PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (39)

向後 忠明 [プロフィール] :1月号

 先月号はエフェクティブネスについての話をしました。今月は認知力についての話をします。認知力についても同じくゼネラルなプロ (35) の表35-1に示していますが以下の4つの構成要素から成り立つとしています。

全体的(戦略的)視点
情報収集
問題発見力
課題解決力

物事を始めると必ずは未知や複雑な問題が発生し、各種の不合理でかつ不確実な関係の中で活動せざる得ない状況になる場合があります。
 所与の使命(目的、期限、期待(投資や効果等)が決まっているプログラムやプロジェクトも求められる役務の中で実際は明確でない種々の制約条件や潜在的要求など、暗黙知の要求事項が含まれています。
 認知力とは上記のような環境にある物事の初め、またはプロジェクトを全体的視点で目的達成までの道程を考慮し、情報収集・問題発見・課題解決の一連の行動からなり、実行段階においてもプロジェクトの成功に影響を与える様々な事象を「認知」し、課題を解決していくコンピテンシーを言います。
 なお、認知力と前月号で説明した、エフェクティブネスとは補完関係にあり、実際の行動に当たっては双方の相乗効果を出せるようなものにしていく必要があります。

1 ) 全体的視点
 全体的視点とは、所与の使命の生まれた背景や置かれている環境、および全てのステークホルダーの期待を踏まえてプロジェクトの全体像を把握し、何をすべきかを常に意識してプロジェクト活動の実態を見ることと言えます。
 そのためには次に説明の情報収集が重要な要素となり、自社の資源に関する情報、各種データ、調査等の情報源を幅広く、捉え細分化し、新たな発想も取り入れた全体最適を目指したソリューションである必要があります。
なお、全体的視点はプロジェクト実行中での課題解決においても発揮されなければならないコンピテンシーです。

2 ) 情報収集
 あらゆる情報源や入手ルート、収集手段を活用し、プロジェクトの遂行や、様々な意思決定で必要となる情報を早く正確に、且つ幅広く集めます。
 そして、その情報を直面する状況を把握し、細分化・分析し、有効かつ体系的に整理し、優先順位の設定を行い、全体像を把握し、状況の把握をします。
 この一連の活動を情報収集と言います。
 この場合、前項でも説明したように全体像を把握する全体的視点でのコンピテンシーも同時並行的に働かせる必要があります。
 なお、分析や検討を始める前に、当該課題または問題そのものを具体的かつ本質を突く必要があります。そして、
直面する状況の全体像を把握し明確にする事
課題として記述され、「どこから」「どのように」手を付けるか明確にする事
 が大事です。
 そのためにはまず得られた情報から 「何とかしなければならないこと」 「気になっていること」 「おかしいと感ずること」 「手を打たなければならないこと」などの直面する状況を客観的かつ冷静に状況の全体像をつかみ、かつ浮上しにくい問題の顕在化を助けるように情報の整理を行います。

3 ) 問題発見力
 問題(課題)の発見は上記の情報収集と大きく関係し、その結果を持って解決すべき問題、リスクを早期に予知、発見することを意味します。
 すなわち、問題発見力は状況の把握とそこから真の原因を見つけ出すために発揮されるコンピテンシーと捉えることができます。
 ここでの主な活動は「あるべき姿」と「実際の姿」との間にギャップがある場合には、そのギャップを埋めるための対策が必要となります。その対策を講ずる前に真の問題や原因を究明する必要があります。
 真の問題の探求は種々の問題解決技法の活用が考えられる。これにより問題の性質によって使い分け、探求過程を「見える化」することで正確な問題把握を効率的に行う事ができます。
 技法としてはトヨタ自動車のカイゼン活動における「なぜなぜ5回」などは有名です。

4 ) 課題解決力
 発見された問題から、プロジェクトにおける課題を整理し、影響や効果を総合的に評価して解決レベルを見極め、課題解決策を決定・実行し、課題を解決することを意味します。
 これには前月号でのエッフェクティブネスの項目の一つである判断力が必要となってきます。
 すなわち、情報の分析により全体的視点からの状況分析を行い、そこから問題抽出を行い、その問題の性質を捉えてギャップ対策を行い、判断材料とすることまでがこれまでの説明でした。
 ここまでの過程で、問題解決の資料は整ったことになるが、ここで言っている問題解決力とはその解決策を行動に移す判断と決断を含むものと考えねばなりません。

以上、認知力について説明してきたが、多くの場合すでに前月号にて説明してきたエッフェクティブネスのコンピテンシーと重なる部分がるように思っている読者諸氏もいると思います。
 なぜなら、このエッフェクティブネスと認知力は“物事の始まり”における“始点”での行動から、その結果によって発見された課題や問題を提起しその解決策の成否を判断し、行動に移すまでの指針を示す一連の作業に必要なPMコンピテンシーと筆者は考えています。
 もちろん、この一連の作業の中には、最終の行動を移すまでの間に必要な、関係者間に発生するコンフリクトに関するマネジメントそして関係者間調整などもあり、場合によってはその提案によって発生した課題や問題もネゴシエーションを通して解決していくといった作業も発生してきます。
 当然、上記の一連の過程で、特にプロジェクト実行以降ではマネージンング、コミュニケーション、リーダーシップといった、実際の作業で必要なコンピテンシーも関係してきます。
 よって、これまでのPMコンピテンシーの関係を総合的に見てみるとそれぞれの関係は以下のようになると思われます。



 以上が所与の使命から、プロジェクト実行までの間に発生する課題や問題を処理するフローの中でこれまで定義したPMコンピテンシー(  )で示した部分はどこで、どのように利用されているかについて図式であらわしてみました。
 これを見るとPMコンピテンシーはそれぞれの単独のカテゴリーで発揮される特性ではない事がわかります。

 次月号はプロフェッショナリズムについて説明してみます。

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