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英語力向上にAIを活用する力

井上 多恵子 [プロフィール] :2月号

 私が本格的に英語指導を始めたのは、2023年4月。生成AIが存在している時代に、本格的に英語指導を始めたのは、大正解だった。生成AIのおかげで、個人で指導している私でも、学習者のニーズにあった実践的な教材を複数作成することができている。そして、私の「英語力向上にAIを活用する力」は、2024年1月20日に発売された週刊東洋経済の特集記事「タイパ時代の英語活用術」のおかげで、一段階上がった。今回は、皆さんの「英語力向上にAIを活用する力」の向上に寄与すべく、私が学んだことを紹介したい。
 東洋経済の特集では、私へのインタビューをもとに記者が執筆した記事も、掲載されている。2022年秋に出版した私の本の内容を参照しており、「AI誤訳を激変させる日本語文章テクニック」という見出しがついている。記事には、曖昧な日本語の書き方から、明確な書き方にリスキリングすることが必要と記載されている。
 ITに苦手意識があり、かつ、面倒そうに思えることは敬遠したい私は、役に立ちそうな記事を見つけても、通常は斜め読みをするだけだ。しかし今回は、特集にあった他の記事に書かれていることを一つひとつ丁寧に自分でやってみた。英語指導力をあげることで、私が教えている人たちの成長をできる限り支援したいという動機があったからだ。やったことで、記事に書かれていること以上の学びを得ることができた。

  1.英語のレベルと、文章の長さを指定した英文の作成
 英語のレベルと、文章の長さを指定してプロンプト(指示のための文章)を書くと良いということを今回知った。以前は、長さは指定せず、「できるだけ簡単な表現を使って」という曖昧な依頼を書いて、作成された文を直していた。
 レベルと長さを含めて指示するとどんな形の回答がかえってくるか、例を見てみよう。
例1.  
  プロンプト :
「グローバルに交渉する際に大事な点を優先順序の高い方から3つ、CEFR B2 レベルの英文で、200ワード程度で書いてください。」

ここからは、プロンプトではなく、皆様への解説 :
「CEFR(セファール)」は、国際的な英語力のものさしで、ヨーロッパ圏を中心に世界中で活用されている。B2 レベルは、「中上級レベル」と説明されており、理解度については、「自分の専門分野である技術的な議論も含め、抽象的または具体的な話題で、複雑な文章を理解できる。」となっている。TOEICスコアとの対比も入手できる。
Chat GPTは海外発のため、海外でより広く使われているCEFRを適用したほうが、より質が高い結果になるということなのだろう。
回答 :
論理的にわかりやすく伝わる形で回答がなされていた。具体的には、優先度が高い点として、効果的なコミュニケーション、文化に対する感受性と適応力の3点をあげ、論理的に説明していた。イントロ、それぞれについての説明、そして最後に、要約とこれら3つの点に留意することでポジティブな関係と双方にとってプラスの結果を得ることができるとなっていた。一般的に日本人が英語でコミュニケーションをする際にぶつかる壁の一つが、論理的に伝えることだ。その点から言うと、ChatGPTの回答を参考にして文章を書くと、効果的だ。

  2.英文訂正と解説
自分が書いた英文が文法的に適切なのかどうかを調べる際、以前は、Googleで確認したい箇所を”collaborate with”などと入れて、それを含んだ例文がインターネット上にあるか否かで判断していた。” “を入れることで、塊としてGoogleが認識してくれること、全文を入れると例文が見つからない可能性があることが理由だ。なかなか例文が見つからうず、検索ワードを変えてみたりすることもあった。ChatGPTを使うことで、そのわずらわしさから解放される。
例2.  
  プロンプト :
間違いを指摘して、良い言い方があれば提案してください。  I want listen music.
回答 :
訂正と改善提案 :
"I want listen music."
→ "I want to listen to music."
または
"I would like to listen to some music."
文の中で「to」が必要で、「I want to listen to music.」が正しい表現です。
例3.  
  文法的な解説をもらうべく、追加で聞いてみた。
プロンプト :
なぜ「to」が必要か、教えてください
回答 :
「to」が必要なのは、動詞 "listen" の後に直接名詞が続くことはできないためです。英語では、動詞の後に名詞が続く場合、通常は "to" が必要です。これは、特に特定の動詞に関連しています。

例えば、「listen」の後には「to」が来ることが慣習的です。正しい形は、「I want to listen to music.」となります。このように「to」を挿入することで、動詞と直接続く名詞の関係が明確になります。

 ChatGPTは何度聞いても、いつでも回答してくれるので、どんどん試してみるのがいいという。しかも、回答が瞬時にかえってくるので、超便利だ。日本語でプロンプトを書くと、英語で書くのと比べてやや遅くなるように感じるが、それでも、早い。また、基礎的な英語の学習用であれば、2021年9月までの情報を参考にしているという無料版で十分だと思う。皆さんもまだ使ったことがなければ、一度使ってみませんか。

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