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「エンタテイメント論」(194)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :5月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●日本人の英語力は、世界で最低且つアジア諸国でも最低

Global Ranking of Countries and Regions 2023
出典:下表 Education First社の2023年発表)
Global Ranking of Countries and Regions 2023

Global Ranking of Countries and Regions 2023

 日本人の英語力は、世界で87位、国際比較すべき先進国、中進国などの中で世界最低、アジア諸国の中でも最低である。
 EFとはスイスに本社を持つEducation First社のこと。1965年にスウェーデン人のBertil Hultが同社を設立。教育を通じて世界に貢献する事を使命とする世界規模の大企業に発展した。多くの国で言語研究、学術研究、文化交流、語学教育、各種プログラム提供(異文化交流プログラム、言語学習プログラム、留学プログラム)などの事業を展開している。なお同社はEF SET(エフセット)と云うオンラインで各種の情報を無料公開中。

 EPIとはEnglish Proficiency Index(英語能力指標)のこと。同社は世界113カ国の成人を対象とした英語能力の調査を毎年実施し、各国の英語力世界ランキングを公表。

●英語を実用レベルで活用する人は世界総人口の5人に1人
 世界で英語を実用レベルで使用する所謂「英語人口」は約15億人いる。世界総人口は約73億人と推定すると、英語を習得すれば世界中の5人に1人と意思疎通が可能となる。此の英語人口の内、ネイティブ・スピーカーは僅か1/4(25%)の3.8億人だけ。残りの3/4(75%)の11.2億人は第二言語/外国語としての英語を習得した非ネイティブ・スピーカーである。

 第二言語/外国語として英語を使用する人口が英語を母国語とする人口の3倍もいると云う事実から「英語=世界共通語」である事が分る。

 また科学や医学の分野で世界的業績として認められる為に科学論文や医学論文は英語で執筆され、国際的学会発表も英語でなされる。この事実からも英語が世界共通語である事が分る。バイオ・テクノロジー、DXなどの最先端技術分野では最新情報が古い情報を駆逐する。ビジネスに直結する情報は遅れると致命傷を被る。少しでも新しい情報を、一刻も早く収集する為に英語での情報収集は不可欠となっている。

 更に世界トップ層のビジネス・スクールには世界中のエリートとその予備軍が集結する。彼等は日々英語で情報交換を行い、英語で議論を戦わせる。ビジネス・スクールの世界での「知」は英語で集積されており、今後もそうあり続けるだろう。

出典:学会発表
出典:サッカー世界大会
出典:学会発表 & サッカー世界大会 bing.com/images/search=ajaxhist=jaxserp & images.search.yahoo.com/socker+world+game+clipart

 更に更にスポーツの世界でも英語が広く使用されている。オリンピックの公用語は英語とフランス語である。しかしオリンピック集客数の5倍の300億人のテレビ視聴者数を集めるサッカーW杯では、その審判の公式言語は英語のみである。スポーツの世界でも英語人口は増え続ける。

 英語の言語としての世界的地位は、グローバル化による英語人口の増加で今後もっと高まる。なお第二言語/外国語として「中国語」を使用する人口、即ち中国以外の地域で中国人以外の人同士が中国語で意思疎通する事が増えるか? 英語の様になるか? 世界の多くの学者や識者等は、中国語で「知」が集約・集積され、英語並みに増える可能性は殆どないと予想している。

 さて世界で最低且つアジア諸国で最低の日本人の英語力は、今後激変する世界の政治、社会、文化、教育、経済、事業などの多くの分野での日本人の活動を著しく妨げる。そればかりか、其れ等の分野の世界的潮流に乗れなくさせ、日本自体を「蚊帳の外」に置き去りにさせる。由々しき問題である。日本人の英語力向上を個人レベルだけでなく、学校レベル、国家レベルで達成させねば、日本の将来が危うくなる。

●日本人の英語力を向上させる方法は何か?
 日本人の英語力の低さの原因と英語力の向上に関して数多くの学者、評論家、実務家達が様々な観点から論じている。しかし一向に英語力が改善したと云う話は殆ど聞かれない。其れ等の実態を此処で紹介するべきだが紙面の余裕はない。

 しかし筆者は本稿で此の事を取り上げた以上、日本人の英語力が何故低いのか? 如何に向上させる事ができるのか? について何等かの事を述べねばならないと考えた。しかし筆者はその原因と向上を論じるだけの経験知を持っていない。ならばどうするか?

 ついては世の中の原因説と向上説の中から筆者自身の英語力への過去の取り組みと米国NY駐在経験などに照らし、「なるほど!」と合点した両説を選んで紹介する事にした。筆者の身勝手な紹介を許して欲しい。

原因説 その1 英語は日本人にとって超難解言語である。
 米国合衆国国務省(United States Department of State)の米国外交官養成局(FSI: Foreign Service Institute、国務省の外交官育成機関)は、英語を母語とする局員が「習得する為に要する期間」の長さに基づいて「国別の言語習得難易度ランク(Language Learning Difficulty for English Speakers)」を公表した。

「国別の言語習得難易度ランク(Language Learning Difficulty for English Speakers)」

 各国の人が使う言語の難易度はカテゴリ-ⅠからⅤに習得期間に依って分類された。日本語は中国語、韓国語などと共に最難解言語のカテゴリーⅤと評価された。

 この事は何を意味するか? 其れは日本語が英語と最も遠く離れた言語、最も異なる言語であると云うことだ。米国外交官養成局は日本語を習得するに最低2200時間=88週間=2年弱の期間が必要と評価。逆に言えば日本人にとって英語は超難関言語と云うことである。

出典:超難関
出典:超難関
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つづく

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