理事長コーナー
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P2M標準ガイドブック改訂4版を一緒に勉強しませんか!?

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :12月号

 因果倶時(いんがぐじ)という言葉があります。仏教の教えに基づく言葉で、「因(原因)」と「果(結果)」が同時に存在するという考えを表しているそうです。要は、何かを行う時に、すでにそこにあるすべての因果関係を理解し、行動を取捨選択することが重要だという事でしょうか。P2Mのプログラムマネジメントは、あるべき姿からバックキャストして現状とのギャップを洗い出し、あるべき姿への道筋を描くという点で、因果倶時のフレームワークを提供していると言えるのかもしれません。
 先が見えないと言われている現代社会の経営においても、「すでにそこにあるすべての因果関係を理解し、行動を取捨選択していくこと」が重要だといえます。言い換えればプログラムマネジメント的な経営が必要だということなのではないでしょうか。
 何でこんなことをつらつら書いているかというと、最近の世の中が、AIとかDXとか、「How to」を中心に議論されているような気がして、「昔からそうだったのかなぁ」と疑問に思ったからです。
 調べてみると、昔からそうだったわけでもなく、例えば、少し前にNHKスペシャルで放送されていた「大江戸」という番組で紹介されていましたが、江戸の町の設計にあたっては、運河を「の」の字にはりめぐらせたり、火除け地を置いて火事が燃広がらないようにしたり、水道網を整備するなどして、100万人の市民が、安全で健康で平和に生活できる都市を構想するなど、プログラムマネジメント的な経営がきちんと実践されたように思います。
 戦後の高度経済成長の時代においても、インフラ整備、産業再建、教育改革など、様々な領域で統合的なプログラムマネジメント的な政策が実践され、人々が幸せに暮らせる世界を実現していたように思います。
 それは、「江戸時代や戦後は、何もなかったからそうせざるを得なかったのだ」と言えばそうなのかもしれませんが、すでに多くのものが存在するようになった今でも、「すでにそこにあるすべての因果関係を理解し、行動を取捨選択していくこと」の重要性が無くなったわけでは無いと思います。
 現在の日本は、物価が高騰する中で所得水準も上がらず、必ずしも世の中の人々が幸せを満喫している社会とは言えないように見えます。それは、国際競争力が67カ国中38位という数字にも表れているのかもしれません。その原因の一つに、戦後の高度成長の時代の「品質の良い製品を設計し、より早く、より正確に、そして大量におなじものを作る」ことで世界を席巻した日本が、その成功体験から変わることが出来ず、90年代以降の経済が失速していることがあるのかもしれません。
 P2M標準ガイドブックは、その真っただ中の2001年に発行されました。
 「ものづくりから仕組みづくりへの転換」を提唱したことは、昔から日本人が本来持っている「人々の和」や「世間よし」と言ったものを大事にする、日本流プログラムマネジメントの復活の宣言だったように思います。
 P2M標準ガイドブック改訂4版は、あらためて、日本が伝統的に持つ、「人々の和」や「世間よし」を大事にするプログラムマネジメントの重要性を発信して行きます。
 そのため、PMAJは、P2M標準ガイドブック改訂4版について一緒に学習するSIGを立ち上げることにいたしました。
 ご興味がある方は、ぜひ、ご参加ください。
   P2M標準ガイドブック改訂4版を学ぶSIG

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