グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第182回)
Green Project Management

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :9月号

 
 パリオリンピック2024が閉幕し、フランスは、マクロン大統領にとって大変困難な国政チーム編成の戦いに戻った。
 開催国のフランスは、パリ五輪のグランドミッションを達成し成功した大会である、としている。大きな課題であったテロからオリンピックを守るという点では、大会開幕前日にSNCF(フランス国鉄)の駅舎などに破壊行為があり、パリへのTGVの運行見合わせがあったが、大会そのものは守られた。フランスは国内北部に常に過激派が居住している国であり(筆者自身、大学院のある北フランスのリール市通いが一番多かった時期にテロが頻繁に起こり、ひやひやしながら移動をしていた)、治安の維持に神経を使うのは日本の比ではないので、治安当局の努力はすごかった。
 今大会は、地球温暖化のなかにあって、サステイナブルな大会を実現するとして、この面で目標は達成されたとの声明が出たが、オリンピック選手村の待遇では、概して選手に評判が悪かったと報道されている。EU以外の国で恵まれた環境で練習や試合をしている選手には、フランス流の合理性や、日常生活そのものに組み込まれているサステナビリティ価値を持ち込んだオリンピックは快適ではないであろう。サステナビリティは市民に我慢がないと成り立たない。
 EUではサステナビリティを組み込んだ経済や社会生活が一般的であるが、それが国としてサバイバルへの道であると政府やほとんどの国民が考えている。EUの国ぐには成熟経済にあり、今後顕著な経済成長が見込めず、グリーンエコノミー(あるいはバイオエコノミー)にかけるしかないという認識である。

 フランスはサステナビリティチャンピオンの一角にあり、2016年に「グリーン経済成長法」という法律まで作って方向性を明確にしている。
 筆者の個人的な感想では、フランスが訪れるのに素晴らしい国であると思ったのは2000年代までで、それ以降は、(とくにパリの)街は清潔ではないし、食事も町の普通のレストランでは、あまりおいしくない(従ってはずれのないバゲット、北アフリカ料理のクスクス、アントレコットばかり食べていた)。質素といえば、一番分かりやすかったのはパリ シャルル・ドゴール空港のStar Alliance のラウンジで、2010年代になると、ワインのグレードとか軽食とかが年々質素になっていた気がする。Air Franceのラウンジはワインも食事も良いようだが、エコノミークラス利用ばかりであったので、自分で確かめる機会はなかった。

 さて、EUでサステナビリティ志向がプロジェクトマネジメントにどのような影響を与えているかであるが、二つの例をあげる。
  • まず、IPMA全体も各国の主力協会もGreen Project Management を前面に押し出している。PMのマーケットの成長はもはやここにしかないと捉えているのであろう。とくにドイツ・プロジェクトマネジメント協会はドイツ語と英語で略語がGPMであるが、GPMは、Green Project Management (GPM)のガイドブックを出版し、第3版まできている。
Green Project Management(GPM)のガイドブック
GPM “Green Project Management Third Edition” 出典Linked-in August 21, 2024 by Joel Carboni

  • 大学院でのプロジェクトマネジメント専攻でも、科目でもGPMが加わっているが、筆者が教員をしていたSKEMA Business School では、修士課程ではプロジェクトマネジメント専攻が残っているが、博士課程のプロジェクトマネジメント専攻は単独の専攻から外され、Sustainability Studies 専攻に組み入れられている。

 
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