく監視し、計画と照らし合わせ評価し、計画への波及効果の分析をする。
その手段としては下記に示されるものなどがある。
将来および完成時の予測
問題が起こる前に予防措置がとれるように、対座する問題を予測し、その真の原因を分析する。
この手段としては上記①および②で述べられる作業と同一であり、上記に示される内容の現状分析により潜在的問題や起こり得る状況を、経験を含め予測を行う。
是正処置
上記①~③のプロセスを経由して提供された情報をもとに問題の大きさの程度に従ってトップマネージメントにその改善策を含め報告し、初期の計画より大きな“ズレ”があったら、計画の見直しをする。
報告
顧客や上司に対し、現状の進捗度、出来栄えおよび現状の問題点等を月または週次進捗報告書(Monthly or Weekly Progress Report)の形で提出する。

 モニタリング行動様式としてはただ単に計画との差異を見ていることではなく、そこから発生する問題への対処と言ったことが重要な要素となります。そのためにはプロジェクト関係者とのコミュニケーション、そしてその結果としてそこで何が起きているかプロジェクト全体を俯瞰する認知力と言ったものが必要となります。
 例えば、
構想や計画の内容の見える化を行い、プロジェクト関係者が実行の進捗等が容易に把握できるような対策をとっている。
構想や計画との差異が発生した場合、その差異がどこまで及ぶのかを即座に検証し、問題点を俯瞰的にとらえ、問題の軽重を認知しそれに応じた対応をしている。
報告に頼らず直接実行部隊とコミュニケーションをとり、進捗状況の把握を行っている。
モニタリング結果の報告に齟齬があるとプロジェクトの実行に影響を与えるので、常に信頼のおける報告をさせる手段を持っている。

 以上の説明からもわかるようにプロジェクトのマネージングはリーディングでの行動様式、コミュニケーティングの行動様式そしてこれから説明するエッフェクティブネス、認知力、そしてプロフェッシオナリズムでの行動様式のすべてがここに集約されることになります。

 それでは来月号はエッフェクティブネスについての話をします。

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