理事長コーナー
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地方創生とプログラムマネジメント

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :2月号

 「パンデミックはその時代に起こりつつあった変化を劇的に加速する。」と言われています。2019年に発症したCOVID-19によるパンデミックは、言うまでもなく世の中のオンライン化を劇的に加速しました。
 PMAJが実施しているイベントもこの3年間でほぼすべてがオンライン開催へと移行しました。ただ、それは単に開催形式が会場参加型からオンライン参加型になったというだけではなく、より大きな質の変化をもたらしているように思います。
 PMAJでは、毎年10回程度の講演会を実施しています。規模が大きいのは江戸川区のタワーホール船堀で9月に実施するPMシンポジウム、11月の産学官連携PMセミナーと1月の新春PMセミナーになります。
 それ以外に、全国7か所(北海道、東北、関西、中部、中四国、九州、沖縄)で、地域PMセミナーを実施していますが、実は、オンライン化で大きく変化したというのは、各地域PMセミナーの役割になります。
 従来、各地域のPMセミナーは、各地域のPM実務者の自己研鑽の場と位置付けられていました。したがって、その内容も、PMシンポジウムの講演の紹介などを中心に行われていました。ところが、オンライン化により出張することなくPMシンポジウムなどに参加可能となったことから、地域PMセミナーは、地域の特色のあるPM実践事例の紹介など、地域の情報発信の場へと、大きくその性格を変えてきました。
 一方で、プロジェクトマネジメントに対する期待も、最近では大きく変わってきています。従来のように決められた成果物を、決められた期間、予算で計画通りに完成させるという統制型のマネジメントから、多様な組織の価値観のバランスを取り、関連するプロジェクトの成果を組み合わせ、新しい価値を共に作り上げるという価値共創型のマネジメントの要素が強くなってきています。
 このようなマネジメントが最も必要とされるのが、地方創生のプロジェクトです。消滅可能性都市が約50%といわれる日本の状況を解決するためには、行政だけでなく、住民、生産者、NPOなどによる価値共創の取り組みが必要となります。そして、その取り組みを、日本全体で共有し、価値共創のバリューチェーンを全国に広げる仕組みが必要となります。
 PMAJの論理的基盤であるP2M標準ガイドブックの初版は、日本が「失われた20年」の真っただ中にいた2001年に発行されました。その冒頭に「今後、日本企業は『ものづくり』中心の発想から転換して『仕組みづくり』による再生に注力しなければならない。」と、企業に対して価値共創型マネジメント、言い換えればプログラムマネジメントを取り入れた経営への道筋を提示していますが、今はそれを日本全体に広げて行く必要があるのではないでしょうか。
 PMAJは、時代の変曲点にあたり、いち早くその変化への対応へ道筋をしめした先達の理念を引き継いで行きたいと思っています。具体的には、各地域で起こっている地方創生に関するプログラムマネジメントの取り組みを、日本全体で共有し、価値共創のバリューチェーンを全国に広げる仕組みづくりに貢献して行きたいと思っています。
 その具体的な取り組みとして、各地域のPMセミナーの中で、できるだけ多くの地方創生の取り組み事例を、実践した方々の生の声で全国に発信して行きたいと思っています。
 2月16日(金)に、沖縄PMセミナー2024を開催します。
 テーマは『 沖縄からの発信! 産業変革への挑戦 』です。
 ぜひ、ご参加ください。
 各地域の地方創生の取り組みを共有し、価値共創のバリューチェーンを全国に広げ、日本を元気にしていきましょう!!

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