例会部会
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「第297回例会」報告

枝窪 肇 : 11月号

【データ】
開催日時: 2024年9月27日(金) 19:00~20:30
テーマ: プログラムマネジメント分野で社会人博士に挑戦
  ~プログラムマネジメント専門職人材と博士号取得人材の連携育成~
講師: 亀山 秀雄 氏/
  一般社団法人国際P2M学会 会長
  東京農工大学名誉教授
  独立行政法人環境再生保全機構(ERCA) 社会実装支援コーディネーター

 日頃、プロジェクトマネジメントの実践、研究、検証などに携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、9月に開催された第297回例会についてレポートいたします。

~はじめに~
 今回ご講演をいただく背景には、内閣府や文科省などでプログラムマネジメントに通じた人材を増やそうという動きがあり、その動きに呼応して、国際P2M学会(IAP2M)が、プログラムマネジメントの実践者・研究者を対象に博士号取得支援を推進することに取り組んでいるということがあります。
 講師の亀山様は、その国際P2M学会の会長として、この取り組みに力を入れていらっしゃるなかで、PMAJとの連携によりP2M資格保有者への働きかけを強化しようと考えておいでです。
 このレポートを執筆している私も、この活動に大変興味を引かれており、今回のご講演を大変楽しみにしております。

~講演概要~
  • ロジックモデル
     P2Mを活用して物事を進める際に役立つロジックモデルを紹介する。(配布資料P3、4)
     まずありたい姿のために想定事項を考え課題を抽出する。プログラムマネジメントを用いて戦略を立案しアクションプランを作る。プロファイリングマネジメントを用いて長期・中期・短期の目標を設定し、価値指標マネジメントで何を目標にするかを決定する。その上でアーキテクチャマネジメント(3Sモデル)を用いてプロジェクトを立ち上げる。その後はプラットフォームマネジメントでどういったステークホルダを組ませるかを決め、また、短期・中期・長期のライフサイクルマネジメントをリスクマネジメントも駆使しながら実施する。こうした全体のシナリオをロジックモデルで表現することが可能である。
  • プログラムマネジメント力強化の必要性
     日本の製造業の国際競争力ランキングは、例えば国際経営開発研究所(IMD)による世界競争力ランキングにおいて2024年は38位となっており、日本の課題と改善策として、「ビジネス効率性、政府の効率性などが低位。デジタル化の遅れ、規制の厳しさなどが課題。デジタル化推進、規制緩和、スタートアップ支援が求められる。」と評価されている。
     他のさまざまなデータから日本の弱みと強みを明らかにし、課題を明示すると以下となる。
    【弱み】 ビジネス効率性の部門:「経営プラクティス」65位、「生産性と効率性」58位
    政府の効率性の部門:「公共投資」64位
    【強み】 インフラの部門:「科学的インフラ」10位、「健康と環境」12位
    経済状況の部門:「国内経済」5位、「雇用」6位
    【日本の課題】
      科学インフラと環境技術を活かして国内経済と雇用の強みを活用して経営プラクティスにプログラムマネジメントを導入して、政府のGXの実現を目的とした2023年度からの新たな政策による2023年から年間2兆円で10年間の合計20兆円のGX経済移行債を活用して生産性と効率性を向上させて官民合わせて150兆円規模の投資により日本の国際競争力の向上を図る
     課題で示した内容を実現するためのシナリオを作成した上で文科省に示し支援制度を作ることが必要だと考える。そのためには、産学の連携が必要であり、国際P2M学会と、産業界とつながりのあるPMAJとがタッグを組むこと、より具体的にはプログラムマネジメント人材を育て、その方たちに博士号を取得してもらうようなシステムを構築することが必要である。
     実際の場面でも、政府による財政支援のある活動において、ありたい姿からバックキャスティングでアクション計画を立案し、アウトカム目標と達成に向けた取り組みを実現することができるプログラムマネジャーが必要であったり、SBIR制度において3つのフェーズ(POC、開発、事業化)をスムースに遂行させることができるプログラムマネジャーが必要であったりといったことが認識されるようになってきている。
  • P2M学会の紹介
    ミッション
    1. 本学会は、オーナーの視点に立って経営システムと技術システムを統合するプログラムマネジメントの知識体系の実践研究を推進する事により共存共栄と共創の持続可能な社会の構築に貢献する。
    2. 本学会は、組織の全体氏名のもとで複数のプロジェクトを有機的にマネジメントし、創造的統合マネジメントスキル手法を活用して、構想(スキーム)・構築(システム)・運営(サービス)が連結した(3Sモデル)構成からなるプログラムマネジメントの深化と共にその知識体系を社会に提供する。
    ビジョン
    1. 国際社会への発信:国内外の様々な分野におけるイノベーション創成におけるプログラムマネジメントの有効性を取り上げて、論文や国債会議やSNSなどを通じて日本のプログラムマネジメントを世界に発信する。
          2025年秋第8回ASCON-IEEChE 国際会議広島開催
    2. 人材育成への貢献:社会人の会員数と協賛企業数の増加に繋がる魅力有る企画として、政府のリスキリング支援におけるマネジメント人材育成支援を学会の方針として、新規研究・事業プログラムの提案とその社会実装に関する様々な手段による活動支援を行う。
  • P2Mの活かし方
     価値実現力が高い人と価値発見力が高い人とがいる。
     価値実現力が高い人は物事を計画通りに進める能力がある人で、価値発見力が高い人は俗にイノベーション人材と呼ばれ、これまでやってきていないことに気づき方向性を探ることができる人である。
     一般的に企業経営者は価値実現力が高い人を求めるが、これからはイノベーション人材の活用が不可欠となるであろう。
     P2Mを学んだ人はプロファイリングマネジメントを行うため、価値実現力だけでなく、価値発見力を用いてスキームを設定する事を身に着けている。
     今後、様々な場面で価値発見力と価値実現力を二刀流で実現できる人材の需要が増えてくるものと考えており、ここにP2Mが活かされる。
     今後のプログラムマネジャーの役割は、組織の業務をプログラム管理支援する事であり、そのために、オーナーの視点に立ったミッション志向のビジョン創発型とエビデンスベース型の連携によるプロジェクト・プログラム管理を行う。そして、ミドル・アップダウンマネジメントを行い、組織の業務をプロジェクト管理支援することである。
     こうしたことができる人材が必要であり、こうした人材の育成にP2Mを学ぶことが有効である。
  • 事例紹介
     割愛(配布資料 P44~を参照)

~筆者所感~
 実際のビジネスシーンで実践力を身に着けた社会人が博士号を取得することで可能性が開けること、そして社会人が博士号を取得するための環境を整えるための動きが確実に進められていること、実践力を証明することにP2M資格を利用できることなどを今回の講演で知ることができ、大変刺激され、この取り組みを使って自分も博士号を取得したいと素直に思いました。
 この活動とリンクするSIG(Specific Interest Group)がPMAJで発足したということですので、まずはこの活動に参加したいと思っています。ともに活動したいという方は是非手を挙げていただきたいと思います。
 講師の亀山様におかれましては、例会という機会を通じて大変興味深いお話しを具体的にご説明いただけきましたことに、心より感謝を申し上げます。

 ご講演の資料は協会ホームページの「ジャーナルPMAJライブラリ」の月例会開催資料にアップロードしていますので、個人会員の方はダウンロードして閲覧いただければと思います。
 なお、我われと共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。ご興味をお持ちの方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
以上

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