『第301回例会』報告
木村 勝 : 5月号
【データ】
開催日: |
2025年3月22日(金) |
テーマ: |
「 白井市における官民連携の取組と事例について 」 |
講師: |
多納 聖( たのう さとし )氏
白井市役所 企画財政部 企画政策課 主査補 |
◆ はじめに
私自身、何度か転居する機会がありましたが、その際に転居先を決めるポイントの一つに行政サービスがありました。最近は、行政サービスも、住民獲得や、街の発展のために、いろいろと工夫し、志向を凝らしているものが多くなってきていると感じています。
とは言え、行政だけで出来ることは限界がありますので、住民や、企業と協力していくことが、街の発展には必要不可欠だと考えます。
そこで、今回の例会では、白井市役所の企画財政部、企画政策課の多納聖氏を講師にお招きし、「白井市における官民連携の取組と事例について」と題し、体験談や事例などを交えながらご説明いただきました。
以下、要点を抜粋して紹介します。
◆ 講演内容
1. 白井市の紹介
概要
- 白井市は、千葉県北西部、千葉ニュータウンの都心よりに位置し、船橋・柏・鎌ヶ谷・印西などに隣接
※下総台地(北総台地とも呼ばれる)の上に立地
→地盤が固く、地震に強いといわれる
- 東京(日本橋)から成田空港まで30キロ圏内
- 面積は、35.48キロ平方メートル
- 人口は、62,218人(令和6年12月末時点)
道路・鉄道
- 道路は、東西に国道464号線(北千葉道路)、南北に国道16号線
⇒将来的には北千葉道路が外環道と繋がることで、より都心からのアクセス性が向上
- 鉄道は、都心や羽田・成田両空港へのアクセス性の良い北総鉄道が市内を横断
⇒2022年10月に運賃値下げが実施され、話題に
⇒移住・定住の契機に
産業
- 農業は、市の基幹産業のひとつであり、中でも梨は明治30年代から栽培されており、都道府県中1位の生産量を誇る千葉県の市町村の中で1位の生産量を誇る全国でも有数の産地
梨以外にも、ねぎや自然薯などの栽培が盛ん
- 工業は、市の北部に立地する県内最大級の内陸工業団地である「白井工業団地」があり、約100ヘクタールの地域に300社以上の事業者が操業している
- 都心、成田・羽田両空港への良好なアクセスや強固な下総台地の特性による防災面の優位性などを生かした企業誘致
⇒ex. データセンター、物流施設ほか
生活環境
- 千葉ニュータウンとして発展
⇒大規模な公園、広い道路幅員、緑道による車道を介さない移動など
⇒市街地を一歩離れると里山や田畑、手賀沼等の水辺などの豊な自然環境
⇒子育てにもとてもおすすめの良好な住環境が整ったまち
2. 白井市における官民連携に関する考え方と期待する効果
社会的背景と白井における現状・課題、期待する効果
- 全国的な少子高齢化・人口減少
⇒税収の減少や歳出の増加
⇒地域活動の担い手不足などの様々な問題
⇒従来通りの行政のままでは、今後、市民サービスを行っていくことが難しい
- 現状は、全国的に見ても県内に見ても若年人口比率が高く、比較的人口構成の若い市
千葉ニュータウンの街開きから約45年が経過し…
- 当初に入居した世代の高齢化やその子ども世代の就職等に伴う転出の増加などによる市全体の急速な高齢化
- 全国と同様の課題を抱えている
⇒少子高齢化・人口減少時代に対応した行政運営の在り方を模索していくことが急務
- SDGsやESG、CSRといった言葉に代表されるように、持続可能な社会の構築のため、環境配慮や社会・地域貢献等の公益性を意識した経営が融資を得ることや投資を呼び込むためにも企業に求められるなど経営環境にも大きな変化
これらの社会情勢の変化に対応しながら行政の限られた資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的かつ有効的に活用し、市民サービスを維持・向上していくため、官民連携の取組により民間事業者のノウハウを活かした行政運営の必要性が高まっている
このような背景を踏まえ、本市では「白井市第5次総合計画」の中で「情報共有」、「持続可能な行財政運営」、「参加・協働」を基本的なまちづくりの進め方として挙げており、これは、現在策定を進めている「白井市第6次総合計画」の中でも、引き続きまちづくりの進め方に位置付けしている
