理事長コーナー
先号   次号

PMAJ 2024年度事業計画

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :7月号

 PMAJの2024年度の通常総会が6月20日に開催されました。
 主要な議題は、2023年度の事業・決算報告と2024年度の事業計画・予算の審議でした。そこで、今回の理事長コーナーでは、2024年度のPMAJの事業計画について触れたいと思います。

 2024年度の事業運営方針として、
「価値共創のプログラム・プロジェクトマネジメントの普及を通して活力ある社会の醸成に貢献することを基本方針として運営する。具体的には、8月末発行予定のP2Mガイドブック改訂第4版を最大限に活用し、様々な活動を盛り上げて行く。」
を掲げました。ここではこの意図について補足したいと思います。
 最近のプロジェクトマネジメント(PM)の傾向として、PMの活用範囲を非常に広くとらえているように感じています。もちろん、20世紀から21世紀に掛けて、PMが防衛・宇宙という超巨大プロジェクトの管理から、企業のWEBアプリケーションの開発管理に至るまで広く活用されるようになったのは事実ですが、あまりにも範囲が広くなりすぎたため、「プロジェクトマネジメント」という言葉だけでは括り切れなくなっているようにも思います。
 「P2M標準ガイドブック(以下、P2Mガイド)」の初版は、そんな傾向が顕著となりつつある2001年11月に発行されました。この年は、その後のPMに大きな影響を与える、「アジャイルソフトウェア開発宣言」が発行された年でもあります。
 P2Mガイドの冒頭に、「今後、日本企業は『ものづくり』中心の発想から転換して『仕組みづくり』による再生に注力しなければならない。」と提言しています。ここで、仕組みづくりとは「経営者が先導して組織全体に『企業価値とは何か』を問いかけ、新しいビジネスモデルを再構築することである。」と説明しています。
 そして、その再構築のプロセスを「企画づくり(スキームモデルプロジェクト)」、「システムづくり(システムモデルプロジェクト)」、「利用づくり(サービスモデルプロジェクト)」で構成される「プログラム」と新たに定義しています。
 「新たに定義した」と言っている意味は、それまでの「プログラム」は、米国の国家予算の管理手法として「巨大なプロジェクトの集合体」をプログラムと位置づけたのに対し、P2Mではプログラムを「経営者が先導して組織全体に『企業価値とは何か』を問いかけ、新しいビジネスモデルを再構築する」ための3種類のプロジェクトの集合体と位置づけ、そのマネジメントとしての「プログラムマネジメント」の重要性を、世界に向けて発信したことがP2Mの新規性だと考えているからです。
 ところで、システムモデルプロジェクトの役割りは、「スキームモデルプロジェクトで企画された成果物に対し、計画を立て、計画通りに成果物を作りあげてる」ことですが、この部分のPMは、20世紀まででかなり確立されてきたように思います。この部分については、確立されたプロセスを簡潔に分かりやすく示すことが必要となっています。
 一方で、企画づくり(スキームモデルプロジェクト)の部分は、価値観が多様化し、より多くのステークホルダーがコンピュータネットワークを介して協働するようになった現在、価値を共創して行くためのモデルとなるマネジメントの汎用的なフレームワークが必要になって来ています。
 また、「利用づくり(サービスモデルプロジェクト)」の部分も、ビジネスがネットワークで提供されるデジタルサービスが中心となった現在、顧客のフィードバックを迅速にスキームモデルプロジェクトへフィードバックし、顧客提供価値(CX、UX)に最大化するためのプロセスを組み込むことが重要な要素となって来ています。
 このような要求に対応する指針として、PMAJではP2Mガイドブック改訂4版の執筆を2021年から進め、2024年8月末に発行することとなりました。
 その特徴は
  • P2M体系の特徴である、事業戦略、プログラム、プロジェクトというマネジメントレベルと、事業ライフサイクルを表す3Sモデル(スキーム・システム・サービス)全体をP2M事業モデル(右図参照)と位置づけ、事業戦略からプロジェクトに至るプロセスを判り易く、事例も含めて提示している。
  • 事業戦略からプログラムマネジメント、プロジェクトマネジメントに至るまで、役割を明確にした整合性のとれた記述とし、事例を含めて分かりやすい解説となっている。
 などです。

P2M事業モデル

 今年度のPMAJの事業運営方針の意図の話しに戻りますが、あえてP2Mガイドブック改訂4版の活用を記述させていただいた意図は、価値共創のプログラム・プロジェクトマネジメントの重要性が高まる現代において、ビジネスの現場で活躍する実務家に対して、その指針として活用していただきたいとの思いからです。
 なお、P2Mガイドブック改訂4版の概要については、PMシンポジウム2024の初日9月5日に、P2M標準ガイドブック改訂委員会 委員長の当麻哲哉教授にご講演をお願いしています。ぜひ、ご参加・ご視聴ください。

ページトップに戻る