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「エンタテイメント論」(210)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :11月号

エンタテイメント論


第 3 部 エンタテイメント論の応用

1 序
●第3部 エンタテイメントの応用を解説する狙い
 前号から開始された「第3部 エンタテイメント論の応用」を解説する狙いは、「エンタテイメント論」を我々が日々取り組む経営分野に於ける経営活動、職務活動、プロジェクト活動などに応用(活用、適用等)し、世の中に役立つ「優れた価値(機能性、新規性、永続性、低コスト性等)」を創造(創=発想、造=行動)する事にある。

 此の狙いは、本稿の読者の多くが「産の分野」の「企業人(社長、役員、社員)」であると予想している事が前提になっている。しかし筆者の様に「産官学」の3分野で実務経験を積んだ人物もいるだろう。その他に政治家、医者、社会福祉家などの人物もいるであろう。従って本論の応用を「経営」の分野に限定せず、「より広い分野」に於ける活動にも応用した解説を、折に触れて、実施したいと考えている。

 なお前号で約束した通り、固苦しい解説を避け、「エンタテイメント」らしく、可能な限り、楽しく、面白く解説する様に努める。また筆者は「本論を解説する立場」からだけでなく、筆者の現職である「経営コンサルタントの立場」からも解説し、一社でも多くの会社が自社の事業に成功し、発展する様に後押したいと願っている。

出典:後押し
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●人々に楽しさ、笑い、感激、感動などを与える「数多くの業界」
 さて本論では、過去に、人々に楽しさ、笑い、感激、感動などを与える「数多くの業界」の存在と「当該業界の様々な活動」に関して様々な議論を行った。
 此の「数多くの業界」とは何か? 学問的な厳密な定義は控え、エンタテイメント的に具体的に概説する。其れは①映画、音楽、ゲーム、イベント、出版などの事業で構成される「エンタメ業界」、②プロ野球、プロ・サッカー、プロ・ゴルフなどの事業で構成される「スポーツ業界」、③美味しい飲食の提供だけでなく、楽しい会話、時に感激や感動を得る場を提供する各種の「飲食業界(食に必要な生活物資を提供する事業も含む)」、④楽しさ、美しさ、時に感激や感動を与える各種の「物販業界(衣や住等に必要な生活物資を提供する事業も含む)」などを云う。

出典:エンタメ業界
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出典:エンタメ業界、スポーツ業界
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出典:飲食業界
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出典:飲食業界、物販業界
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 「数多くの業界」の代表例となるエンタメ業界、スポーツ業界、飲食業界、物販業界などを構成する各種の事業は、夫々が異なる独自の目的、機能、文化的特徴を持つ。しかし此の「数多くの業界」で共通して実在する「エンタテイメントの核」となる事は、「人々を楽しませる事」である。

●エンタテイメント論の「核」
 本論で「数多くの業界」の代表例としてエンタメ業界、スポーツ業界などを中心に当該業界が提供する「人々を楽しませる事」の実態を解説してきた。

 もしこれ等の業界の企業人(社長、役員、社員)が「核」としての「人々を楽しませる事」を「心得(心で悟る)」且つ「体得(体で悟る)」せず、当該事業を推進し、成功させた場合、当該企業にどの様な未来が待ち受けているだろうか?

 その答えは明確である。当該企業は、遅かれ早かれ、失敗する羽目になり、最悪の場合は、倒産し、当該業界から追い出される。此の厳然たる事実は、意外にもこれ等の業界の企業人が認識していない。残念、無念である。しかし残念、無念な事は、まだ他にもある。

 実は此の「数多くの業界」には、エンタテイメントと直接関係のない分野の下記の業界も含まれていると筆者は考えている。

 具体的に言えば、順不同であるが、其れは、機械業界、電機業界、機械電機等部品製作業界、造船業界、建築土木業界、自動車業界、製鐵業界などの「ハードウエア・メーカー業界」、コンピューター業界、システム開発業界、電子業界、通信業界、半導体業界、AI業界などの「ソフト・ウエア―・メーカー業界」などである(以下例示省略)。

 これ等の業界の企業人は、人々に「優れた価値」のあるハード・ウエア―やソフト・ウエア―を提供すれば十分であると認識している。残念、無念である。実は彼等も「人々を楽しませる事」を心得且つ体得し、日々の経営や職務に生かすべきなのである。何故なら、企業人は、業界の違いを超え、多くの人々と日々接触して生きているからである。今後の解説の過程で此の事を明らかにしたい。

