PMプロの知恵コーナー
先号   次号

「エンタテイメント論」(59)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :2月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

4 涙
●戦い
 先月号で悪夢苦悩者に「逃げるが勝!」と論じた。逃げることは、決して消極的、否定的な解決策ではない。悪夢の状態からの逃避を決意し、逃避の行動に出ることは、積極的、肯定的な解決策である。

 例えば、社員を物の様に不条理にこき使う社長、自己中心主義者の上司によって日々いじめられたり、中傷や裏切り行為で人格まで踏みにじられる様な状態が常態化した会社など、さっさと辞めることである。

働け! もうダメです!
働け! もうダメです!

 しかし他の会社を見付けるまでは、歯を食いしばって働かねばならない。でないと無職になる。そうなると悪夢でも働いていた方が良いからだ。もし転職の逃避に成功すれば、万事めでたしとなる。

 会社をどうでしても辞められない特別な事情がある場合や逃避のための転職先を見付けることに失敗した場合は、どうすればよいのか? その場合の解決策は、夢破壊者、即ち酷い社長や上司と直接又は間接に戦い、勝利することである。

 例えば酷い社長をコントロール出来る人物(当該会社のオーナー、会長、大株主など)に直訴して、社長交代を実現させること、自己中の上司を移動させたり、首にさせること、不当労働行為をしている当該会社のこと監督官庁に訴えることなどである。これらの戦いに勝てば、万事めでたしとなる。

 しかし以上の行動は、本人が強くなければ、また本人を支援する人が周囲で存在しなければ、この戦いに勝つことは極めて難しい。負ければ、本人は左遷どころか、首になるかもしれない。既述の通り、筆者が挑戦した「夢」の事業プロジェクトで成功した場合とは、筆者を支える人の助けを基に夢破壊者との戦いに勝利した場合であった。

●自殺
 悪夢苦悩者は、そもそも夢破壊工作者と戦える立場にあるか否かが極めて重要なことである。その立場にない場合、戦っても失敗する。そして悲劇的な結末になる。

 逃避も出来ず、戦うことも出来ず、戦っても失敗すると、追い詰められた悪夢苦悩者は、否定的落涙さえ流せないほどの最悪の事態になる。その結果、破壊者への復讐を決意するか? 決意して実行するか? 実行できず悪夢の日々を送るか? 来世への逃避を実行するか? どの選択をするか? 本人次第である。

 「来世への逃避」とは、言うまでもなく「自殺」である。自殺は、残念至極であるが、本人にとっては「救い」を求めた行動であり、自殺者に対しては、「救い」になったと考えて上げるべきだろう。と同時に本人を自殺に追い込んだ原因を徹底的に解明する一方、その種の再発を防止するべきである。でないと自殺者の魂は永久に浮かばれない。

 1948年設立され、本部がスイス・ジュネーブにある、「世界保健機関(WHO=World Health Organization)」は、下記の通り、世界各国の自殺率(2009年)を公表している。

出典:世界の自殺率 ウイキペディア

 上記の世界地図で赤色の国が最も自殺率が高く、黄色の国が次に多い。ねずみ色の国が最も低い。日本、韓国、旧社会主義諸国は、最も高い自殺率である。その原因は何か? 良く分からない。

出典:世界の自殺率 ウイキペディア
出典:世界の自殺率
ウイキペディア

 ちなみに日本の自殺者数は、2012年、2万7766人で、前年比2885人減。1997年ぶりに3万人を下回った(警察庁・2013年1月17日公表。自殺統計・速報値) 最近、景気は益々悪くなっている。社会的環境も年々、悪化している。しかし何故、自殺者が減少したのだろうか?

●自殺の原因分析
 日本の自殺の原因は、無職、健康、生活苦などが挙げられている。しかし自殺に至る原因の分析は、筆者の知る限り、いずれの調査も中途半端な様だ。自殺の調査に多大な時間も、労力も、金も掛けられないからだろうか。従って良く分からないのである。

 2012年末に起こった、大阪市立桜宮高校のバスケット部キャプテンの少年の自殺事件は、マスコミで大きく取り上げられ、益々大きい社会問題になっている。大阪市、教育委員会、評論家、マスコミ報道者などは、バスケ部顧問の男性教諭の体罰と学校側の黙認という「体罰」が根本原因とした。従って「体罰禁止」こそ、基本的対策と考えている様である。本当であろうか?

