関西例会部会
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第164回関西例会 報告

PMAJ関西KP/幹事 守能 昇治 : 2月号

開催日時: 2024年1月19日(金) 19:00~20:30 (懇親会~21:00)
開催場所: オンライン開催
テーマ: 「初心者向けのPM研修の経緯と実践~PM普及の観点から~」
スピーカー: 石橋 伸介 氏 エス・アイ・コンサルティング シニアコンサルタント
        PMAJ中四国PM研究部会 代表

1. なぜ初心者向けPM研修を行うことになったのか?
 昨今、「PMにはなりたくない」という話を聞いた。仕事は困難化しているなか、若者の考え方は時代とともに変わっているので、マネジメントも変えていかなくてはならないと考えた。そこで、「もっとPMを多岐に利用してはどうか」と中四国PM研究部会で考えたのが、初心者向けPM研修を行うことになった背景である。
 初心者向けPM研修を企画するにあたり、全くプロジェクトに縁のない人も、新入社員でも経営者クラスまで幅広く受講できる内容を1日目の講義として考えた。PMAJの書籍「よりよくわかるプロジェクトマネジメント」を題材として利用することにした。そして、2日目は、少人数でのワークショップで問題を共有・解決する内容とした。

2. 初心者向けPM研修1日目説明
1) 概要

 初心者向けPM研修は、プロジェクトマネジメントを使って、身近な課題を解決できる方法を、「家族の家づくり」をサンプルにして勉強できる内容である。研修の目標は、「プロジェクトマネジメントとは何をすることなのか?」、「やりたいことを成功させるための計画や実行はどうしたらいいのだろうか?」といったことを解決することと設定した。そして、「プロジェクトマネジメントの範囲は広く、奥深い学問なので、この研修だけではすべてを知ることはできないが、まずは全体を俯瞰するのが重要である」と、注意点として説明された。

2) 「計画/実行」の部
 研修は2部構成で、まずは「計画/実行」、そして「構想/企画」の順で、「計画/実行」の部の構成は 次の通りである。
  1. ■ 「計画/実行」の部の構成
    1.目標・目的の確認 2.チームづくり 3.作業洗い出しと整理 4.スケジュール作成
    5.予算の計画 6.範囲の絞り込み 7.利害関係者の確認 8.リスク対策計画
    9.計画まとめ/承認 10.キックオフ 11.進捗管理 12.課題対応 13.変更管理
    14.リスク対応 15.最終検査/クローズ

 「家族の家づくり」を事例にしていて、次のような設定である。
 「夫婦2人と子ども2人の4人家族で3LDKのマンションに暮らしているが、夫の母が高齢で将来の介護にも備え、家族5人で新しい家を建てて住むことにした。」
 この事例でもって、上記のプロセスを具体的に説明された。初心者向けということを意識され、「プロジェクトマネジメントの用語はできるだけ使用しないという方針を基本としたが、知っていただくということで、一部、例えばWBSなどは使用した」と語られた。
 最後の「最終検査/クローズ」の段階では、最終検査はNGという結果のストーリーであった。そこで、NGの理由を分析して、「仕様確認・変更管理・連絡体制がおろそかであり、明らかにプロジェクトマネジメントの問題である」という結論を導いていた。そして、「構想/企画」段階のプロセスが重要である」として、次の「構想/企画」の部に移られた。

3) 「構想/企画」の部
 「構想/企画」の部の構成は次の通りである。
  1. ■ 「構想/企画」の部の構成
    16.構想を描き、明確に 17.目的、要望の確認 18.整理分析し、総合的判断
    19.工程の段階分け 20.大まかな予算を見積もる 21.範囲と成果
    22.大まかなスケジュール 23.調達仕様とチーム決め

 ポイントとしては、次の2つを語られた。 第一は、「最初から詳細に企画するのではなく、段階的に詳細化していくことが重要なこと」である。第二は、「実現するためには必ず制約があり、プロジェクトマネジメントで解決するという理解が、すべての関係者にあることが必要なこと」である。

4) プロジェクトマネジメントについて まとめ
 目的と目標の関係、プログラムマネジメントの用語確認をされたあと「私たちが考えるプロジェクトマネジメント」として以下のように示された。  目的の実現にむけ、
  1. ① 目標を明確に定め、
  2. ② チームを円滑に動かし、
  3. ③ 成果を実現するための計画をたて、
  4. ④ 利害関係者の要望を聞き取り、
  5. ⑤ 各種制約(ヒト、モノ、カネ、時間、品質)の関係を整理し、
  6. ⑥ それらの状況をチームメンバーに「見える化」し、
  7. ⑦ リスク対策を計画し、
  8. ⑧ あらゆる局面で発生する課題に対応し、合理的に意思決定していく。
 これにより、目標を順次達成していき、最終的に目的を実現するための手法がプロジェクトマネジメントである。

3. 中四国PM研究部会の活動
 中四国PM研究部会は、2013年に3代目世話人になり、2016年にPM部会地域活動の活性化の提案に始まり、活発化してきた。初心者向けPM研修に至るまでも、県・大学・団体を対象にした魅力発信プロジェクトや、農園の支援・廃校活用・子どもへのプログラミング教育なども行ってきた。
 初心者向けPM研修の2日目のワークショップは、参加者の困りごと解決にPMを使ってみようを目的に、セッション1では問題点の洗い出し、セッション2では問題の解決策の検討を行った。参加者7名で、会社員・保育士・大学生など多様なメンバーであった。アンケートでは、分かりやすさや今後の活用で高評価であり、今後改善につながる意見や今後参加したいと思う企画アイデアをいただいたとのことである。
 最後に、研究会活動の実績や現メンバー10名のプロフィールについて紹介があった。

4. 私たちは何と戦っているのか?
 人口統計から、世の中は大きく変化している。出生児数は1.94人(2015年)と減少し、大事に育てられたので、若者は優しく、大人しいが、芯があり、しっかりしている。学歴においては、大学進学率が63.9%(2019年)と増加し、幅広い知識を持ち、若者の意識は、単能工から多能工へ、高賃金からやり甲斐重視へ、終身雇用から転職価値へと変化している。
 1990年代半ばから2010年代序盤に生まれたZ世代は、デジタルネイティブ、SNSネイティブとも呼ばれ、タイムパフォーマンス重視の効率主義、強い仲間志向、仕事よりプライベート重視、多様性を重んじるなど、団塊の世代や団塊ジュニアとは価値観が全く異なっている。
 最後は、「自分の勉強のためでなく、もっと若い人にPMの良さを訴えましょう」と結ばれた。

感想
 まずは、PMAJの書籍「よりよくわかるプロジェクトマネジメント」を題材に、PM初心者を対象として、オンラインで研修とワークショップをやり遂げたことに敬意を表したい。
 石橋代表は、PMはあらゆる問題解決に活用できる、ライフスキルであることを前提に、PMを知らない人、特に若手にぜひPMを普及していきたいということを語られ、講演全体を通じて、強い情熱を感じた。また、その思いを実現するために、石橋代表自身がPMを使って研究会をうまく運営されているとも感じた。
 私も関西のKPとして、中四国PM研究部会の活動を参考に、PMの普及に貢献したいという想いが高まった。石橋代表を始め、10人のメンバーの方、ありがとうございました。

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