『第295回例会』報告
中前 正 : 9月号
【データ】
開催日: |
2024年7月26日(金) |
テーマ: |
「プロジェクト計画・管理のポイント」
~今一度、基礎・基本を見直す90分~ |
講師: |
株式会社システムインテグレータ エンタープライズ営業本部 PS営業部 部長
秋山 肇 氏 |
◆ はじめに
日頃プロジェクトに携わっていて、ふと、基礎から理論を学び直したいと思うことはありませんか。私の場合はスケジュール管理やコスト管理の場面でよく「あの手法はどんな手順で進めるべきだったかな」「この課題はどんなツールを使って解決すべきだったかな」といった状態になり、本棚からP2MのガイドブックやPMBOK®ガイドを引っ張り出してページをめくっている時にそう思います。
複雑で難易度の高いプロジェクトになればなるほど、綿密な計画を立てて実行に移し、推移をしっかり管理していくことが必要になります。その際にこれまで多くの先人によって構築されてきた体系的なプロジェクトマネジメント理論が役に立ちますが、資格取得などで理論を学習したことはあっても、完全に自身に染み付いているという人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回の例会では、復習の意味も込めて、株式会社システムインテグレータの秋山肇氏を講師としてお招きし、これまで統合型のプロジェクト管理ツールを創ってきた立場から、初心者・初級者にもわかりやすいプロジェクト計画の立て方や管理のポイントをご解説いただきました。以下、要点を整理して紹介します。
◆ 講演内容
1. プロジェクトとは?
● プロジェクトとは
- 何らかの目的を達成するために計画を策定して遂行すること。期限が定まっている、あるいは達成したら終了するような限定性を持った計画のこと。
● プロジェクト管理とは
- プロジェクトを成功裏に完了させることを目指して行われる活動。計画立案、工程の作成、進捗管理が含まれる。
2. プロジェクト計画の立て方
● プロジェクト計画はなぜ必要か 3つの理由
- 理由その1:関係者間で共通認識を持てる。
- 理由その2:プロジェクトの進捗が把握できる。
- 理由その3:急な変更に対応できる。
● プロジェクト管理には、ツールが必要
- プロジェクト計画書、WBS、ガントチャート、EVM、体制図、アサイン表などがある。各ツールを使ってプロジェクト全体を管理する。
- ※ 各ツールの詳細は当日の発表資料にあるのでご参考に。
3-1. プロジェクト計画 3つのポイント 『WBS』
● WBS(Work Breakdown Structure)とは
- プロジェクト全体を細かな作業(Work)に分解(Breakdown)した構成図(Structure)。WBSを使わないと、作業を思いつくまま並べることになり、抜け漏れが発生しやすい。WBSを使うとトップダウン式にタスクを洗い出すので抜け漏れなくきちんと整理できる。
● WBSの秘訣
- その1 階層の粒度を揃える:1階層目は工程、2階層目はタスク、3階層目は機能、というように各階層の粒度を揃えて全体を構成するようにする。
- その2 タスクの単位を揃える:タスクを細かく分けすぎたり大雑把に分けたりすると管理が大変になる。管理する意味のある単位にまで分割された作業群(=ワークパッケージ)で管理する。
3-2. プロジェクト計画 3つのポイント 『ガントチャート・CCPM』
● ガントチャートとは
- スケジュールや作業を管理する図表。縦軸に工程やタスク、横軸に期間を配置して進捗を管理する。誰がどのタスクをいつまでに対応するかなど、現状を把握できる。
- ガントチャートのおすすめの項目は、やるべき作業が明確化される「WBS」、スケジュールを組める「期間・チャート」、役割を分担できる「担当者」、工数見積もりが可能になる「計画工数」、進捗管理が可能になる「進捗率」など。
● CCPM(Critical Chain Project Management)とは
- プロジェクトの各タスクの予算やスケジュールをぎりぎりに抑えて、プロジェクト・バッファという余裕を設けておく管理手法。余裕を取り除いて各タスクをつなげ(チェーンし)、その工程の最後にバッファを設ける。そうすると各タスクはできるだけバッファを使わないように努力してくれ、たとえオーバーするタスクが生じても全体的には予定期間内に作業を終えることができる。
