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プロジェクト管理はクイズか?

板倉塾 塾長 板倉 稔 [プロフィール] :1月号

 時々「プロジェクト管理はクイズか?」と思わせられることがある。クイズは、質問があって答えを言う。プロジェクトも、問題があって答えを言う。プロジェクト・マネジャが答えを言うと、それをやれる人達がやってくれる。「なあ~んだ、プロジェクト管理はクイズなのだ」と言うことだろうか。
 ある時、「レビューをさせる方法はないですか」と聞かれた。良く聞いてみたら、あるプロジェクトで品質問題が起きた。そのプロジェクトでは、レビューがまともにされなかったと言う。レビューは品質を上げる。だからレビューをすれば、問題は出なかったはずだと言うことらしい。しかし、更に聞くと、初めて使うパッケージで、期間が短い案件だったと言う。
 そうだとすると、話は一寸違う。要件とパッケージは、どうすり合わせたのだろうか。要件はどう定義したのだろうか、パッケージの機能はどこまで分かっていたのだろうか、開発プロセスは、・・・と色々と疑問か湧く。でも、質問は、「レビューをさせる方法はないですか」なのだ。
 質問者が本当に得たい解は、「レビューをさせる(する)方法」ではなくて、「然々の条件のときに品質問題を起こさない方法」だろう。確かにその一つの解はレビューすることである。しかし、レビューをさせる方法が分かったとしても、この問題は解けないだろう。「品質が悪いならレビューをする」と言う様に、問題と解を短絡的に当てはめるのではなく、問題自体を正確につかんだ上で、解の選択に移る必要がある。現地で現物を見て考え、問題を把握して始めて解を考えなければならない。
 ここで、なぜ、問題と解が、表層で結びついてしまうのだろうかと言う疑問が湧いてくる。多分、クイズの様な選抜を長い間受けてきて、これが染みついてしまったのではなかろうか。テレビ番組も、学校の試験も、入試も、資格試験もクイズみたいだ。何を知っているかを問う場面だらけである。
 試験で「できる」あるいは「考える」ことを問うと、正解がなく採点の客観性が問題になる。従って、正解が一つしかない問題を作り上げることになる。斯くして、知識を問う問題が出来上がる。この問題を解けば、資格が得られたり、入学を許可されたりする。その結果、多くの人が知っていることに価値があると思い込む。
 実務の場面でも、人々は仕事を出来るだけ単純にして、考えないで、かつ、熟練せずに済むようにしてきている。問題がおきれば、再発しないようにやり方を変えたり、チェックリストを作ったり、問題がおきないように施策を考えてきた。この様に、考えないで上手く行くように一所懸命してきた。つまり、教育も実務も考えないで済むようにしてきたわけだ。
 ところが、現状では、プロジェクトの品質問題を解くことができると証明された問題区分も問題に対応する正解も存在しない。この方法は役にたったことがある解は沢山ある。従って、品質を確保するもっと上手い方法があるかもしれないし、問題をもっと分解能良く分類できるかもしれない。少なくとも、今の問題の分解能も、解も十分な精度を持っていない。既存の解がないかもしれないのに、既存の解を当てはめるようとしているのである。
 第二に、プロジェクトでおきる問題は、過去の問題と同じではない。問題は似ていても、システム対象も、時も、中身も、人も違う。それに問題の原因は複合している場合が多い。現象だけ見ても、問題は分からない。現地で現物を見て、問題を正しくつかもう。問題がつかめても、解は殆ど無数にあるので、どの解を選ぶかを考える必要がある。問題と解が一対一で対応するケースはまずない。
 まずは、問題は単純で無いと思うこと。これを原点として、原因を考え、対策を考えてみよう。初めは何を考えて良いか分からないかもしれないが、そこから考えて見ることだ。

以上


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