PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (36)

向後 忠明 [プロフィール] :10月号

 今月号はリーディングについての話をします
 “リーディングとはリーダーと目される人が、率先垂範を示し、組織の結集力を高め、組織全体が一体となって目的に向かって行動するように仕向けること”です。

 リーディングはリーダシップと言われたり、指導力とも言われ、プロジェクトマネジャが目的を達成するため、プロジェクト関係者に働きかけ、個人及び組織が持っている力を最大限に引出し、プロジェクトを成功に導くためのコンピテンシーを言います。
 リーディングにはゼネラルなプロ(35)の表35-1に示すように以下の4つの構成要素から成り立つとしています。

ビジョニング
チーム活性力
率先垂範
動機づけ

 <ビジョニング>
 ビジョニング(Visioning)とは先を読み、そこで自分はこうありたいと思うイメージを描くことです。プロジェクトの場合は「プロジェクトの目的を深く理解し、プロジェクトの目的を達成するためのプロジェクトの方針(方向)を示し、その実現に向けての行動する」ことです。

 プロジェクトでは関係するステークホルダーも種々であり、プロジェクト関係者が一丸となって一つの方向に向かって業務が遂行できるようにする必要があります。そのため、プロジェクト遂行においてはプロジェクトマネジャはプロジェクトの確実な成功を願い、自分の思いや考えを方針として示し、それをメンバーに浸透させ、メンバーが一丸となって一つの方向ン向かって行動できるようにしなければなりません。

 また、プロジェクトマネジャは、プロジェクトの方針に従って、しっかりしたプロジェクトマネジメント計画を立てることは当たり前であり、そして重要である。しかし、どんなに立派な計画を立てても、所詮、計画は単なる計画でしかありません。立てた計画に魂を入れ、生かし、動かすのは“人”です。プロジェクトマネジャはプロジェクトにおいて、メンバーがいきいきと働き、各々の役割を十分に果たせる環境を作り上げることが使命です。

 なを。ふさわしいビジョンの構築には、次の6つの要件を備えることが必要です。

眼に見えやすいこと
実現が待望されていること
実現可能であること
進むべき方向を示していること
柔軟であること
分かり易く理解し易い表現であること

<チーム活性力>
 プロジェクトメンバー内においてメンバーが生き生きと楽しく行動できるコミュニケーションクライメートの醸成、そして困難な状況にあってもゆるぎないメンバー相互の信頼関係が持続するような環境を作り出し続けることです。

 プロジェクトは、ある目的を達成するためにチームによって遂行される活動である。
すなわち、プロジェクトは、ある目的達成のためチームワークによって遂行される活動であるとも言えます。
 このため、プロジェクトの成否を決める要素の一つに「チームワークの良い悪い」がある。この良い(優れた)チームワークが発揮されるチームを良い(優れた)チーム、すなわち活性化されたチームとして捉え、活性化されたチームを形成・維持するためにプロジェクトマネジャやリーダーが発揮する力をチーム活性力と言います。

ところで、チームとかチームワークとはどのようなものなのでしょうか?

チームとは、ある目的や目標を達成するために役割や責任を与えられた人々(メンバー)で構成され、ある期間、協同で職務を遂行する集合体である。
チームワークとは、チーム内のメンバーが情報を共有し、相互に関係して、目的や目標を達成するために役割や責任を遂行していく状態のことである。

 優れたチームワークを発揮しているチームは、高いパフォーマンスを達成しています。プロジェクトの目的を達成するためは、高いパフォーマンスを出せる優れたチームワークの実現が重要になります。
 優れたチームワークを実現するためには、下記「優れたチームワーク実現のための6つの要素」が必要とされています。

「優れたチームワーク実現のための6つの要素」

全員が共通の目的を共有して一つの仕事を達成すること
全員が互いに助け合って仕事をすることを楽しんでいること
全員が役割を担うことで、プロジェクトの目的の達成をコミットすること
異なる専門分野と経験を持った多様な個人が一つの作業にあたること
全員がプロジェクトの意義を信じ、プロジェクトマネジャを信頼、尊敬して、忠誠を誓っていること
チーム・スピリットのもと全員が高い士気をもつこと

 優れた(活性化された)チームを形成するためには、リーダーまたはプロジェクトマネジャは業務遂行の中で次のことが実施されるような行動を起こす必要があります。

チーム内で情報が共有され、効果的なコミュニケーションが行われている。
プロジェクトマネジャとメンバー間、およびメンバー間同士の相互信頼関係が構築され、チームの結束力・一体感がある。
チーム全体が目標や目的を明確に理解し、達成意欲をもって、目標達成に目指している。
メンバー間の役割分担が明確で、分業と協力体制が効果的に行われている。

