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「IT分野でのP2M活用研究」
〜ITベンチマーキンクSIG〜

ゆうちょ銀行 近藤 洋司 [プロフィール]  :9月号

1. はじめに

 「IT分野でのP2M活用研究」WG主査の近藤です。昨年12月、本WG開始直後にオンラインジャーナルに紹介記事を書きました。その時は富士通に在籍していましたが、訳有って、現在はゆうちょ銀行に籍を置いています。しかしながら、始めてしまったものは最後までと思い、周りの方とも相談の上、続けさせて頂いております。引き続き宜しくお願いします。一方、本研究の実践が行える立場ともなり、研究成果の精度が上がるかなとも思っています。さて、本研究の中間報告をPMシンポジウム2010で発表致します。WGの主旨等は昨年12月号を見て頂くこととして、以下に、その中間報告のポイントを書こうと思います。

2.ベンダーからユーザーへ

 IT化の取扱い対象が変化しています。基幹系のIT化はほぼ終わり、判断系、経営系のIT化が増加しています。一方、基幹系もリプレースする度に現行機能踏襲と言う足枷が付いた上に、低コスト化、短納期化が求められています。このように、IT化は一昔前より、確実に難しくなっています。その為か、失敗プロジェクトも増えつつあり、多くのSIベンダーも撤退傾向です。
 このような中、IT技術者に求める人材ニーズも変化しています。開発そのものより、開発前後の企画、運用フェーズに強い人材が求められるようになりました。ベンダーもコンサル部門や、運用部門を強化する動きが目立ちます。ユーザーも、IT戦略部門を強化し始めています。

2. P2Mの特長とP2Mで出来ること

 さて、前述のベンダーからユーザーへの議論より、これからはPM(プロジェクトマネジメント)ではなく、P2M(プロジェクト&プログラムマネジメント)と結論付ける前に、P2Mの特長を整理しておきたいと思います。P2Mには大きく2つの特長があります。ひとつは超上流、超下流も含めた一気通貫型の手法であること。これは、ベンダーサイドの開発だけを捉えたものでなく、ユーザーサイドをも含めた全体的な価値創造を目的とした手法であること。もうひとつは曖昧さを含んだ手法で、私たち日本人に馴染み易いこと。トップダウンでもボトムアップでもない、常日頃、我々がよくやっているミドルを中心とした、言わばミドルアップダウン型の手法です。また、集団主義、職務権限を越えることも曖昧さの範疇です。
 これら特長を持つP2Mを使うことで、難しくなるIT化を確実に実現し、それも、動けば良いでは無く、IT化の目的を確実に達成させ得るものと考えています。

3. P2Mは何故もっと普及しないのか

 この優れた手法が、何故もっと普及しないのかが気になるところです。研究メンバーでブレストしてみました。その結果、理由を以下3点に集約しました。
P2MのガイドブックがIT業界人から見ると難解表現である。
考え方中心であるため、標準プロセス化されていない。もっとも、標準プロセス化し過ぎるとP2Mの良さである曖昧さを失うことになりかねないが・・。
普及のためのプロモーションがPMBOKなどと比較して弱い。

4. 今後の対応

 IT業界人がこの優れたP2Mを使えるようにするため、以下のようなことを考えています。本中間報告以降に研究メンバーで整備する所存です。
P2MガイドブックがIT業界の人間に難解に感じるのであれば理解を助けるための事例を用意しようと考えています。
成功プログラムの代表パターンを標準化しようと考えています。P2Mの良さである曖昧さを失わないレベルで、かつ、初級者でも分かりやすいレベルでの標準化を考えています。

5.最後に

 日本の強い製造業のノウハウから産まれたP2MをIT分野でも活用したいと思っています。また、IT業界の進化がそのような要請をしているのだと感じます。


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