今月のひとこと
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 P2M標準ガイドブック改訂4版 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :9月号

 なかなか秋の気配が感じられないなどと思っていたのですが、自宅近くで赤とんぼを見かけました。蝉の声もあいかわらずうるさいのですが、つくつく法師の鳴き声が混ざるようになってきました。もう少し我慢すれば、暑さから逃れられます。今年はさんまが豊漁だそうですから、秋らしい秋が訪れるのを楽しみにしています。

 P2M標準ガイドブックの改訂4版が発刊されます。2001年の初版発行以来、一貫して「for Enterprise Innovation」を掲げてきましたが、P2M普及への道程は厳しく、前回の改訂3版からは10年ぶりの改訂となりました。  改訂3版までのP2M標準ガイドブックを読んでおられる方、既にP2Mの資格を取得済みの方にも改訂4版を手に取っていただきたいと思います。改訂4版発刊にあたって、新たにどのような視点・要件が取り込まれていますが、その中から2点をご紹介します。

 改訂3版発刊以降、世の中ではDX(Digital Transformation)に代表される「変革」への希求が高まり、P2Mを使おうという動きも芽生え始めてはいるのですが、なかなか本格的な動き(うねり)というところまでは育ちきれていませんでした。
 「P2Mは概念として優れているが、組織がどう動けばいいのか判り難い」といった声に対して、改訂4版を検討する改訂委員会ではマネジメントプロセスの理解が進むようなガイドブックにしようと考えました。その核になるのが「P2M事業モデル」です。事業の中で、事業戦略をプログラム・プロジェクトに展開し、さらに運営から戦略に戻るというプロセスを図で説明できるようになりました。
 プロジェクトに携わったことがある人にとって、プロジェクトの開始から終結までのプロセスはイメージしやすいのではないかと思います。それが、プログラムになるとイメージできないという人が増え始め、事業全体となるとさらに分からないという人が圧倒的に多くなります。「P2M事業モデル」では事業とプログラム・プロジェクトの関係を簡潔に図示しています。簡潔とはいうものの、図には様々な要素が含まれていることから一瞥して分かったということにはならないかもしれませんが、理解するための足掛かりとして取り組んでいただければと思います。

 P2Mプリンシプルは改訂4版で初めてでてきた言葉です。改訂委員会の中で、P2Mはプログラム・プロジェクトのマネジメントを解説しているが、新たな価値を創造するためのマネジメント共通の鍵となる原理原則をコンパクトに示してはどうかとの議論がありました。委員会では、プログラム・プロジェクト成功の鍵を7つに絞りこみ「7 keys」として定義しました。7という数字自体には意味がありませんが、実践の場では7個程度に収めた方が使いやすいのではないかということで決まりました。
<<P2M 7Keys>>
  1. ① 価値第一
     プログラム・プロジェクトの活動においては価値の創造が最優先であることを常に意識して活動を組みたて推進することを心がける
  2. ② 戦略との整合
     プログラム・プロジェクトの活動は事業戦略と常に密接な関係を持つことを忘れずに、重要な節目においては上位戦略との整合性をしっかりとる
  3. ③ ゴール起点
     価値を創造し獲得するために必要な成果を明確に、その成果を得るためにどのような活動や意思決定を行うか、常に成果を念頭においてバックキャストの思考で考える
  4. ④ システム思考
     価値を獲得するためには、プログラム全体を鳥瞰し、関係性を考慮し活動の構造化を行い、価値を獲得するためのシナリオを組み立てるシステム思考を活用する
  5. ⑤ 上流への注力
     成果を得るにはプログラム・プロジェクト共に上流側での対応が極めて重要であり、上流側に時間と工数をかけて成果を獲得できるように手厚く活動を行う
  6. ⑥ チーミング
    プログラム・プロジェクトにおいて活動母体のチームのパフォーマンスは成果に直結する。チームが最大の成果をだせる環境を常に改善・維持することを心がける
  7. ⑦ テーラリング
     実施すべきマネジメントや適応の方法は対象となるプログラム・プロジェクトによって変わってくる。効果の大きいマネジメントを選択し、適応の仕方も工夫して実践する

P2Mプリンシプル

以上

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