PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(192)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :3月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●主要国で最低の日本の時間当たりの労働生産性
 標記の問題は本稿187号で論じた。日本の労働生産性はOECD加盟38カ国で29位、先進国の中で最低である(OECD 2021調査)。

 米国の社会学者で日本と中国を中心に東アジア諸国の社会、経済等を研究したエズラ・ファイヴェル・ヴォーゲル(Ezra Feivel Vogel、1930年~2020年)は、1976年、「Japan as Number 1」の本を著した。世界的なベストセラーとなった。

出典:エズラ・ファイヴェル・ヴォーゲル
出典:Japan as Number 1
出典:エズラ・ファイヴェル・ヴォーゲル & Japan as Number 1
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 彼の事を知っている現在の若い日本人は多くないだろう。一方彼の事を知っている中高年の日本人は多いだろう。しかし彼等の多くは、彼が「日本は経済、産業、事業の分野で世界一である(Japan is Number 1)」と主張したと誤解している様である。彼はそんな主張はしていない。

 彼は日本が世界一である事を世界中の誰しも認め、疑う余地がないと云う前提に立ち、「世界一の日本として(Japan as Number 1)」の日本は、世界に何を貢献すべきか? 一方世界は日本から何を学ぶべきか?を論じたのである。

 現在の多くの日本人は、日本が過去30年間で冴えない、元気がない、情けない国に変貌した事を嘆いている。しかし筆者を含め我々は、①今こそ、日本は世界一と評価された事実を思い起こす事、②日本は今も世界に何を貢献するべきか? 一方日本は世界から何を学ぶべきか? を考え、行動する事、③更にこれ等の事を他人事でなく、自分事として考え、日本再生の為に自分として出来る事を断行(決断&実行)する事であろう。その断行の1つが「生産性向上」である。

出典 世界一を目指せ
出典 世界一を目指せ
出典 世界一を目指せ
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 なお日本が「世界一の日本」に返り咲くには、数多くの事を断行せねばならない。この事を筆者なりに本稿で論じてみたい。しかし「エンタテイメント論」の中で論じる紙面の余裕はない。ついては今後、本論を解説する過程で必要な都度、論じる事とさせて欲しい。

●生産性とは? 時間当たりの労働生産性とは?
 「生産性」とは何か? 其れはインプットの量とアウトプットの量との割り合いを云う。従って「時間当たりの労働生産性」とは、或る一定の時間の従業員の働きの量と其れが生み出す生産物の量又は付加価値の量の割合を云う。此れは経済学や労働経済学等での重要な概念であり、国や企業等の活動の効率性や国の経済の成長性を評価する指標となる。

出典:生産性とは
出典:生産性とは
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 時間当たりの労働生産性の具体例として、
  1. 1 製造業の或る工場の場合、其処の従業員が1時間当たり製造する製品の数量を向上させた時、時間当たりの労働生産性が上昇したと評価される。
  2. 2 サービス業の或る現場の場合、顧客サービスの従業員が1時間当たり顧客サポートを提供する数を増やし、顧客満足度を上げた時、時間当たりの労働生産性が向上したと評価される。
  3. 3 農業の或る耕作現場の場合、農業従事者が新しい技術と効率的農業機器を導入して1時間当たり収穫量を増加させた時、時間当たりの労働生産性が向上したと評価される。
  4. 4 企業の管理部門の現場の場合、知識労働者が新しい管理制度を構築し、活用する事で、またソフトウェア担当者が新しい管理ソフトを開発し、活用した事で、1時間当たり複雑・高機能な仕事ができる様にさせた時、時間当たりの労働生産性が向上したと評価される。

●世の中で推奨されている生産性向上を成功させる為の「在り方」と「やり方」
 生産性向上を成功させる「在り方」や「やり方」は、多くの専門書、論文、実践記録などで数多く紹介されている。それ等の中のほんの僅かな例を以下に記した。詳しくは生産性向上に関する専門書、論文などを参考にして欲しい。更に生産性向上に関する研修会、セミナー、現場実戦訓練などに参加し、その成功を是非遂げて欲しい。

 そもそも「在り方」と「やり方」とは何の事か? 前者は或る物事を実現させ、成功させる為の「基本的考え方」を、後者は在り方に基づいた「具体的な方法論」を夫々意味すると云われている。また両者の関係とは? 「氷山」に例えれば、見えない水面下で存在する氷山が「在り方」で、此のの氷山に支えられ、水面上に浮かび上がり、目に見える氷山が「やり方」と云われている。

出典:在り方とやり方
出典:在り方とやり方
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 世の中で薦められている生産性向上の「在り方」とは、①当該企業のトップが生産性向上を経営目標に設定する事、②此の目標を社員の行動計画に落とし込む事、③落とし込まれた行動計画を実践する行動 チーム全員が此の目標を自分自身の目標に落とし込む事、④当該トップは此の行動チームのモチベーションを高めるために報酬制度、インセンティブ制度などを導入する事、⑤当該トップは行動チームが行動計画の実践に依って事業成果を生み出した時は、適時、適切に報いる事などを云う。