- 令和4年9月に「事業連携及び連携協定(個別・包括)に係る白井市の官民連携に関する基本方針」を策定
対外的に官民連携に関する市の姿勢を明確にし、官民連携における窓口やスキームを明らかにすることで、官民連携の取組を発展・深化
令和7年3月28日現在は、包括連携協定を14の事業者との間で締結し、個別連携協定を防災や福祉などの様々な分野で多数の事業者の方々と締結
白井市では包括連携協定に基づき、事業者と実施した取組について、市ホームページで公開し、周知を図っている
3. 官民連携の取組事例
人材育成
- 職員向けの人材育成プログラムの提供
- 職員向けSDGsセミナー
- 女性のヘルスケア講習会
防災分野
- 学校や公共施設などへの防災対応自販機の設置
- AR技術を活用した防災教室
- 災害対応自販機の売上を活用した防犯カメラの設置
産業振興分野
- 水田におけるスマート農業の実証実験
- 電圧冷蔵庫を活用した梨保存の実証実験
健康・福祉分野
- 健康会議の開催
- 骨密度測定、脳年齢測定など各種測定会実施
- 移動販売の実施
- しろいフレイル予防プロジェクトの実施
環境分野
教育分野
- 小学校区まちづくり協議会と連携した大山口中学校でのデジタル体験会
- 市内データセンターの見学
- 熱中症標語コンテスト
その他
官民連携の取組を推進することによる波及効果
- 官民連携での繋がりを契機に新たな取組が民間発で行われる
⇒民間に担っていただける範囲が増えることで、行政しかできない分野(採算性が乏しいなど)に注力することができる
- 地域における関係人口が増える(交流が増える)
⇒今まで地域や行政になかったアイデアが、事業者と関わったことで気づきに変わり、出てくるようになる
- 官民連携の取組みをご縁とした企業版ふるさと納税制度の活用などによる支援
⇒寄附をいただいた事業者の方々に、市の官民連携の取組を案内することで、新たな官民連携の取組につなげる等も行っている
来年度は、「結婚子育て応援事業」、「子どもの居場所づくり事業」、「災害医療体制整備事業」など、新規で実施する事業についても、民間事業者の力を借りて、市民サービスを向上できればと考えています。
官民連携の取組継続に向けた課題
今後も官民連携を推進し、取組を維持・継続・発展させていくためには、お互いがメリットを感じ、享受できるWin-Winの関係性の構築が不可欠。
⇒しかし、官民連携の担当者として、行政側、事業者側、それぞれに様々な課題があると感じています。
これからの官民連携の取組の推進に向けて
行政・事業者それぞれが、お互いのメリット(行政:地域活動における担い手不足の解消や新たな市民サービスの提供など 事業者・企業の知名度やブランドイメージの向上、ソリューションのトライアルや人材育成の場の確保など)を認識しながら提案、取組を推進していくことが大切。
今後もそのような観点を大切にしながら、事業者の皆様とともに、よりよいまちづくりを進めていきたい。
◆ 講演を聞き終えて
今回の講演では、講師の多納聖氏の体験談、実践事例をもとにした貴重なヒントをいただけました。
何気なく利用している行政サービスの裏には、多く苦労が伴ったものだったと知りました。また、私自身も、街の発展のために出来ることはないかと考えたいと感じました。
例会を通じて、貴重なお話しをしていただけたことに、心より感謝を申し上げます。
当日参加された皆さま、何かヒントになることはありましたか。
例会では、今後もプログラムマネジャーや、プロジェクトマネージャーにとって有益な情報を提供してまいります。
引き続きご期待ください。
尚、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集していますので、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
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