PMプロの知恵コーナー
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PMプロフェッショナルへの歩みー4

向後 忠明 [プロフィール] :3月号

 今回は中規模のプロジェクトの受注であったがそれでもPMのアシスタントとしてかなり責任のある位置づけでの業務遂行であり、プロジェクトの初期段階のプロジェクト計画からPMの配下で仕事を進める立場となりました。
 このプロジェクトはこれまでいくつか対応して来た応札業務の延長に近い作業内容であり、すでに受注業務の一環である提案書作成業務での経験もあり、下記に示すような提案計画の中の②のプロジェクト遂行方針(組織体制、品質、スケジュール、購買計画)をすでに実務で作成していることもあり、ここに示される内容に沿ってプロジェクト計画を立てることができました。

提案計画:
  1. ① 見積方針(外部委託の方策/範囲、調査項目、積算方法、PJ収支予測)
  2. ② プロジェクト遂行方針(組織体制、品質、スケジュール、購買計画)
  3. ③ 提案書作成方針(顧客要望への対応、代替案の作成要否、技術内容グレードとその方法、リスク分析結果の対応)、プロジェクト審議会(この時点までチェックシートに示す項目はすべて完了している事)
すなわち、
  1. ① プロジェクト組織を立ち上げ
  2. ② 応札時においても未解決な事項を残した要件内容を整理し
  3. ③ 関連する組織やほかの企業の知識・技術を最大利用
  4. ④ 独自の判断と自由裁量で顧客要件を判断し、プロジェクト遂行計画の作成
 この中でも①のプロジェクト組織の立ち上げが最重要であり基本的には応札時でのプロジェクト要員、社内各部からの専門技術人材及び各種プロジェクト経営資源の効果的使用及びアウトソース等の関係協力会社の協力を要請し、下記のようなタスクフォース型プロジェクト組織を立上ることが優先課題と考えを整理してみました。

典型的なプロジェクトマネジャを中心としたプロジェクト組織体制とその役割を示したもの

 上記は典型的なプロジェクトマネジャ(以下PMと略称する)を中心としたプロジェクト組織体制とその役割を示したものです。
 この図からもわかるように、PMという役割は対象となるプロジェクトを全責任で指揮、管理を行うためには相当の関連知識と知識及び能力がないとその枠割を果たすことが難しいと思いました。
 筆者は入社依頼いろいろ専門分野の仕事や先輩PMの指導の下にプロジェクトの応札やPEとしてプロジェクトマネジメントに関する知識を実践的に学んできました。この頃になり筆者はPMとして活躍できると思っていました。その意思を上司に伝えたら、「君は確かに表面的にはプロジェクトマネジメントに関する知識はPEとして経験しているが、PMとなると知識だけではうまくプロジェクトの運営はできないものです。プロジェクトというものはプロジェクトメンバーや各種ステークホルダー等も関係し、多くの関係者の参画の協力でその目的を達成することが必要なのです」と言われました。
 すなわち、「プロジェクトマネジメントはart(アート)とscience(サイエンス)のコンビネーションでプロジェクト目的を達成するということが大切である。サイエンスは経験を含むプロジェクトマネジメント関連知識体系のことであり、アートはプロジェクト遂行においてそのプロジェクトの代表となる人物が醸し出す態度や行動といった、適切にプロジェクトに適応させている人間的側面が重要である」と言われたのです。サイエンスの部分は十分としても、多くの人材リソースをマネジメントし組織をうまくまとめていくといったアートの部分はどういうものか?と・・・この当時は未知の部分でした。
 このように考え、小規模なプロジェクトであれば独自でPMとしてプロジェクトをマネージできる自信はあったが、規模が中規模とはいえ、多くの技術や人材などのリソースを含むプロジェクトでは上記のような部分は未熟と判断し、焦ることなく次の機会を待つことにしPMのサポート役として本プロジェクトに従事することにしました。
 このような事情もあり今回はPMになることをあきらめ、大規模複雑なプロジェクトへの参加機会を待つことにしました。
 そして、その後このプロジェクトを無事に完了したころに、これまでとは異なった新たなプロジェクトマネジメント関連知識や技術的知識に限らず上記組織図に示す多くの経営資源を含むプラント及び関連設備建設にかかわる仕事に挑戦する機会を得ることができました。
 今回従事するプロジェクトはすでに受注されたものであり、下図に示すようにPMも決まり、プロジェクト条件の確認も終わったものであり、あとはプロジェク計画を作成する段階でした。このような中規模プロジェクトでもプロジェクト受注後は企業がプロジェクト規模、複雑さ、困難さを判断し、PMが任命されますがその配下のプロジェクト担当がPMの指揮のもと下図に示すような手順でプロジェクト計画を作成することになります。
 基本的には、プロジェクト遂行方針、プロジェクトの組織体制(上図)そして関連プロジェクトキーパーソン含む専門技術者等々の選定が行われ、プロジェクト基盤の整備、WBS(Work Breakdown Structure) 、プロジェクト遂行ガイドライン、総合的スケジューリングそして総合的実行予算計画をプロジェクトキーパーソン達にて検討してプロジェクト計画を立てることになります。
 この知識体系の中でもプロジェクト計画の中でもプロジェクト遂行をスムーズに進めるために最も重要なものはスコープマネージメントであり、その基礎となる体系がプロジェクトWBSの構築です。
 WBSは対象となるプロジェクトの種々の作業や活動内容をそれぞれに関係する役務や対象物を識別し、「何がどこにそしてどのような状態にあるか」を番号によって識別しそれぞれがダブリのないようにする手法です。
 この手法はプロジェクトの進行をスムーズにするための手法であり、関係する各部署のマネジメント、コントロールを行うための有効な手段であり、プロジェクト計画の基盤となるものです。

WBS(Work Breakdown Structure)

 来月号は複雑な設備建設のエンジニアリング業務の効果的遂行に必要なプロジェクト計画の初期で整備するステム基盤としてのWBSについて説明します。

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