① 一つは、大規模なプラント建設やインフラプロジェクなどにおいて、顧客要求としてRFP(Request For Proposal)までの要求仕様や技術資料を明確にし、その結果をもって、入札及び評価をして、発注者及び受注者納得の上、受注した企業が一括して契約し、プロジェクト全体を実行し目標を達成するタイプである。この場合でもプロジェクトの規模が大きいため多数のプロジェクトに分割して全体を受注した請負業者が各プロジェクトを統合してマネジメントを行う場合があるが、これをマルチ型のプロジェクトマネジメントと称しています。
② 一方は、全く新しい商品を開発して新市場を作りたい、そして他社を凌駕する仕組みを作りたいといったことに対応するタイプである。既存の競争の激しいレッドオーシャンマーケットから何をすれば競争の激しくない新参のブルーオーシャンマーケットに事業を展開できるかといった戦略的目的から始まり、顧客側も「何をどこからどのように」と事業全体の構想から得られた特定のミッションの生成から始まり、規模により複数のプロジェクトを生成する場合があります。このような事業では顧客自身がRFPを単独で作成することのできるような確定的要件はなく、特に新規事業立ち上げのような場合は上層部から与えられた要請を組織が社会に対して価値を生み出すためのミッション創造から始まることがあります。この事業では、このミッションのプロファイルから始まり、事業全体の枠組みを構想し、その結果いくつかの施策が生まれ、プロジェクト群が生成され、基本計画の立案、そして請負業者選定用のRFP (Request For Proposal)を作成、受注業者を決定し、このプロジェクト群を構成するプログラムの最終的目標を達成させるといったマネジメント活動があり、プログラムマネジメントという。
①は顧客側がこれまでは顧客と請負業者間では競争入札やその後の交渉により契約内容を精査し、請負契約をすることになります。しかし、これまでのこの種の案件では顧客要件が上記で説明した正確なRFPも整備されている場合が多く、日本においての多くのプロジェクトはほとんど上記に示すような一括請負契約の例が多かった。しかし、昨今のシステム開発プロジェクトなどでは不確定な顧客要件が多く、そのためリスクが請負側に生ずることになり、多くの失敗プロジェクトを生んだといったことが情報通信関係の書物で報告されていました。
いずれにしても顧客側の求める要件が不正確である場合は顧客側のRFP作成までの作業が未熟であれば、顧客要件が不明確ということになりプロジェクトの大小にかかわらず、実行段階において多くのリスクを生み、失敗プロジェクトを多く生み出すことになります。そのためには、上記②で述べたように顧客側も案件が大きくても小さくても案件に含まれる課題解決型ソリューションにかかわるミッションをプロファイルし、事業全体の枠組みを構想し、その結果生成されたプロジェクトの基本計画の立案、そしてRFP (Request For Proposal)を作成し、顧客要件を明確にする必要があります。
なお、上記のような顧客要件の確定までの作業経験がない場合は、自社内またはこの種の専門コンサルを委任契約にて雇用し、このコンサルともにRFPを作成し、競争入札を通して発注することができます。なお、この時の専門コンサルは実プロジェクトの実務経験のあるプロジェクトマネジャが良いと思います。
なお、いずれの場合もプロジェクト規模が大きくなった場合、一社の請負業者では荷の重いプロジェクトの場合は機能別またはエリア別にいくつかのプロジェクトに分割し、請負業者に対して分割発注することもあります。
この場合はマルチプロジェクトとなり全体を統合したマネジメントにはリスクが多く、また請負業者にも不得意分野もあることから請負業者間で話し合いを行い、数社にて連合を組んで応札し、受注するいわゆる共同事業体契約の形で請負契約を結ぶこともあります。この契約形態には状況によっては幾種類もの形態があるが次月号の宿題とします。
②は投資型事業、大規模インフラ事業そして各種課題解決型ソリューション事業など顧客側にとって経験のない業務で技術的知見も不足し、RFPもまとめることのできないような場合、すなわち、上記ですでに説明した顧客上層部からのミッションプロファイリングや基本設計のプロセスを含むスキームプロセスを経て、新規事業の全体枠組みの構想や基本計画の立案、そしてその結果生成された事業の全体枠組みにかかわるRFP作成と発注先選定に至るまでの作業(この作業をP2Mではスキームモデルという)を顧客又はコンサルと共に実行し、プログラムを構成する各プロジェクトの目的達成とそれを統合したプログラム最終目標までのマネジメントを使命とする上記の②で説明したプログラムマネジメントというものがあります。
このプログラムマネジメントは多くの目的を持ったプロジェクト群を束ねて一つのプログラムを構成する大規模インフラ事業や新規投資事業、大規模システム開発において最適なマネジメント手法です。