今月のひとこと
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 飲酒党異聞 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :8月号

 夏は何といっても花火です。例年7月に開催していた足立区の花火大会は、猛暑を避けるために5月にしたのですが、あいにくの雨と風で中止になってしまいました。前途多難と思われましたが、7月の後半には、全国各地で盛大に花火大会が開かれていました。暑い中、いずこの会場も大勢の人でごった返しの状況で、熱中症だとかで緊急搬送された人も多かったのではないでしょうか。危ないと分かっていても、腹に響く花火の音は、近くまで行かなければ体験できません。
 夏はまた、ヒヤッとした感覚を楽しむために、ホラーにも引き寄せられる人が多いですね。この欄でホラーは難しいので、ホラ話をお届けします。

 働き方改革、人生100年時代を背景にサラリーマンも副業をしましょうといわれています。率先垂範ということで、政治家の先生方にも副業が解禁されました。といっても、民間企業に就職すると利益誘導とかになるので、所属政党とは別の政党に所属することができるようになりました。
 なんたってVUCAの時代ですから、政党が掲げる公約も多岐に亘ります。自分が所属する政党の公約の中で、気に染まないものがあった場合に自分と同じ見解の政党にその公約に限って所属することができるという制度です。「限定的複数政党所属制度」という長ったらしい名前がつけられ、これも長い名前の「選択的夫婦別姓制度」の検討が進まないことにイラついた議員が冗談として法案提出、ドサクサ紛れに成立してしまったという制度です。これにより、選択的夫婦別姓制度の議論が、政党を離れて進むかと思われましたが、政党の中の人間関係を整理できないのが政治家という人種だそうで、ギクシャクしていて余り進んでいないようです。
 それが、ここにきて新たなテーマが出てきたのです。それは、米価高騰に伴う日本酒への影響対策です。先日、参院選が行われたのですが、どの候補者も政見の中に織り込みませんでした。織り込んでも票に繋がらないということでしょうね。そんなテーマだから、副業として取り組むにはちょうどいいという微妙なテーマです。
 関西と関東の酒蔵から、有名な名人杜氏を名目党首として日本飲酒党を立ち上げ、その他の党員は全員副業で参加しました。自由飲酒党、立憲飲酒党、国民飲酒党、協賛党などから日本酒を愛する議員が続々と参加してきました。「機を見るに敏」というのは、政治家の素養ですから、お酒を飲めなくても日本文化振興のためとかいって参加する議員も多数いました。
 日本飲酒党では、日本酒に関わる米価高騰対策委員会を立ち上げ、法案を提出することになりました。緊急課題ですので、夏休みを返上して集中討議することも全会一致で決まり、秋には法案が出てくると見込まれています。現在、伝わってくる情報では以下のようなことについて、議論されているようです。
  1. 〇 酒造好適米を確保するための対策
    食用米の価格高騰により、酒造好適米の製造を食用米に切り替える農業者が増えている。酒造好適米を一定量以上確保するため、農業者に対して何らかのインシデントが必要である。
  2. 〇 酒造好適米の価格を高騰させない対策
    量を確保しても、価格が高ければ買える人は少なくなる。市場への介入、あるいは補助金等の対策を検討する。
  3. 〇 文化遺産としての日本酒
    そもそも、現在の日本酒の定義は適切なのか。純米酒だとか吟醸酒だとか分類しているが、文化遺産として保護する方向付けと合っているのか不明瞭である。分類基準は不合理だと独自の手順で酒造りをしている老舗酒蔵があるなど、全体を見直す時ではないかとの密かな声もある。一方で、参入障壁が高く、業界発展に繋がる対策が打たれていない。
  4. 〇 国税庁が所管官庁
    以上のようなことを検討実施する所管官庁が国税庁でいいのか。例えば、酒米の作付けについて指導できるのか疑問。
    また、日本が戦争をしていた時代に戦費確保を目的に酒税を生み出す酒造りも国税庁が所管していたが、既に戦後80年、未処理の終戦処理の一つとして見直しを行う。
以上

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