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私の経験してきた「仕事」について、「 ホテル 」と「 F1と興業 」の世界

PMAJ 恵比寿 敏郎 [プロフィール] :12月号

 PMAJ職員の恵比寿です。会員活動の“IT-SIG”と“例会”事務局を担当し、さらに普及研修部門でP2M講習会の企画・運営をしております。
 IT-SIGとまったく関係のない話になりますが、家電メーカーでビジネス分野の営業を34数年経験しました。仕事内容は、“家電”のイメージとはおよそかけ離れたものになります。信じられないかもしれませんが、取扱商品はテレビやビデオといったご存知の商品だけではなく、全グループ企業を含めた全商品がアイテム(エレベータ&エスカレータ、電気設備機器、空調設備機器、通信・ネットワーク制御機器、照明設備、厨房設備等)であり、システムとして納入するケースがほとんどで他社商品や施工が必ず伴います。

■ 「ホテル」への納入設備
 私の担当分野は、ホテル、レジャー施設であり、都内のシテイーホテルを初め大手ホテルチェーンが得意先になります。何を納めるかと言いますと、客室のテレビや冷蔵庫はもちろんですが、客室での自主番組の視聴のためのセットトップBOXとその送出機器(屋上設置のアンテナや館内TV共調設備)、ナイトコントロールパネル(照明設備の調光や時計、ラジオ放送等をベッドサイドのテーブルに収めたもの)、客室内にあるスタンド照明器具があります。スタンド照明といっても、客室内には複数台設置され、デザインはホテルごとに全く違います。いわゆる特注品になります。一方、ホテルには宴会場といわれる多目的な空間もあります。このスペースに、婚礼やパーティ・会議場としての運用に耐えうる設備を納入します。具体的には、宴会場の天井を見て頂きますと、シャンデリアといわれる照明設備とたくさんの演出照明器具(スポット照明)、そしてやたら吊り物装置といわれる長短の“棒”そして天井面だけではなく壁面までに大きなスピーカやカメラ設備・ワイヤレスのアンテナが設置されます。もちろん、これらの機器を作動させるミキサーや音響設備、調光設備、吊り物の制御装置が宴会場内外のしかるべき場所に設置されます。これら全てが扱い商品になります。大きな宴会場は目的に応じて分割して使用されるケースもありそれぞれの会場内で操作される“操作卓”もデザインも特注・入出力切り替えもPC制御となり多彩なものとなります。もちろん、施工工事含みです。天井・壁・床への配管・配線・電源の設計は必ず必要になります。これらは、すべて営業が取り仕切ります。当然、ユーザーであるホテル側との折衝は営業がすべておこないます。私の勤めていました会社では、事実上営業がPMになります。商品情報はもちろんですが、宴会場の運営に通じ、演出に対するポリーシーやデザインにまで気を配り、さらに電気工事や建設工事の知識が必要とされます。当然のことながら、必要とされる施工管理技士の資格は営業であろうと必ず保有いたします。余談ですが、婚礼の披露宴会場の“ヒナ段”といわれる新郎・新婦が並ぶ所に必要な明かりについてご存知でしょうか。通常、最低でも6台のスポットと照明が必要とされます。新郎・新婦・媒酌人2名・盛り花・ケーキを照らす照明が必要です。これらを前方天井部から当てるわけですが、天井の高さや設置場所が会場によってまちまちですので、照明が人の目を刺さないようにする配慮等、設計時に考慮します。一度宴会場に行かれた際に、じっくり天井を眺めてみてください。

■ 「F1と興業」の世界について
 さて、本題の「F1」ですが、鈴鹿サーキット(ホンダ)のみで開催されていたF1の日本グランプリを富士スピードウェイ(トヨタ)で開催する、このプロジェクトに“レース管制設備工事”業者として参画いたしました。担当しました設備内容は、ネットワーク・音響・映像・信号機・LED文字表示・コース監視・通信・制御・電気工事です。私はPMとしてこのプロジェクトに対し、約6年費やしました。プレゼンの前に、既存設備の調査、F1のレギュレーションの調査、海外の既存コース設備の検証等を経て、RFPの原稿作製に関わり、見積り・プレゼン・契約行為を経てスタートさせました。なお、ご存知の方も多いと思いますが、F1はヨーロッパのレース文化であり、一方インディは米国のレース文化になります。F1のコースはカーブや坂道がありますが、インディのコースは平たんな(バンクはありますが)オーバルコース(楕円形)になります。何れも一周4〜5Kmになります。レースはスタート信号で開始され、所定の周回を重ね、トップで駆け抜けた車両が一位になります。途中にはアクシデントが必ずといっていいぐらい発生します。アクシデントに向けて多くの“レギュレーション”が組まれています。コース上を走行する車全てをカメラで監視・録画し違反を防ぎます。そのためアクシデントを知らせる表示設備、コース外付近に設置される30数か所への情報配信(音声・FAX・NET情報)が必要とされます。また、レース再開のための連絡網と指示設備も我々の施工設備範囲になります。(報道関係者向けの500ブースのネットワークや映像設備も含まれます)
こんな設備がサーキット場にはあますところなく設置されています。しかし、F1レース開催にあたっては、これら必要な設備で、設備工事に1週間以上かかるもの以外は全て主催者であるFIA(世界自動車連盟)が海外から搬送いたします。所謂、常設設備は使わず、自分たちの設備で運用します。正に“興業”なのです。機材はジャンボ機3から4機で輸送し、設営はすべて“外人さん”。当日の運営はもちろんチケットのモギリに至るまで外人なのです。VIP対応のレストランでの観戦では、調理のコックや食材までも海外からの輸送という徹底ぶりです。サーキット場は単なる“場所貸し”になるのです。おいしいところは、すべてFIAなのです。この実質2日間の興業で何百億のお金が動きます。
最も、F1参戦のチームは開発費用が年間費用が500億とも言われていますが。
 でも、F1の魅力はそれらの諸々を超える素晴らしいものがあると思えます。あの一万回転を優に超えるエンジン音とスピード感は他のレースでは味わえません。ピットといわれるガレージでは、車から発信される各種の状況データを10数台のモニタで常時把握し、ドライバーへ指示を出しています。燃料やタイヤの交換は1/1000秒を争う戦場となります。レースは車やドライバーだけではなくチーム力が勝敗を握ります。アジアでは、セパン(マレーシア)、中国、日本、韓国が会場となりますが、ヨーロッパの興奮を“アジアの物”としても定着してきています。偉大なる“興業”の世界なのです。
めずらしい経験かと思い紹介致しました。また、IT-SIGとは関係のない勝手な記述になってしまいましたことを、お許し願います。
以上


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