 チームの活性力はもすでに説明したビジョニングやこれから説明するリーダーやプロジェクトマネジャの率先垂範そして部下に対する動機づけなどによる信頼感ややる気の醸成によって、総合力として発揮されるものです。

<率先垂範>
 人の先頭に立って行動を起こし、模範を示すことである。すなわち、目標達成のために、必要と判断したことに対しては自らリーダーとして自発的に行動を起こし、周囲の人々の結束を主導することです。

 経験の浅いメンバーの多いプロジェクトや、困難に直面したプロジェクトなどにおいて、リーダー、すなわち、プロジェクトマネジャ自らが率先して行動を起こすことが、プロジェクトの成功に大きな影響を与えることは周知のことと思います。

 例えば、
経験の浅いメンバーの多いプロジェクトにおいては、プロジェクトマネジャー自ら率先して「この場合はこのようにやるのだ」という手本を見せることによって、メンバーに協力し合う雰囲気を醸成できる。
困難に直面しても、プロジェクトマネジャ自らが率先して、その困難を克服する姿勢を見せることによって、メンバーも困難さから逃げることなく、なんとか克服しようとする勇気が醸し出され、プロジェクト全体が困難な状況から脱出することが可能になる。

 リーダーにとって「率先垂範」がいかに必要であり重要であるか、たとえば以下のような例が有名である。著者も好きな言葉の一つです。
 「やってみせ、言ってきかせて、させてみせ、誉めてやらねば人は動かじ。」
 これは、連合艦隊司令長官山本五十六が言った有名な言葉であるが、絶対服従の軍隊ですら山本は自ら率先することの重要性を訴えています。
 昨今はやりの「コーチング」でも率先垂範の重要性が力説されているようです。

<動機づけ>
 賞罰、表彰、賞賛といった外発的動機づけのみならず、好奇心や関心によってもたらされる内発的動機づけを含めて、部下の特性を把握し、価値観、好奇心、関心に働きかけ、高いレベルで目標を達成させるための行動を言います。

 動機はある場面で、その人の行動を決定するには意識的または無意識的なものがあります。動機づけ(モチベーション)は人間や動物を行動に駆りたてることであり、行動に駆りたてるには内部の動因(動因とはある物事を引き起こす直接の原因)と外部の解発因(解発因とは特定の行動が一定の要因によって誘発されること)との結合によって行われます。
 厳しい環境にあっても、プロジェクトメンバーに最高の仕事をさせるという事はプロジェクトマネジャにとってなかなか困難なものです。そのため、プロジェクトマネジャはモチベーションを高めるものは“何なのか?”についていつも試行錯誤を繰り返しているのが現状です。

 ここで、プロジェクトマネジャがメンバーのモチベーションを高めるには、どのような行動を心がければよいのかを考えてみます。
 メンバーのモチベーションを高める、すなわちメンバーの欲動を満たす行動に駆りたてるには内部の動因と外部の解発因との結合をプロジェクトマネジャは十分に考慮して、動機づけを行っていかなければならなりません。
 内部の動因の動機づけは内発的動機づけと見てもよい。内発的動機づけは価値観、好奇心、関心によってもたらされる動機づけであり、賞罰に依存しない行動です。
 また、外部の解発因の動機づけは外発的動機づけと見てもよいと思います。外発的動機づけは義務、賞罰、強制などによってもたらされる動機づけです。
 内発的動機づけに基づいた行動は行動そのものが目的ですが、外発的動機づけに基づいた行動は何らかの目的を達成するためのものです。
 プロジェクトマネジャが以下に示す4種類の欲動を満たすようにメンバーは強く望んでいるはずです。

獲得の欲動が満たされれば喜びを感じる
絆の欲動が満たされれば愛情や思いやりなど前向きな感情を持つ
理解の欲動が満たされれば満足をおぼえ、やる気が湧いてくる そして次の挑戦にわくわくする。
防御の欲動が満たされれば安心感と信頼感にしたる

 リーディングはプロジェクトマネジャに限らずあらゆる組織においてのリーダーとして持っていなければならない資質であり、組織を束ねるうえでの重要な要素です。

 リーディングを一言でいうと:

 “広い視野(知識)と経験からくる先見性と”気付き“を持って、何をどのようにするかといった大きなビジョン(目的に対する方針や方向性)を持って、率先垂範にてメンバーを鼓舞し、結果についても責任を持って行動する。”

と言ってよいでしょう。

 以上がリーディングですが来月号はマネージングについて説明します。

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