 自殺者本人は、責任感があり、リーダシップもある人物と言われている。もし彼がその様なしっかりした人物ならば、「体罰」という物理的行為がたとえ常態化しても、自殺するとは考え難い。

 「悪夢工学」の観点から評価すると、「体罰」よりも、本人の努力、自尊心、生き甲斐などを根底から砕く様な「精神的体罰」や他部員の前で本人の人格を著しく傷つける様な「見せしめ的体罰」が行われたのではないか。

 本人は、本当に責任感がある人物ならば、キャプテンを辞めたり、部活動から離れるという「逃避」を選択できなかったであろう。まして当該教諭と直接戦うことなど潔しとしなかったのではないか。その結果、深刻な悪夢の日々を送り、遂に「自殺」という逃避を実行したのではないか。これは、あくまで「推測」であり、悪夢工学の観点から「本人」の自殺に到る過程を仮定的に評価したに過ぎない。

 しかし「体罰」が根本原因という直截的な分析ですべてのモノゴトを進めることだけは止めて欲しい。自殺した本人と家族のためには、自殺に至る原因を「本気と本音」で徹底追及して貰いたい。もし可能なら「悪夢工学」の観点からの原因分析も実施して欲しい。

●復讐
 自殺しない悪夢苦悩者は、密かに夢破壊者への復讐を誓う。しかし実際に究極の復讐の行動に出る人物は極めて少ない。多くの場合は、恨みを抱きつつ、生きていくのである。そして悪夢にうなされるのである。

 昔の日本では、その実在が確認されていないが、最近の日本では、その実在が確認されている事がある。それは、映画、TV番組などの「負のエンタテイメント」で登場する「死の復讐」を代行する「必殺仕掛人」の実在である。

出典:映画「必殺仕掛人」アマゾン amazon.co.jp 出典:映画「必殺仕掛人」
アマゾン amazon.co.jp

 「必殺仕掛人」が実在することを筆者は官僚時代に警察庁関係者に確かめている。本稿の読者を含め、多くの日本は、「必殺仕掛人」の実在など全く知らないだろう。しかし欧米諸国と同様に、最近の日本には「金」で人を殺し、傷つける人物が実在するのである。日本は「世界一安全で平和な国だ」と信じている人物は、何とお人好しで、平和ボケし、日本も、世界も知らないナイーブ(悪い意味)な人物であると言えば、言い過ぎであろうか。

 必殺仕掛人を題材にした「負のエンタテイメント」は、フィクションの世界で存在する限り、負の観点からの凄いインパクトのある「楽しみ」や「遊び」となる。しかし実在するとなると、事態は全く変わる。そしてその題材の取り上げ方に慎重を期さねばならない。

 幸いなことに、日本のTV番組や映画は、必殺仕掛人を主として「時代劇」の中で扱っている。そのためリアリティー(現実性)が無い。しかし「現代劇」でそれを度々扱う様になると、復讐を誓っている人物にとっては、それが身近な存在になり、リアリティーが生まれてくる。その結果、必殺仕掛人の活用を計画したり、実行したりする可能性が生まれる。日頃から積り積もった「恨み」を晴らすため「カネ」の力で「必殺仕掛人」を雇う。考えただけでも恐ろしいことである。しかし現実に起こっているのだ。

●悪夢工学
 犯罪や復讐などの多くの実例を見るにつけ、究極の復讐である「殺人」を実行する可能性は、多くの人に存在すると考えてもよいのではなか。何故なら実際に殺さなくても。「殺したい!」と思った相手がいた経験を多くの人は持っているからだ。

 もし極度に高まった憎悪のため完全にキレてしまい、まったく自制心を失えば、究極の復讐を犯す可能性が現実化する。悪夢工学の観点から評価すると、殺人や暴行の復讐が極端なのではなく、憎しみが極端だからである。

究極の復讐=殺人 究極の復讐=殺人

 筆者は、今まで何度も、何度も、夢破壊者の破壊工作によって、「批判」され、「中傷」され、「裏切」られ、「煮え湯」を飲まされ、夢の事業プロジェクトを破壊されてきた。その都度、戦ったが、殆ど負けた。そして否定的落涙をしても解消されず、眠れない辛い日々を送り、悔しい、憤りの「悪夢」を経験した。

 筆者は、ある日、彼らへの「復讐」を心に誓った。しかし復讐を実際に実行するのではなく、何か別の方法を実行できないかを考え、悩んだ。

 悩んだ末に出てきた答えは、復讐心を「昇華」する方法しかないと考え様になった。しかしその方法は何なのか? 思い付かず、またしても悩んだ。

 その悩みの一つが以下の「問」に答えることであった。読者も「涙」を落とし、「悪夢」に悩む様な事態を避けたいならば、次号までに以下の「問」に対する「答え」を考えて欲しい。
どの様な「人物」が平然と平気で人の「夢」を破壊するのか?
彼らはどの様な「性格」の持ち主なのか?
どの様にして彼らを「見抜く」か?
彼らの夢破壊工作をどの様に「排除」するのか?

つづく

ページトップに戻る