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P2Mを人材育成に活用してみませんか?

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :10月号

 PMAJの論理的基盤である、「P2M標準ガイドブック改訂4版(以下、改訂4版)」が、9月3日に販売開始となりました。
 改訂4版の実物は、PMシンポジウム2024の展示コーナーでご展示させていただきましたので、すでにご覧になった方も多いと思います。
 改訂4版の概要につきましては、PMシンポジウム1日目の改訂委員会委員長の当麻先生の特別講演で紹介していただきましたが、その特徴は次のとおりです。
  • イノベーションの実現をモデル化 P2M事業モデル、P2Mプリンシプル「7Keys」
  • 新しい潮流を反映し加筆 アジャイル、デザイン思考など
  • わかりやすく記述を刷新 P2M事業モデルに沿った、事例を用いた解説 など

 下図にP2M事業モデルを示します。
P2M事業モデル

 この図のヨコの軸は、イノベーション創出のペンタスロンモデル(Goffin,2017)の考え方を取り入れ事業活動を可視化したもので、構想⇒検証⇒実装⇒運用と、事業活動のライフサイクル全体を示しています。
 また、タテに見ると事業戦略からプログラム、プロジェクトそして事業基盤へとつながる、組織のマネジメント活動全体の流れを示していることが分かります。
 つまり、このタテとヨコのマトリックスで、組織の事業活動の全体図が表現されています。

 さて、最近、ビジネスパーソンのリスキリングが話題となっています。そのきっかけとなったのは、2020年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)において、「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表されたことに端を発しています。その趣旨は、デジタル技術や自動化の進展、気候変動、グローバリゼーションの影響によって、既存のスキルが急速に時代遅れとなり、新しいスキルの獲得が急務となっているということだと聞いています。
 この流れを受け、日本においても経済産業省を中心に「キャリアアップ支援事業」などが推進されています。
 経済産業省の発行している「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」によると、「リスキリングとは、『新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること』」となっていて、従業員にスキルを習得させる方向性が強いように感じます。
 しかし、個人のリスキリングだけでは、凋落の続く日本経済の立て直しには不十分ではないでしょうか。なぜなら、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」が足を引っ張る産業構造の中では、「仕組みを抜本的に作り直す必要」があり、そのためは、組織活動全体のリスキリングが必要だと思うからです。
 ではどうすれば良いかという事ですが、先に紹介した通り、P2M事業モデルはタテとヨコのマトリックスで、イノベーションを生み出す事業活動の全体図が表現されています。そして、改訂4版では、構成要素ごとに、各界の有識者の方々により、最新の知識、スキル、方法論が解説されています。このP2M事業モデルに沿って、組織のリスキリングを実践されることを検討してみてはいかがでしょうか。
 また、PMAJでは、この事業モデルに沿ったビジネスパーソンのリスキリング目標を設定しその達成度を認定する資格認定(プロジェクトレベルのPMC資格、プログラムレベルのPMS資格、プログラム実践レベルのPMR資格)も行っています。
 組織全体と構成員のリスキリングを整合性をもって実施できるP2Mを、イノベーションを実現する人材育成に、活用してみてはいかがでしょうか。

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