理事長コーナー
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パーパス経営

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :4月号

 ちょうど4年前の2020年4月のこのコーナーで紹介したのですが、私はある会社の異業種交流会の幹事をしていたことがあります。現在でも、その交流会が一年間の研究テーマを設定し、研究メンバーを募って活動する分科会の立ち上げの際に、プロジェクト型学習(PBL)のワークショップの講師を、継続して担当しています。今年も3月初めに実施させていただいたのですが、その際に強調したのは、「目的を明確にして進めること」でした。
 私は、様々な団体の審査委員等を経験したことがあり、多くの報告書や論文の審査を経験してきました。この「目的を明確にする」というのは、多くの報告書や論文を審査する際に、非常に強く感じた評価のポイントになります。例えば活動の報告書の場合、活動の目的が明確に記述されており、それを達成するためのゴールが具体的に設定され、それを達成する方法が論理的に組み立てられており、結果としてゴールを達成できたことを自ら提示した基準と照らし合わせて記述されている報告書は、非常に読みやすく、また評価も高かったと記憶しています。
 最近、「パーパス経営」という言葉をよく耳にしますが、経営においても、目的が明確で、そのためにどんな成果を目指しているのかが明確になっていれば、従業員も自ら取り組むべき方向が明確となり、一体となって活躍することが出来ますし、目的達成意欲も高くなるので、会社としてのパフォーマンスも高くなると思います。

 そんなことを意識していたからというわけではないのですが、先日、たまたま「THE PURPOSE Vol.2 何のために存在し、どんな価値を提供するのか」(LISTEN編集部著)という本を手にする機会がありました。30の組織の経営者のインタビューをまとめた本ですが、昨年、Vol.1を発刊したところ、続編を求める声が多くVol.2を発刊することになったとのことでした。
 この本の中では、「ミッション・ビジョン・バリューを含めた企業経営における「信念」「志」、企業の社会との関わり方、世の中への価値提供を「パーパス」と位置づけ」て、多くの経営者のこれまでの歩みをインタビュー記事にまとめて紹介しています。
 読んでみると、確かにどの創業者のインタビューでも、社会への貢献を強く意識して事業を立ち上げ、その志をブレることなく持ち続けていることが語られていて、「多くのステークホルダーを巻き込んで、永続的な成長・発展を続けるには、大局的で不動の“志”がなくてはなりません。『社会とのつながり』『社会への価値提供』を宣言するパーパスは時代の要請なのです。」(同書p5)という言葉が素直に納得される本だと感じました。
 このことは、P2Mの基本的な方向性、「企業などの組織は、顧客が望む新しい価値を発見すること、そしてその価値を社会に広く提供するための「仕組み」を他に先駆けて作り上げることが要求される。(中略)本書では、価値創造や変革などの複雑な現代的課題の解決にP2Mを活用するための知識を体系的に解説している。」(改訂第3版の初めにより引用)と方向性を一にするものだと思います。
 「THE PURPOSE」という本に紹介された事例だけではなく、多くのパーパス経営として取り上げられる事例は、意識されているか否かに関わらず、P2M体系、プログラムマネジメントの実践事例になるのではないかと強く感じています。
 今後のPMAJの様々なイベントにおいて、「パーパス経営」に関する事例も、幅広く皆様に提供し、プログラムマネジメントの普及につなげて行きたいと考えています。
 このような活動にご興味をお持ちの方は、ぜひPMAJまでご連絡ください。お待ちしております。

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