3-3. プロジェクト計画 3つのポイント 『工数予実』
● 工数予実のメリット
- 作業完了に必要な作業時間の目安(→担当者の目標となる)となる、タスクの工数予実からプロジェクト全体の工数予実がわかる(→コストが見える)などのメリットがある。
● 工数予実の管理方法
- 各タスクの「計画工数」÷「実績工数」×「進捗率」で「生産性計画比」を算出する。これによりタスク単位で生産性がわかる。開始・終了予定日を組み合わせることによって遅れ日数や回復工数なども管理できる。
4. プロジェクト管理のポイント
● ポイント1 進捗と採算を中心に見ていく
- プロジェクトには「コスト」「納期」「品質」がある。経営目線では、まず大きな経営リスクとなる「採算」と「進捗」から見ていく。
● ポイント2 プロジェクトの性質による使い分け
- プロジェクトの規模(大・中・小)に合わせた管理レベル・使い分けのルールを作る。また案件の性質・規模・失敗リスクの量などに応じて管理するか否かを選択する。
● ポイント3 同じプロセスで管理し、情報を集める
- 各タスクの管理プロセスや、収集する情報の粒度・精度が異なると、その分集計工数や全体管理工数がかかり、エスカレーションにも時間がかかるが、同じプロセスで管理すると全体管理がしやすくなり状況を正しく把握できるようになる。いかに必要な粒度で統一した情報を収集して連携していくかがカギとなる。
● ポイント4 常に更新されてリアルタイムな状況をつかめるようにする
- 社内の全プロジェクトの進捗・コストを中心に見える化する。社内ステークホルダーに共有すべき情報は、統一したプロセスでかつすばやく連携できる仕組みが必要である。
● ポイント5 プロジェクト管理プロセスをレベルアップしていく
- 自社、自プロジェクトの管理レベルがどこにあるかを確認する。また次のレベルのためのプロセス改善を実行していく。
● ポイント6 教育 メンバー間で共通言語を持つ
- 今まで我流でやってきた、またプロジェクトの短納期化や大型化・複雑化等によってプロジェクト管理が難しくなってきた組織には、「体系的な知識」と「共通言語」が必要である。
5. 効率的なプロジェクト管理法
● 昨今のプロジェクトの問題点
- プロジェクトが大型になり参加メンバーの人数も多くなってきている。その分、1日の進捗の遅れが大きな利益圧迫に繋がり、後でリカバリーすることが難しくなってきている。予実の差異に早く気づけばすぐにリカバリーできるが、気付くのが遅れるほど回復に工数がかかる。計画からのズレにいかに早く気付くかが重要である。
● 統合型プロジェクト管理ツール『OBPM Neo』の紹介
- 特徴①見える化:ガントチャート、メンバーアサイン、採算などプロジェクトのあらゆる情報を見える化できる。
- 特徴②一元管理:メンバー、PM/PL、部門長、経営層など役割毎に必要な情報が見られ、全社で連携してプロジェクトに対応できる。
- 特徴③標準化:製品や開発種別毎にWBSをテンプレート化できる。
◆ 講演を聞き終えて
講演では、昨今の課題としてプロジェクトの複雑化、大型化について紹介されました。私の身の回りでも以前に比べてずいぶん規模が大きくて大所帯のプロジェクトが増えてきたように感じます。その分プロジェクトマネジャーにとっては情報収集、数値集計、レポート作成、ステークホルダー説明などに費やす時間が増えてきており、また進捗遅れ、コスト超過などの問題を見落とすリスクも高まっていると考えられます。
そんな中、当講演でプロジェクトマネジメントの基礎を再確認できたことは私にとって有益でした。大型・複雑で難易度の高いプロジェクトほど基本に立ち帰り、(統合型ツールも活用して)しっかり計画を立てて管理していくことがプロジェクトの成功につながると気付かされました。またWBSのタスク分解のコツやCCPMのバッファ捻出の手法など、知らなかった(もしくは完全に忘れていた)テクニックも知ることができ、次の機会で実践したいと思いました。当日参加された皆さまは、何かヒントになることはありましたか。
例会では今後もプログラムマネジャーやプロジェクトマネジャーにとって有益な情報を提供してまいります。引き続きご期待ください。
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