理事長コーナー
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第5次産業革命は生成AI革命?

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :4月号

 PMシンポジウム2022で、私が「第5次産業革命前夜」という講演をしたことを覚えている方もいらっしゃると思います。
 当時はまだ、COVID-19の感染も治まらない中、「パンデミックはそのとき起こりつつある変化を劇的に加速する」という経験則から、世界が大きく変わるだろうという予感と、産業に大きな変革が起こるのではないかという想定でタイトルを決め、現在の産業革命史観ではない、「人間中心」、「持続可能性」、「レジリエンス」という 形で革命がおこることを期待した内容だったと思います。
 残念ながら、その後の世の中は、そのような方向には動いていないようですが、技術革新という観点では、革命のコア技術となりそうな候補者が見えてきたようです。
 改めて、産業革命の歴史を紐解いてみると、第1次産業革命が18世紀にイギリスで起こりました。コアとなった技術は「蒸気機関」です。第2次産業革命は19世紀にドイツで起こりました。コアとなる技術は「内燃機関」つまりガソリンによる流通革命でもあったと言えます。第3次産業革命は20世紀にアメリカを中心に発展しました。そのコア技術は情報技術でありインターネットでした。そして第4次産業革命は21世紀にドイツやアメリカなど情報化の進んだ先進国を中心に発生したと言われています。そのコア技術は「デジタルツイン」という事でしょうか。つまりサイバー空間を作り上げる技術。
 しかし、これらの革命においては、最終的な成果物は人間が手をかけて作っていたように思います。第1次産業革命では、工場で人間が工業製品を作り、第2次産業革命では重化学工業で化学製品を大量に作り、第3次産業革命ではコンピューターで情報を作り、第4次産業革命でも、サイバー空間に人間が手間をかけて「デジタルツイン」を作っていたと思います。
 では、生成AIはどう作るかと言うと、(人間を介さずに)成果物を作ってしまいます。
 いまはまだ文章・画像・音楽といったソフト的な成果物ですが、この後3Dプリンターやロボットと組み合わされると、「こういうものが欲しい」と言った瞬間に、必要な資材、工程、利用する技術、制作・製造までを含めて生成AIが成果物を作るところまでやってしまう状況になるのかもしれません。えっ、プロジェクトマネジメントが要らなくなる・・・・?
 その時、人間は何をするのでしょうか。ちょっと考えてしまいますね。
 私は、価値を創造し、価値を評価するという部分は残るのだろうと思っています。いわゆるWhy、Whatの部分ですね。そして、How to の部分は、やはり多くの部分を、過去の膨大な情報、技術、知識を集めて、生成AIが作り出してしまうという事になるのではないかと思っています。
 そう考えると、我々がやるべきことははっきりしてきますね。
 1つは、価値を創造し、評価し、マネジメントするプログラムマネジメントの能力を身に着けておくこと。
 もう一つは、やはり生成AIからは目を離さずに注視して行くということ。
 このどちらも、PMAJのSIG活動で学ぶ場を用意して行きます。
 ぜひ、ご参加ください。

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