P2M普及・推進部会コーナー
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P2Mを専門理論から「ひとりひとりの考える力」へ
~超やさしい「はじめてのP2M入門」~

PMAJ P2M普及・推進部会 藤澤 正則 : 11月号

超やさしい「はじめてのP2M入門」

1.はじめに

P2M普及・推進部会の活動は2年目に入りました。
昨年度は「P2M標準ガイドブック第4版」の改訂に関連する普及活動を行いました。今年度は、その活動に加え、P2Mを知らない人も含めたより多くの人にP2Mの考え方を理解してもらい“日常の仕事とつながる形で”理解してもらうために、「わかりやすく・使いやすいP2M資料」の作成に取り組んでいます。

2.背景と課題

 P2Mガイドブックは2001年に初版が発行され、専門家や実務者による研究・実践が続いてきました。
 一方で、一般企業への浸透はまだ十分とは言えません。その背景には、「既存の枠組みの中で育ち、変化に対応しにくい組織や人材の構造」があります。
  • 長年の仕組みや文化が通用しなくなる(制度疲労・知識の陳腐化・文化の硬直化)
  • 個人レベルでは、過去の成功体験に縛られ、変化への対応が遅れる
  • これからは、「枠組みを広げる人」を増やし、定常と非定常をつなぐ“橋渡し役”が重要となる
  • 既存の仕組みが通用しなくなったときは、限られた時間や資源の中で、次の仕組みを「プログラム」として再設計する力が求められる
 ここで参考になるのが、ダーウィンの『種の起原』(1859年)における進化の法則です。彼は、「環境に有利な特性を持つものが自然に選ばれて残る」と述べています。
 この考えを現代的・経営的に置き換えると、「変化に適応する者が生き残る」 ということです。すなわち、企業や人材にも「変化に適応できる柔軟性」が求められています。

3.専門家だけの活用ではなく、ひとりひとりが使えるP2Mへ

P2Mを一般の人に理解しやすく定義すると、次のように表現できます。一般企業では、定常業務があるからこそ非定常業務に挑戦でき、P2Mはその橋渡しを行う「思考の枠組み」です。

【構造イメージ】

『全体の枠組みを考える(スキームモデル)』
  +
『既存の定常業務(サービスモデル)⇒価値を提供する』
  ↓「変化のステップ=非定常業務)(システムモデル)⇒変える」
『新しい定常業務(サービスモデル)⇒新しい価値を提供する』

非定常業務は単独で存在するものではなく、既存の定常業務を新しい定常業務に進化させるための一時的なプロセスです。
P2Mは、その変化を計画的・組織的に成功させる共通の思考フレームです。


これまでの企業では、経営層や企画部門が事業モデルを考えてきましたが、今は現場のひとりひとりが「自分の仕事の中で価値をどう生み出すか」を考える時代です。
そのための「考える手法」のひとつがP2Mです。
P2Mは「何をやるか」ではなく、「なぜやるか」を考えるフレーム。
現場・管理職層が、自らの仕事の“価値”を再構築するための道具です。

4.非定常時代(不確実性が高い)に求められる人材像

非定常業務が当たり前の時代には、知識を持つ人よりも、考え方を持ち、行動で確かめられる人が求められます。
知識や情報はAIでも得られますが、「なぜ」「どうすれば価値が生まれるか」を考え、実践し、進化させることができるのは人にしかできません。
  • 変化を見抜き、価値を再設計できる人材が重要
  • 学びを体系ではなく、“実践的な思考構造”として身につける
  • P2Mは「価値を起点とした思考のフレームワーク」として、変化対応力を養う基盤になる

5.まとめ

  • P2Mは、専門家のためだけの理論やツールではありません。
    ひとりひとりがモデルチェンジをするための「考える力」を得るための共通言語です。
  • 非定常が当たり前の時代には、誰もが「変化を考え、形にする力」を持つことが求められます。P2Mは、その変化を計画的・組織的に成功へ導く考え方です。
  • 非定常業務は単独で存在するのではなく、定常を次の形に進化させるための一時的なプロセスであり、P2Mはその橋渡しを行う思考の枠組みです。
  • これからの普及活動では、「理論を学ぶ」から「共に考え、使う」への転換が鍵になります。それこそがP2Mが日本発の実践的マネジメント体系として定着していく第一歩です。
    P2M普及・推進部会では、こうした考え方を共有しながら、共に考える場づくりを進めていきます。
以上

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