●エンタメ業界、スポーツ業界などの「数多くの業界」を取り巻く最近の環境の激変(例示)
 最近の環境の激変の実例を、紙面の許す範囲で、以下に概説する。

その1 TVを見ない若者、元気な年寄も見ない。共にスマフォやPCでSNS(Youtube)を活用。
 日本の新聞社、TV局などのオールド・メデイアは、「最近の若者はTVを見ない」と報道する一方、「TVをよく見るのは、子供、その両親の他、祖父や祖母などの年寄」と報道している。しかし新聞社は傘下のTV局を擁護するための「ウソ」を言っている様だ。

出典:TVを見る家族一同
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 最近の子供や親は、TVだけでなく、スマフォやPCをよく見る一方、TVを選択的に見ている。また足腰が不自由な年寄、寝たきりの年寄などは別として、経営活動、職務活動、福祉活動、地元活動などに忙しく元気に行動する年寄は、TVを余り見ない。因みに筆者も年寄(85歳、現役の経営コンサル)だが、TVは予約登録した番組しか見ない。

 元気な年寄は、若者と同様、スマフォやPCのSNS(Youtube等)のNetflix、U-NEXTなどでヒットした映画、TVドラマ、ドキュメンタリー映画等を楽しんでいる。

 さて若者、親、元気な年寄は、何故TVを見なくなったのか? 答えは明確である。NHKを含む民間TV局が放映するコンテンツ内容が余りにも「お粗末」で、しかも人々を楽しませる「魅力が無い」からである。

 お粗末で魅力を無くした原因を例示する。①放映される「ニュース番組」や「報道番組」の内容の不完全性(中立性、真実性、解説性等に問題)、②放映される各種の「エンタテイメント番組」のレベルの低さ(感性に訴える面白さのみ追及。理性に訴えて納得させる面白さの欠如)、③焦点が定まらない、偏った報道、デレデレと2時間も3時間も続く「トーク番組」や「ワイドショー番組」、④TV番組に登場する出演者の学識、見識、実務経験等の乏しさ、出演する専門家と自称する学者や評論家のお粗末さ、⑤昔、ヒットした映画やTV番組の再放送ばかりが多い番組編成。⑥長時間のショップ・チャンネル(買い物紹介)の放映、⑦時代を先取りした感性的、理性的、人間的に面白いTVドラマの欠如(ドクターXは例外?)、⑧中国習近平政府に依るウイグル人への基本的人権侵害(強制避妊手術、100万人単位の強制収容所への収容と強制労働など)の真実をTV報道されない事など「目を覆う」ばかりである。

 一方SM(ソーシアル・メディア)の一部であるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のYoutubeなどでは「玉石混合」の状態。ダメ内容やクソ内容が多い。しかし注意深く検索すると「キラリと光る凄い人物」の存在を知る一方、「凄い内容のコンテンツ」に巡り会える。

 しかしNHKを含む民放TV局や親会社の新聞社などのオールド・メディアが放映、報道する内容では凄い人物の登場や凄いコンテンツとの巡り会いは期待できない。筆者の以上の指摘内容に本稿の多くの読者は既に気付いているだろう。

 筆者が特に懸念している事がある。それは①日本のオールド・メディアに於いて「真実を追求する本物のジャーナリスト」が極めて少ない事、一方②同メディアに於いて「本物のジャーナリストではない左翼や親中派などのアクティビスト(活動家)」が極めて多い事である。これでは世の中に真実が伝わらない。

 今回の自民党総裁選挙に至る過程とその後の過程で、オールド・メディアのジャーナリストと自称するアクティビスト達が世論を如何に誘導したかを知って愕然となった。オールド・メディアの左翼化の度合いは最近、益々増してきた。「今のまま」では日本の将来が危うくなる。

その2 サブスクリプション型・動画配信サービスの普及と拡大
 Netflix、U-NEXT、Disney+等に一定の料金を予め支払う「サブスクリプション型・動画配信サービス」は、以前から存在したが、最近、益々、その活動領域を拡大させ、存在感を高めている。

 視聴者は好きなだけ、好きな時に、最新の映画、アニメ、コンサート映像などの他に、大ヒットした映画、アニメ、TVドラマ、コンサート映像、ドキュメンタリ映画などを視聴できる。その結果、映画館に行かずとも、自宅のPCのYoutube、Youtube対応型TVなどで手軽に見て、エンターテイメントを楽しめる。

出典:U-NEXT
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出典:NetFlix
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 と同時に日本を含め全世界の映像&音楽等のクリエーター達は、「新しいコンセプト」の映画、アニメ、TV番組、音楽などの創作に挑戦し、新たな視聴者の開拓に日々努力している。新しいコンセプトは、「優れた発想」が出来るか否か?に掛かっている。まさに「知恵の勝負」である。日本のクリエーターの活躍が益々期待される。

その3 サブスクリプション型・音楽配信サービスの普及と発展
 SpotifyやApple Musicなど音楽の聴き方を変えるプラットフォームは、本号で解説する必要はないほど主流となった。月額料金を支払う事で好きなだけ楽曲を何処でも、気軽に楽しめるサブスクリプション型モデルの普及は音楽産業界を一変させた。

