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「プロジェクトマネジメントはプロジェクトマネージャが行なうものではありません」

IT-SIGリスクマネジメントWG/(株)インテック 吉岡 靖晃 [プロフィール]  :11月号

 私は、現在、システムインテグレータで全社PMOを担当しています。長年開発現場でプロジェクトマネージャ(本稿ではこちらをPMと呼ぶ)やラインマネージャを経験したあと、10年前に技術スタッフ部門に異動になり、数年前から社内のプロジェクトマネジメントに関する諸施策の企画、導入、運営を担当しています。
 提案前レビューやプロジェクト計画レビュー、問題プロジェクトのISC(社内ステアリングコミティ)などに参画したり、成功プロジェクト、失敗プロジェクトの要因分析をする中で、最近感じていることを述べます。

 表題は、もちろん、正しくは「プロジェクトマネジメントはPMだけが行なうものではありません」です。
 プロジェクトマネジメントの重要性、必要性は言うまでもなくますます高くなってきています。一定規模以上(当社では受注額2億円以上相当)のプロジェクトで、成功したものと失敗したものの違いは、マネジメント面から見ると明確に次のことが言えます。(ここで言う成功とはQCDの目標が達成されたもの)

 「組織的にプロジェクトマネジメントが機能したかどうか」ということです。当たり前だ!とおっしゃると思いますが、失敗したプロジェクトの多くは、組織的なマネジメントが機能していません。

 PMの力量が重要であることは言うまでもありませんが、一定規模以上のプロジェクトになると、彼もしくは彼女一人の力で成功できるものではありません。「PMは孤独である」という言葉もよく聞きますが、孤独にさせてはならないのです。「PMとはそんなものだ、だから(ひとりで)頑張れ」と説くのはお門違いというものです。
 プロジェクトがうまくいっていない時、お客さまから疎まれ、メンバーから突き上げられ、挙句に本部長や部門長などの上位マネージャから叱られるのでは、PMはたまったものではありません。プロジェクトも破綻の道へ進みます。
 叱っているだけでは状況打開はできません。上位マネージャの中には「PMさん、良きに計らえ」などと言っているだけの人もいますが、うまくいかない原因は彼ではなくあなたにあるのですよ、と言いたいです。
 プロジェクトは、組織的対応が行なわれなければ、成功は覚束ないと考えます。組織的対応とは、組織全体の責任の中で、マネジメントレビュー(上位マネージャが参加する進捗会議や意思決定会議など)の実施や、要員調整などの問題解決を行なうことを言います。
 組織的対応の責任者は上位マネージャです。ステークホルダーである上位マネージャはそのプロジェクトの中で重要な役割があります。上位マネージャはPMのチェックをしているだけではなく、積極的にPMの支援・指導を行なうべきなのです。営業系、開発系にかかわらず、上位マネージャはお客さまの元へもっと足を運ぶべきなのです。
 逆説的に言うと、プロジェクトを成功に導く優秀なPMは、意識、無意識にかかわらず、このことをよく分かっていて、上位マネージャを巻き込んで、組織的対応がなされるよう動いていると言えます。
 ただし、若手にもPMを経験してもらわねばなりません。このような場合は、上位マネージャ自身やPMO、あるいはメンターなどから、相応の支援・指導がなければなりません。
 一方で、優秀なPMのプロジェクトであっても、放っておいてはなりません。マネジメントレビューなどでそのプロジェクトの状況を正確に把握し、問題やリスクがあれば(あるに決まっています!)、やはり組織的対応を行なうことで、成功に結びつけることが重要です。
 そういう意味では、PMの力量やプロジェクトの状況(お客さまの性質なども含む)によって、組織的対応の中身や濃淡は異なってきます。上位マネージャはそこをよく把握すべきであるし、PMOなどマネジメントレビューのレビュアは組織的対応の妥当性をチェックする必要があります。組織的対応がなされているかどうかの観点では、上位マネージャはレビュアではなく、レビュイ(reviewee:レビューされる側)と言えます。

 以上、当たり前のことを書きましたが、意外にこのことに気がついていない人も多いと思います。気がついていてやっていない人は上位マネージャの資格がありません。このことをベースに置いて、さまざまなプロジェクトマネジメントの施策の企画、運営を行ないたいと考える今日この頃です。
 なお、私はIT-SIGのリスクマネジメントWGに参加して、営業段階も含めた上流工程でのリスクマネジメントを勉強しています。このWGで、一昨年発行した「ITプロジェクト 実践リスクマネジメント・ガイドブック」の改訂を試みていますが、この中でも、組織的対応の重要さを盛り込めればよいなと考えています。
以上

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