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「IT分野でのP2M活用研究」
〜ITベンチマーキンクSIG〜

富士通株式会社 近藤 洋司 [プロフィール]  :12月号

1.はじめに

 「IT分野でのP2M活用研究」WGの主査をしている富士通の近藤です。私は金融機関向け大規模システムを中心にシステムエンジニアを長いことやっています。2年程前に、「IT・プロジェクトマネージャーの成功条件」WGにメンバーとして参加したのがPMAJとの最初のお付き合いでした。そして、今回は主査として本WGを推進することとなりました。WGがスタートし、早3ケ月が経ちましたので、ご紹介をさせて頂こうと思っています。

2.WG立上げの背景と狙い

 そもそもWGのタイトルを見て、「IT分野での」と修飾したのは、どう言う特別な意味があるのだろうと疑問を持たれた方が多いのではないでしょうか。PMの最大人口は今やIT業界であるにも関わらず、IT業界でのP2Mの知名度、普及度は不十分です。その理由が何故なのかを探り、対策を講じたいと言う背景があるためです。これは、PMAJ事務局からの問題提起でした。
 一方、私個人の興味は別のところにありました。プロマネの将来像のヒントがP2Mにあるような気がしたからです。富士通にはSDEMと言う開発標準があります。また、IT業界全体では富士通と同様に各社独自手法の他、PMBOKが比較的広く普及、定着しています。しかしながら、時代の経過と共にプロジェクトが複雑・高度化しており、今までの開発標準を超えるレベルが必要と感じていたからです。プロジェクトは益々、高品質、低価格、短納期を求められるようになり、また、それらを実現するためには、従来のレガシー素材だけでは無く、広い範囲のオープン素材の活用が求められます。一方、要求仕様は従来の基幹業務中心では無く、経営判断業務などにも及び、実現方法、効果測定が非常に難しい領域を扱うようにもなって来ました。これら傾向は益々加速しており、このままだとリスクの大きな仕事はベンダーが引き受けられなくなります。また、引き受けたとしても高額費用を請求することになりそうです。要件定義はユーザ、開発はベンダーと言う単純な構図も場合によっては見直す必要があるのではと感じています。
 P2M標準ガイドブックより、P2Mの特長を私なりに要約すると、『現代社会の複雑な課題を、探究心・チームワーク・組織愛着の特性を持つミドルマネージメントを中核として、プログラム統合の概念を導入することで、解決に導く高度なマナージメント手法』となる。エンジニアリング業界が起点となって開発したP2Mのこの特長が日本製造業の強さの源泉だとしたら、どちらかと言うと欧米追従型の日本のIT業界にとって、次世代を考える上で、大いに参考になるのではと考えています。

3.WGの進め方と進捗

 WGは7名の設立メンバー、2名のオブザーバーでスタートしました。3ステップに分けて進めて行きます。丁度、1ステップが終了したところで、これから2ステップに入る所です。
WGの進め方と進捗

【1ステップ】 課題認識のための事例勉強会実施
・IT業界での活用事例を持ち寄り、課題とその原因を抽出する
・抽出した原因の構造化を行い、根本原因を特定する
・3根本原因に分類済み(内容は他の機会に発表予定)
【2ステップ】 IT用P2Mプロセス定義ガイド作成
・1ステップで特定した根本原因への対策案を検討する
・対策案を具体的に実行する
・当初計画ではIT業界でP2Mを活用するための、標準プロセスの設定、および、プロセス毎の
 活用のためのテンプレートのようなものの作成をイメージしています
【3ステップ】 P2M活用事例のまとめ
・2ステップでの成果物を実プロジェクトに適用し、その効果をみる
・1ステップで評価した事例を、2ステップでの成果物を適用することで、どう変わるかを
 推定(シミュレーション)する

4.最後に

 日本の強い製造業のノウハウをIT分野でも活用したいと強く思っています。また、IT業界の進化がそのような要請をしているのだと感じます。書き漏らしましたが、このオンラインジャーナルへの投稿は2度目で、1度目は2007年9月号です。本WGの動機の一部が書かれています。興味持たれた方は是非一読頂きたいと思います。また、本WG主旨に賛同頂ける方は是非、ご参加頂きたく、ご連絡をお待ちしております。

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