サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?
(正垣 泰彦著、(株)KADOKAWA、2024年3月22日発行、初版、263ページ、1,500円+税)
デニマルさん : 8月号
今回紹介の本は、最近の新聞報道と親しい友人からの情報と3年前のコロナ禍での状況等が絡んで取り上げた経緯があります。その辺の事情を時系列的にお話して本書をご紹介しましょう。先ず新聞報道ですが、「2024 日本BtoB広告賞、サイゼリヤ新卒採用サイトで金賞受賞」とある。主催団体である日本BtoB広告協会は、「新卒学生に向けてストーリー性豊かな情報をバランス良く提供しており、訪れる全ての人に新たな発見を与えている。(中略) サイト全体が新卒学生の目線に立ったシンプルでわかりやすい表現は、各企業がお手本に すべきサイトといえる。 新卒対象者以外に対しても、会社案内サイトとして十分な情報が提供されており、まさに“金賞”にふさわしい素晴らしいサイト」(2024年6月6日発表)と講評している。この報道で注目すべきは、サイゼリヤの新卒採用サイトのウエブ広告での受賞で、普通の商品宣伝の広告ではない点にある。サイゼリヤは、以前から一般顧客向けの広告宣伝をしていないと本書に紹介されている。広告宣伝に使う費用は、販売商品(提供料理)の価格低下に努める経営方針としているためと書かれてある。次に筆者の友人からの情報だが、学生時代から読書好きの友人と年に数回集まって読書談義をしている。ここ数年コロナ禍で外部での飲食が難しかったり、高齢者の外出は家族から禁止さていた等々でお互いの情報交換が上手く出来なかった。昨年5月以降はコロナ禍の社会不安も少なくなり、お互いの合意が取れて久し振りの再会となった。そこでお互いの推薦図書を提示した中で、本書が入っていた。友人の推薦理由は、コロナ禍で低迷した飲食業界でも独自の努力を続けた企業に本書のサイゼリヤがあったと云う。だから是非読んで、話題の本として紹介すべきと強く勧められた。因みに2023年の企業決算では、「値上げなしで、業績回復を果し大幅増益を果した」と外食関係者を驚かせ、今年6月の株価も急騰していた。こうした背景から、著者が述べているサイゼリヤの経営や企業成長の秘策等々をご紹介することにした。先ず著者を紹介しましょう。1946年(昭和21年)兵庫県生まれ。現在サイゼリヤ代表取締役会長。1968年(昭和43年)東京理科大学理学部物理科卒業、大学4年在学時に、イタリアンレストランを千葉県市川市に開業。1973年マリアーヌ商会(現・サイゼリヤ)を設立、社長就任。2000年(平成12年)東証一部上場を果たす。2009年(平成21年)代表取締役会長就任。2015年(平成27年)サイゼリヤグループ年間来客数2億人を突破。2019年(令和元年)7月に国内外1500店舗を達成。同年11月に旭日中綬章受章。著書に『サイゼリヤおいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経ビジネス人文庫)がある。
サイゼリヤとは? 年2億人が来客するファミリーレストラン
著者の経歴でも紹介の通りサイゼリヤは、イタリア料理を主体としたファミリーレストランである。それも国内や海外を含めて1,500店舗(従業員で約4,000名)、売上で1,400億円、経常利益で107億円(2022年度連結決算から)もある巨大なレストラン企業である。このサブタイトルにもある「年間で2億人の顧客を集めるファミレス」で、若者から『サイゼ』の愛称で親しまれている。その人気の秘訣が本書に書かれてある。冒頭に「サイゼリヤの料理は高くてまずい」とある。しかし、『サイゼリヤが“まずくて、高い”と捉えているからこそ、安くておいしい方向へ、「人のため」、「お客様のため」になる方向へ向かっていける』と結んでいる。創業以来50年、この努力を続けているのが、ミラノ風ドリアが290円、グラスワインが100円(2024年2月現在)ですと書いている。その結果が、年間で2億人の顧客が来るファミリーレストランとなっている。その美味しさの秘策については、著者が『サイゼリヤおいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』の本に詳しく紹介されている。そのポイントは「毎日食べても飽きない料理」と「料理のボリュームを組み合せた会食のコーディネーションを楽しむ」と食事の選択の楽しさを提案している。具体的には、“飽きない料理”で「料理の素材を厳選して味付けを控え目にしたシンプルな調理」をモットーとする。“料理のボリューム”は、「多すぎず少なすぎず」として、好きな料理を自由にコーディネーションして楽しむ食事」を提供している。そして料理の価格がリーゾナブルであれば全く問題なく、年間2億人のお客様が来訪するのは必然である。価格については、美味しい料理以上に顧客の関心度も高く、サイゼリヤ経営の重要項目である。
サイゼリヤの基本理念 この世界のすべてが、あなたに加勢する
ここで改めてサイゼリヤの価格ポリシーを確認してみよう。その基本は、「お客様がびっくりするくらい喜んでもらえる価格」で「多くのお客様が注文したくなる価格」を目指すとある。それが先に述べた「ミラノ風ドリアが290円、グラスワインが100円」である。この価格設定については、サイゼリヤ創業以来の厳しい経営努力の結果が生み出している。その一つの事例が、冒頭ご紹介した日本BtoB広告賞の金賞受賞である。それも商品の販促宣伝ではなく、新卒の採用の為の広告に費やされたものである。余分な経費は削減して、低価格維持のためのポリシーが徹底されている。著者はお客様のことを考えていたら、年2億人が来る店になったと云い、その基本は「自分中心の考えでなくお客様優先」である。その過程からサブタイトルの「自分中心をやめると、ビジネスも人生もうまくいく」と纏めている。
サイゼリヤの法則 著者が見出したエネルギーの法則
著者は経営者であるが学生時代に物理学を学んだ経験から、ビジネスにも物理の法則が有用であると書いている。ポイントは、人間が進化していくためには、エネルギーが必要である。そのエネルギーには法則性があるという。一番目の法則は『すべは変化し、調和や平等に向かっている』である。(この内容説明はチェーンストアー理論から考えて、「人のため」に行動する)。二番目の法則は『すべては最高の状態で関係し合い、中心も孤立もしない』である。(全ての物質が素粒子から出来ていて、繋がり調和し合っている)。この法則の説明内容では不十分である。是非、本書をご覧になって「サイゼリヤの法則」をご確認下さい。
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