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サッカー的に考えるPJ成功への道

育成WG NECソフト株式会社 志田 智宏 [プロフィール] :1月号

私の担当業務はIT人材育成全般(プロマネに限らず)だが、今回はPJを成功に導くために、会社や個人にどんな要素が必要になるのかを私の好きなサッカーチーム・英国のリバプールというチームに例えて考察してみたい。

リバプールは、ビートルズで有名な街のサッカーチームでいわゆる名門とか強豪と呼ばれる有名なチームだ。このチームは70年代に隆盛を極め何度もヨーロッパチャンピオンに輝いたが、80年代以降は徐々に輝きを失い長く成績低迷していた。そんなチームが2005年に再びヨーロッパチャンピオンに返り咲いている。この低迷から返り咲きまでを考察すると、PJを成功させるヒントがいくつか見えてくる。

まずサッカーにおけるPJ目標は原則として「勝利すること」である。このPJ目標を達成するためプロジェクトマネージャに相当する監督やメンバにあたる選手、会社組織に相当するバックヤードの面々(いわゆるフロント)がそれぞれ努力や工夫をしている。
まず監督だが、当時はベニテスという人物に交代したばかりだった。彼・ベニテスPMが行った事で、成功へのヒントになる事をいくつかピックアップすると、戦術の変更、メンバの最適化、適切なリーダの任命がある。

まず彼は前任者が好んで採用したカウンター戦術から、積極的に攻撃を仕掛ける戦術に変更した。いわば負けないサッカーから、勝つサッカーに転じたのだ。これは前任者が悪いと言っているのでは無い。ここでのヒントは「得意な型」を持っているかどうかだ。価値観やポリシーと言っても良いかもしれない。次に、彼は得意な型が機能するように「必要な選手を数人補強」した。これはもう完全に調達マネジメントということになる。そして最後に彼はチームのキャプテンを変更した。どのスポーツでもそうだが、監督は通常プレーはせず選手の中にキャプテンや主将という役割が存在する。この時のチームでは、ある外国人選手が長い期間キャプテンであったが、英国人でかつチームの下部組織からの生え抜き選手をキャプテンに任命した。ここではキャプテンの持つ「責任感」がヒントになる。
会社的に言えば愛社精神といった所か。一方、PJ現場ではプロパ社員がプロマネやリーダになっていないケースも多々あるように思える。
また、これ以外にも多くのサッカー監督はプロジェクトマネジメントを実践している。監督は、世界のサッカー事情(トレンド分析)に造詣が深く、また対戦相手の研究(ステークホルダ分析)も欠かさない。選手とのコミュニケーションも密接に行いモチベーションをコントロールする。場合によっては外出禁止命令、休養指示と言った強権を発動する。
場合によっては意に沿わない選手を「飛ばす」こともあるし、一方で選手を庇う事も多い。
また、時にはメディアに対して矢面に立つこともあるし、対戦相手をわざわざ挑発することもある。またオリジナリティ溢れる練習方法で選手の育成を促し、試合中もアドバイスや選手交代などの手段で勝利の可能性を最大限高める。これらの振る舞いには、プロ監督としてのこだわりや価値観が垣間見え、プロマネに必要な要素やコンピテンシーの良い実例ではないかと感じる。

 一方で監督の力だけでチームは勝つのでは無い。組織的バックアップもPJ成功に不可欠だ。前述の通り、ベニテス監督は「選手の補強」も行った。これを実現するにはスカウトが適切な人材を発掘してくることが必要だ。会社でも全く同じで、より適切な調達先を選定できるよう仕掛けを構築するなどの支援が必要である。場合によっては専門のスタッフが選定し調達すべきであろう。また選手がケガをしたりしないような設備投資(マッサージルームやジャグジーの設置などハード面、家族への支援などソフト面)も積極的に行っている。会社もプロマネやメンバに対し、ハード・ソフトの様々な面で支援することが求められる。もちろん練習設備にも多くの投資が必要で、リバプールの場合、選手は24時間いつでもトレーニング施設を利用することが可能だ。翻って会社組織に「プロジェクト」を練習できる環境はどれほどあるのだろうか?あえて言えば研修受講が練習の場かもしれないが・・・。

話は変わって、もちろん個々の選手にも求められるものは多い。サッカー選手に求められる代表的なスキルは技術力、体力(肉体・精神)、向上心、忍耐力と言った所。ITの人材も全く同様だと思う。基本的な技術を持ち、健康的に働き、何事にも前向きで常に新しい技術や知識を吸収しつづける。そして、苦しい状況であっても最後まであきらめずに頑張ることができる。これがPJメンバには求められる。

ここまで監督・フロント・選手を、それぞれPM・会社組織・メンバに置き換えてPJ成功への道を考察してみた。読者の皆さんはどのように感じられたでしょうか?
私は、やはり「PJはPMだけの力でどうにかなるわけではない」「だけどPMはPMとしての努力が必要」と改めて痛感している。そんなPM育成にITSIGの活動を通して、少しでも貢献して行きたい今日この頃です。

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