 しかし面白い現象が起こっている。それは日本だけでなく、海外でも「音楽配信」ではなく、「音楽レコード」をわざわざ購入し、それを再生して聞くマニアが急増してきた事である。彼等は「或る音」を聞きたい為である。

出典:レコード・
プレーヤー
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出典:レコード・プレーヤー、レコードの再生
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 音楽演奏のレコード制作過程で演奏された音声、器楽音、その他の周辺の音の一部は、デジタル・レコード化の過程でカットされる。「或る音」とは、カットされた音の事である。当該マニアは、全ての音が記録されたアナログ・レコードを聴き、演奏された現場を想像し、臨場感、現場感、存在感を味わう。此の事例は、デジタル情報だけでなく、アナログ情報も極めて重要である事を再認識できる典型例である。

 因みに現在、日本ではDX(Digital Transformation)がブーム期を過ぎ、定着期になっている。しかしDXは本当に成功しているのか? 多くの日本人は、DXの本質を心得&体得せず、デジタル化ばかり追求している。此の事が成功しない原因になっている。アナログ情報も重視し、追及するべきである。筆者はAX(Analog Transformation)を提唱している。機会があれば、本稿でDXとAXを解説したい。

その4 VRとARの普及と活用
 VR(Virtual Reality仮想現実)とAR(Augmented Reality拡張現実)の技術は、エンタメ業界に革命をもたらした。周知の通りである。VRを使ったゲーム体験やARを活用したインタラクティブなライブ・パフォーマンスは人気を集め、これらの技術は、日々進化を遂げている。今後、新しい楽しみ方が次々生み出され、エンタメ業界全体を更に発展させると期待されている。

出典:VRとAR
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その5 メタバースの普及と発展
 メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間。「超越」を意味する「メタ」と「世界」を意味する「ユニバース」の組み合わせた造語。1992年、米国で出版されたSF小説「スノウ・クラッシュ」で初めて使われた言葉。メタバースは「仮想空間」を指す一方、VRやARは仮想空間にリアリティや没入感を与える為ための手段となる技術やデバイスを指す。

出典:メタバースを散策する人物
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出典:メタバースで会議する人物
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 メタバースには実在する建物、道路などに酷似した建物、道路などが出現する。此の仮想空間に自分の分身の「アバター」を駆使して入り込み、好きな衣装(服、靴、帽子等)で自由に活動する。他のアバターと交流してゲームを楽しむ。現在は、遊びだけでなく、同空間で経営活動、職務活動、プロジェクト活動などが可能になった。

 最近の新聞報道では、高校生の就職活動にメタバースが使われ出した。高校生は大学生より就職情報が限られ、情報集めが大変。其れを解消する為、メタバースが活用された。今後、メタバースはあらゆる分野に浸透し、更なる発展を遂げるであろう。

その6 Eスポーツの普及とその後の発展
 Eスポーツとは、Electronic Sportsの略称。電子機器を駆使し、コンピューター・競技ソフトで個人又はチームで対戦する競技を云う。なお「eスポーツ」と小文字表示される場合が多い。しかし文章の最初では「Eスポーツ」と大文字が使われる。けれども完全には統一されてはいない。

 さてこの歴史を超概説すると、その起源は1980年代にコンピューター競技ゲームが発売された時からだ。「Eスポーツ」の言葉は2000年代に入って使われ出した。欧米では1990年代からプロ・ゲーマーが登場。日本では2018年「一般社団法人・日本Eスポーツ連合」が設立され、多くの人にeスポーツが知られる様になった。2000年代になり、eスポーツの言語が普及し、eスポーツ大会が開催される様になった。その後、劇的に普及。現在は世界的レベルでeスポーツ大会が開催され、プロ競技者が参加。超高額な優勝賞金が優勝者に付与される。今後、eスポーツは益々発展するだろう。

出典:Eスポーツの対戦
出展:Eスポーツの対戦(左)
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出展:Eスポーツのプロ対戦
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出典:Eスポーツのプロ対戦

 なお通常の電子ゲームとeスポーツとの違いは、前者では、個人が娯楽としてプレイし、ストーリーを楽しみ、スコアも競うなど自由にプレイできる。一方後者では、個人やチームが対戦し、勝利を目指して競技する。大会勝者には賞品や賞金が付与される。

 更にeスポーツの競技試合は、特定の会場で開催され、会場には観戦者が観戦するだけでなく、その状況が配信され、世界各国で多くの観戦者が当該競技を観戦して楽しむ。また背後で賭けも行われている様である。此の競技にはプロ・ゲーマーの存在は欠かせない。
つづく

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