PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (163) (プロジェクトマネジメントと契約)

向後 忠明 [プロフィール] :5月号

 大規模プログラムまたはマルチプロジェクトの契約及びその組織の代表的なものとして、公共部門と事業体との契約等がある。その契約にはコンソーシアム契約やコンセッション契約そしてPPP(PFI;Project Finance Initiative)などがあります。どちらの場合も事業体間の契約関係であり、プロジェクトの主体が事業体となったとみればよいと思います。
 この方式は国際、国内問わず企業がプロジェクトの大規模化と複雑化を背景にリスク分散、技術の相互補完、資金リソースの多様化及び法的規制への対応等を共同連帯してプロジェクトに取り組む方式です。
 この共同体事業には下記の3種類があります。
1.コンソーシアム方式
 本方式は主に欧州で用いられている分担方式で、構成メンバーは共同して特定プロジェクトを請負、顧客に対して連帯責任を持つ内部関係において各構成メンバー業務をそれぞれ分割し、各構成メンバーは自分の採算と責任において戦略を遂行し、お互いの損益は考えない方式です。

2.ジョイントベンチャー方式
 この方式は米国で多く用いられる方式で、受注したプロジェクトを共同で行うことはコンソーシアム方式と同じです。その共同関係は一個の組織体として行動し、そしてプロジェクトの最終損益は各構成メンバーで分担する。
この共同体方式は、上記方式をさらに構成メンバーの相互関係と顧客に対する責任内容によって下記に示すような4つの形態に大別される。

① 並列型契約
 共同で一緒に仕事をするが、契約上は、顧客と共同体を構成する個々のメンバーが直接顧客と個々の契約を独立して締結し、内部協定によってメンバー間で共同事業またはプロジェクトに関する契約をします。

① 並列型契約
 このケースは各社と個別に契約することになり、プロジェクトが機能別かエリア別に分割されている場合でも相互調整を顧客が行うことになり、顧客側にかなりの労力とマネジメント能力が必要となります。
② メイン―サブ契約
 顧客に対して主契約者は一社となり、その会社がリーダとなり共同事業またはプロジェクトの運営を行います。実質的にはメンバー間でコンソーシアムを結び、内部関係ではメンバー各社が共同連帯責任を持ち業務を行います。
② メイン―サブ契約
 この場合は①のように顧客に各社の相互調整の必要はなく、その代わりにリーダ会社にその責任が生ずることになります。
 よってリーダ会社がこのプロジェクトの全責任とプロジェクトリスクを負うことになります。このケースの場合は若干次のジョイントセベラル方式に似てます。

③ ジョイントセベラル契約
 共同事業体各メンバーが連名で主契約の当事者になり、全メンバーが顧客に対して、メンバーと連帯してまたは個別に(Joint & severally)責任を負う共同連帯方式であり、この形態がコンソーシアムの最も通常使用される形態である。
 ただし、この場合でもリーダとなるメンバーが必要となるので、メンバー間の討議で事業またはプロジェクトの規模を見て決定します。その企業をコンソーシアムリーダと言います。

③ ジョイントセベラル契約
 一般の大規模プロジェクトにおいて、数社の企業がリスク分散を考慮し請負業者で連合を結ぶ場合、この形態の合弁規約を結ぶ場合が多いようです。
 この形態の契約の場合、共同事業体各メンバーが連名の主たる契約の当事者となり、各々の企業が自分の所掌範囲内の仕事のみ責任をもって仕事をします。しかし、連合の1社が何らかの事情で所掌の仕事ができなくなった場合、残っているほかの企業体が脱落した企業の業務所掌分までの責任を連帯で取る仕組みになっています。このことからこの方式を ジョイントセベラル(Joint & severally)言われています。
 このように考えるとやはり全体のリーダとして共同契約とは言え、メインサブ方式でいうような代表企業がいなければなりません。その例は下記に示す第6世代戦闘機開発のジョイントベンチャーのケースのA国企業のような立場になります。
 この合弁契約の内容は請負企業としても、雇用主側から見ても工事の連続性の確保、およびリスクの分散の視点から都合の良い契約形態であり、一般的に合弁契約と称するとこの形態が一番多いです。
 ここでジョイントベンチャーの例として最近ニュースでも騒がれている第6世代戦闘機の開発でのものがあります。
 その組織を見ると以下のような組織でやることになっています。この場合では出費金額割合、技術能力、実績、製造台数等々を考え、JBの代表を各国にて話し合うことになり、共同でそれぞれの技術及びノウハウを出し合い最先端の戦闘機の製造を行うことになっているようです。
 この場合でも開発期間中においてお互い意見の不一致があればJBの契約に従い、連合の1社が何らかの事情で所掌の仕事ができなくなった場合、残っているほかの企業体が脱落した企業の業務所掌分までの責任を連帯で取る仕組みになっています。

それぞれ各社の得意分野の役割
それぞれ各社の得意分野の
役割

 ここまでがプロジェクトの大規模化と複雑化を背景にリスク分散、技術の相互補完、資金リソースの多様化及び法的規制への対応等を企業が共同連帯してプロジェクトに取り組む方式ですが、来月号は各企業があるプロジェクトを受注するにあたって一定割合の出資をして法人格を有する合弁会社または組合を設立し、この組織を主契約の当事者として事業運営またはプロジェクトの実行など行わせる契約について話をします。

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