 世の中で薦められている生産性向上の「やり方」とは、①チーム内のコミュニケーションの効率化➡プロジェクトに関する議論や情報の共有の迅速化や効果化、社内IT環境の整備、DXの実践、ビジネス・チャットツールの活用など、②社員スキル向上➡中堅社員教育や新入社員教育、定期的な現場実践トレーニング、ワークショップの実施など、③PMの様な管理ツールの導入と活用➡プロジェクト進捗状況の把握、メンバーの役割と行動のリアルタイム把握など、④タイムマネジメント技術の導入➡時間管理技術の導入に依る集中力の強化と効率的作業化など、⑤自動化ツールの導入➡重複作業やルーチンワークをロボットで自動化、タスクの自動割り当、データ入力の自動化など、⑥リモートワークの柔軟的活用➡リモートワークの柔軟性を取り入れ、自己ペースでの業務推進、ワークライフバランスの向上などを云う。

●筆者が薦める生産性向上だけでなく、「夢(物事)」を成功させる為の「在り方」と「やり方」
 筆者は、世の中が薦める上記の「在り方」と「やり方」とは一線を画した独特の「或る事」を主張し、実践し、失敗もしたが、成功もした。と同時に多くの人に此の「或る事」を薦め、実践して貰い、失敗もあったが、多くの成功も遂げて貰った。

 「或る事」とは、本稿で何度も紹介してきた「夢工学」が説く生産性向上だけでなく、「夢(好きな事、目的等の全ての物事)」を成功させる為の「在り方(基本的考え方)」と「具体的な方法論」を云う。此の事については本稿の読者は既に知っている。しかし本稿を初めて読む読者もいると考え、以下に概説したい。

●夢工学の誕生
 筆者は個人的な興味と関心から事業プロジェクトの成功と失敗に関する所謂「成否研究」を長年続けた。この研究過程で極めてシンプルな結論を突きとめた。それは失敗に挫けず、「夢」を持ち続け、挑戦した人物こそが「夢」を成功させたと云う「夢」の存否が成否を決定付ける事だった。まさに「夢の発見(1985年)」であった。しかし此の事を「当たり前」と思う人物は、必ずと言って良いほど「夢・成功一貫達成」を成し遂げた人物でない事も突きとめた。

 筆者は「夢の発見」を基に、PM(プロジェクト・マネージメント)に「2つの工程(★)」を前後に付加する事に依って「総合プロジェクト・エンジニアリング(Total Project Engineering)」を構築した。筆者の友人の某有名建築家が此の工学に「夢工学(The Dream Engineering)」と命名してくれた。本稿の紙面制約から詳しい事は、夢工学の専門書を参照して欲しい。

 ★1つはPM工程の開始前に、「夢」から始まる「前工程」を付加した事、2つはPM工程の終了後に完成した事業基盤での事業運営と事業安定化の「後工程」を付加した事である。なお「この様な工学は世界に存在しない」ことを中国教育部(日本の文科省に相当)が調査し、証明した。その結果、同部は筆者に「文教専家(中国の近代化に貢献する専門家)」の称号と資格を付与した。その結果、筆者を同部に推薦した中国政法大学(北京)は筆者を客座教授に任命(現在着任中)。

●絶対不可欠な成功根源3要因
 筆者は夢工学の構築後も、成否研究を続けた。特に力を入れた研究は、人、物、金、技などが如何に潤沢に存在しても、「此れ」が無いと物事は絶対に実現も、成功もしない「此れ」とは何か? を明らかにする事だった。まさに「絶対不可欠な成功根源要因」の探索であった。

 探索過程で成功要因となりそうな数多くの情報を収集し、選択し、何度も何度も濾過させた。苦心惨惜の末、これ以上濾過できない最後に残った要因を抽出した。それは予想に反して極めてシンブルなものだった。驚いた事に3要因のどれか一つが不足又は欠落すると「成功」しないと云う「絶対的・成功根源3要因方程式」が自然に纏まったのである。

出典:成功
出典:夢
×
出典:発想
×
出典:発汗
 成功根源3要因   =  本物の夢    × 優れた発想  × 優れた発汗
出典:成功、夢、発想、発汗
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yahoo.com/search/i+have+dream+clipart&fr=click
yahoo.com/search/i+get+idea+clipart&fr=jpg&action=click
yahoo.com/search/effort-difficult-working-labour=click

 成功根源3要因の概要
  1. 1 「夢」への情熱が「恋人」への情熱と同じ様に抱く「本物の夢」を持つ人物は、例外なく「夢」の実現と成功に全身全霊で挑戦する。
  2. 2 本物の夢を持つ人物は、必死に又は楽しく、自立的、自発的、自律的に次々と多くの発想(アイデア、問題解決策など)をする。そして遅かれ早かれ、本人自身が納得する「優れた発想」をする。
  3. 3 優れた発想をした人物は、その発想を実現させ、成功させる為に「汗と涙と血」を流す事を厭わず、喜んで流す「優れた発汗(行動)」を例外なく行う。
  4. 4 以上の事をしてきた人物は、当然の帰結として、「夢」を実現させ、成功させる。
  5. 5 夢工学は以上の事象に「絶対不可欠な成功根源3要因」と命名した。
  6. 6 夢工学は成功根源3要因論を「生産性向上」だけでなく、経営・事業分野、私生活などの分野で活用し、「夢」を叶える事を強く薦める。

 なお成功根源3要因の「優れた発想」と「優れた発汗」は、トーマス・エジソンの有名な天才説の「1%の Inspiration(発想)」と「99%のPerspiration(発汗)」と酷似する。しかし筆者は彼の天才説からヒントを得た訳ではない。「本物の夢」を持った人物は、必ず「優れた発想」と「優れた発汗」をする事からヒントを得たのである。また此の天才説には「本物の夢」の存在論は存在しない。
つづく

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