PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(58)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :1月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

4 涙
●戦争と裏切り
 前号で「戦争」と「裏切り」という否定的落涙原因の場合、いくら涙を流しても精神的に浄化される効果を一切もたらすことはない。その結果、心に深い傷を負わせる。だからこそ、一時でも深い悲しみと苦しみから解放してくれる、明るい、楽しい「真のエンタテイメント」が貴重な存在となることを論じた。

 貴重な存在である「真のエンタテイメント」に於いて、最も大きい働きをするものが「笑い」である。「笑い」は、多くの深刻な問題を解決する「糸口」を与えてくれる。「涙」は、時に精神的浄化効果をもたらす。しかし心に傷を負わせるほどの深い悲しみや苦しみは解決してくれない。

 しかし「真のエンタテイメント」に接しても、全く笑えない場合は、鏡の前で敢えて「笑顔」を作ってみることである。その様な「偽りの笑い」であっても、「笑い」が持つ本来の効果が生まれるからである。心に深い傷を負って悩んでいる読者は、是非、偽りの笑いの効果を試してはどうか。

●平気で人を裏切る人物とは?
  戦争とエンタテイメントの関係は、別途、議論する。その代わり、身近な問題である「裏切りとエンタテイメント」の関係を本号で取り上げる。

出典:Angel & Devil yahoo.com/images 出典:Angel & Devil
yahoo.com/images
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 平気で平然と人を裏切る人物は、一体どの様な性格を持った人物なのか? その様な人物を如何に見抜くか? 見抜いたら如何に対処するのか? この問に順次答えたい。

 「夢」の実現と成功に挑戦する人物のための「教え」は、世の中に数多く存在する。また「失敗」を防ぐための「教え」も数多く存在する。

 しかし平気で平然と人を裏切り、貴重な「夢」を破壊し、悪夢をもたらす人物とは、どの様な性格を持つのか? その人物を如何に識別するか? 識別したら如何に対処するか? などに関する「教え」は、殆ど存在しない。

●夢工学と悪夢工学
 筆者は、「夢」の実現と成功のための「基本的考え方」と「具体的方法論」を説く「夢工学」を以前から提唱してきた。また私利私欲、責任回避、裏切り等を平気で行う人物による「夢破壊工作」を防ぐための「基本的考え方」と「具体的方法論」を説いた「悪夢工学」も提唱してきた。

 この「悪夢工学」は、悪夢を作る工学ではない。その反対で、正しくは(抗)悪夢工学である。「絶対に許せない夢破壊者」と戦うための工学である。この工学に対して世の中の耳目を集めるため、誤解される事を承知で、敢えて「抗」の字を削除した。

 否定的落涙を防ぐために「悪夢工学」を習得し、積極的落涙を得るために「夢工学」をすすめたい。本論のエンタテイメント論(56)で両工学の参考書を紹介している。是非、見て欲しい。

●悪夢の日々
 筆者は、過去に数多くの事業プロジェクトを計画し、建設し、運営する経験を積み重ねた。しかし残念ながら成功例は少なく、失敗例が多い。しかも不幸なことに、失敗例の中で筆者の責めに帰す失敗例は少なく、失敗させられた例が多い。言い換えれば、失敗させられない様に対処出来た場合、初めて成功したのである。筆者と同様の経験をしている読者は多いと思う。

 新しいアイデアや新しい観点から新しい事業を立ち上げ、実現させ様とすると、必ず既存の事業関係者、既得権益者などの有形、無形の抵抗を受ける。その抵抗者は、当該事業プロジェクトに関係する企業や役所の内外に存在する。味方と思っていた人物、全く想定外の人物などから巧妙且つ有効な破壊工作を受け、見事なまでに当該プロジェクトが潰され、闇に葬られてしまう。

出典:Blood-tears reedmooleytattoos.deviantart.com 出典:Blood-tears
reedmooleytattoos.
deviantart.com

 裏切られた、失敗させられた、破壊された当事者は、耐えられない屈辱、苦しみ、恨みなどを抱き、眠れぬ悪夢の日々を送る。しかし幾ら「血の涙」を流しても、精神的に浄化されず、救われないのである。この様な体験をした人物は、古今東西、数えきれないほど存在する。

●負のエンタテイメント
 血の涙を流し、悪夢の日々を送る悲劇は、小説、映画、TV番組などの題材になり、「負のエンタテイメント」を形成する。

 「負のエンタテイメント」は、「マシン・エンタテイメント」と同様、筆者が勝手に造語したものであり、以前から使ってきた用語である。残念ながら、その本質をよく理解されず、普及もしていない。

 しかし造語も、普及も、どうでもよいことである。それよりも、現実に起こる最悪の悲劇を避けることである。悪夢に遭遇し、苦悩する人物は、どの様な「道」を辿るのであろうか? 彼らを救う「道」はあるのか?

●悪夢苦悩者の辿る道
 何度も、何度も陰で誹誘され、裏切られ、騙され、妨害され、破壊された人物は、寝られない悪夢の夜を経験する。この様な悪夢苦悩者は、憤慨、激怒、悲憤、悲嘆、絶望など言葉に表せない苦痛を味う。この悪夢苦悩者は、概ね以下の「道」を辿る。

 しかし暗い話で読みたくない読者、昔の辛いことを思い出したくない読者もいるだろう。しばし我慢して付き合って欲しい。

●悪夢の原因探求
 悪夢苦悩者は、最初に、「何故、自分だけが憤慨、激怒、悲憤、悲嘆、絶望など言葉に表わせない深刻な悪夢に経験せねばならないのか?」と悩む。そして「悪夢を引き起こした原因は何か?」を探る。その原因が分かれば、問題解決に取り組むことになる。もし解決すれば、万事めでたし。

●救済の相談
 しかし原因が分からず、分かって取り組んでも解決しなければ、深刻に悩むことになる。そして親、兄弟、友人、知人、上司などに相談する。それで解決すれば、万事めでたし。

 しかしダメな場合、カウンセラーなどに相談し、救いとなる解決策を求める。その相談で救われれば、万事めでたしとなる。
何故、こんな目に遭わねばならないの? 何故、こんな目に
遭わねばならないの?

●逃避
 しかし相談しても、解決しない場合が極めて多い。何故なら悪夢を引き起こす人物、言い換えれば悪夢の原因である破壊工作を行う「夢破壊者」が破壊工作を続ける限り、誰に相談しても、問題は一切解決しないのである。やがてそのことに気付いた時、悪夢苦悩者は次の行動に出る。

 それは、夢破壊者から逃避することである。顔を合わさないこと、遠ざかること、隠れること、最悪の場合は、会社や役所を辞めることなどである。

 夢破壊者の執拗な破壊工作によって悪夢苦悩者の夢、プロジェクト、ビジネスなどだけでなく、時に命より大切な人間としての尊厳、名誉、誇り、生き甲斐を奪われる。逃げるが勝ちである。
つづく

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