今月のひとこと
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 国連の女性差別撤廃委員会 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :11月号

 冬を迎える季節になると、ここ数年、熊が人里に出没するというニュースが流れます。木の実などの不作が原因だそうです。四季の移ろいが素晴らしいと自画自賛してきた日本の自然が変調をきたしているのでしょうか。
 その確認を兼ねて、奥多摩の酒蔵の蔵開きのイベントに行ってきました。青梅町の商工会議所の肝いりで、酒蔵見学や利き酒コーナーなどの他、吹奏楽演奏やお囃子のライブステージ、玉堂美術館無料入場券配付など1日中楽しむことができます。紅葉はこれからといった感じでしたが、大勢の人がお酒と様々な趣向を楽しみにやってきていました。1年の中でこの日が最も混雑するという最寄り駅には、このイベントの為だけに駅出入口の改修を行ったとの噂があります。
 久々に、朝から夕暮れまでお酒と山の空気を存分に味わいました。

 10月の中頃、日本が国連の女性差別撤廃委員会の審査を受けたというニュースが流れました。8年ぶり6回目ということですが、女性差別撤廃に関して日本が後進国から脱していないという評価は変わらない模様です。
 選挙と重なったからかもしれませんが、このニュースへのマスコミの対応は冷めていたと思います。また、各政党も選挙の争点として積極的な取り上げを行っていたとも思えませんでした。女性差別関連の例えば「選択的夫婦別姓」問題に踏み込み過ぎると票が逃げるという判断だったのでしょうか。
 この女性差別撤廃委員会の審査第1回は1988年です。後進国日本は、毎回様々な指摘を受け、「育児休業制度」「(女性の)再婚禁止期間是正」「男女雇用機会均等法」などの法整備を進めてきました。現在、日本の女性差別撤廃に関連した法律の整備状況は世界でもトップクラスなのだそうです。ところが、その法律の効果が殆ど出ていません。例えば、男性の育児休暇取得率の低さがよく取り上げられます。法施行から何年も経つのに低いままです。マスコミも問題視しているような報道をしていますが、ポーズを取っているだけにしか見えません。他の問題では舌鋒鋭い評論家諸氏も、歯切れが悪いように見えます。
 編集子自身も、育児休暇を取ったことはなく全て妻に押し付けていました。反省も込めて妻への感謝の想いはあるのですが、若い世代に育児休暇の取得を勧めることができません。男性の育児休暇に反対ということではなくて、育児をしていないので自信を持って勧めることができないのです。
 日本では、法律を作るまでは熱心ですが、その施行にあたってのシナリオ作りの段階で息切れすることが多いようです。育児休暇を取得する権利を法律で保証しても、取得の障害になるように環境を変えなければ取得は進みません。評論家やマスコミなどを巻き込んで育児休暇取得当たり前といった雰囲気を醸成したり、育児休暇を取ったことがない親の世代が自分の子供に取得を勧めるようになるための方策を行うなどの細かい施策の実施が必要です。
 法律の作成は、P2Mでいうところのシステムモデルプロジェクトにあたります。法律の施行はサービスモデルプロジェクトです。どうすれば苦労して作った法律を有効なものにしていくかのシナリオを書いて、実行していくプロセスです。日本の女性差別問題は新たな法律整備の前に、サービスモデルプロジェクトの貧弱さ改善にかかっています。
以上

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