『第289回例会』報告
木村 勝 : 1月号
【データ】
開催日: |
2023年11月24日(金) |
テーマ: |
「プロジェクトマネジメント視点での 『仕事と暮らしを結ぶ情報学』」
~自らを生かし、組織を活かす~ |
講師: |
温泉人(おふろうど)コミュニティー
鈴木 和夫 氏 |
♦ はじめに
人生には、結婚、出産、子育て、介護、病気、失業などの様々な転機が訪れます。転機とは、人生の中で大きな変化が起こる出来事のことです。これらは意図しないタイミングで訪れることもあり、キャリアに大きな影響を及ぼします。皆さまの中にも、思いもよらない転機によって不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の例会では、IT企業でインターナル・コンサルタントとして第一線で活躍し、インターネットサービスの普及をリードしてきた経験を持ちながら、自らが体験した「こころの痛み」を機に、「自分らしい生き方」を軸にしたカウンセリングセミナーや、再就職支援などに努められている鈴木和夫氏を講師にお招きし、プロジェクトマネジメント視点で「自分らしく生きながら、キャリアをデザインしていく」について、体験談や実践事例などを交えながらご説明いただきました。以下、要点を抜粋して紹介します。
♦ 講演内容
● 本日の講演への想い
仕事と暮らしの両面で、自らが主体的に生きられると実感するためには、イノベーション(革新)を起こせるスキルを身に着けることが大切です。
これまでの人生で、①コンサルタントとしての改善プロジェクト推進、②再就職先の早期決定支援、③キャリアデザインを軸に、3つの場面での仕事と暮らしの両面での人生プロジェクト支援に携わってきました。
それぞれの場面で、どのようにプロジェクトマネジメントの視点を適用してきたのかを、自らの体験事例と共にお伝えすることで、皆さま自身の仕事と暮らしの気付きになれば幸いです。
1. コンサルタントとしての改善プロジェクト推進
大学を卒業後、東京のIT企業に入社し、インターナル・コンサルタントとして企画・開発・設計・生産・サービス分野での改善プロジェクト活動に携わり、様々な問題解決を実践してきた。
問題解決を実践してきたことで、ファシリテーター・進行役としてのスキルが身についたが、その後のキャリアデザインへ活きることにもなった。
ちなみに、プロジェクトマネージャーには、「場のデザイン」、「対人関係」、「構造化」、「合意形成」という四つのファシリテーションのスキルが必要と考えている。
49歳の時、午後の会議への不安を感じ、そのまま会社の保健室へ駆け込んだ後、職場を退職することになった。
この時に「こころの痛み」を体験したことが、「自分らしさ」を軸にした生き方へ転換する切っ掛けとなった。
2. 再就職先の早期決定支援
再就職先を支援する仕事に就き、多くの方を支援してきた。
大半の方は、突然のことで自信を失い、相手に自分を合わせてしまったり、相手を気にしてしまったりするなどし、自分を見失っていた。
そういう状況のためか、中々、再就職先も決まらずにいた。
そこで、「自身の経験・人柄・価値観を見つめなおす=資源」ことで自己肯定感を高めてもらった後、「自分の今後の生き方に合った方向性=目標」を見定めてもらうことにした。
その結果、「自身の強みをキャリアで表現」でき、「自分の方向性に合った会社」を見つけ、「自分の想い・強み」とともに面接に臨むことで、再就職先の早期決定に至ることに繋がった。
これは、資源を活用し、目標を達成させるというプロジェクトマネジメントの考え方に通ずるものがあると考えている。
3. キャリアデザインを軸に、仕事と暮らしの両面での人生プロジェクト支援
真の問題とは、「現存するしくみ・しかけ」と「変化する時代に合ったしくみ・しかけ」とのギャップにある。
キャリアデザインのコンセプトも同じで「X(キャリアビジョン)」と「Y(現状)」とのギャップ=Z(キャリア戦略)である。
ちなみに、キャリアビジョンは、演繹法で考える「あるべき姿」か、帰納法で考える「現在の延長の姿」がある。
ミドルエイジ(30~50歳)こそ、今後キャリアデザインを考え、方向性を決める絶好のタイミングと言える。
4. プロジェクトを成功に導くために、知っておくと便利
ミドルエイジ(30~50歳)には、歳を重ねたからこその強みがある。
それは、「人に関わる」能力で、コミュニケーションや、チームワークなどで発揮される。
アージリスの成長概念も参考になる。
組織の中で問題になるのは、能力(アビリティ)ではなく、能力(コンピテンス)=問題を解決しうる能力のことである。
問題の本質をどれだけよく知っているかによって、解決方法が変わるはずだから。
いまいちど、手段が目的になっていないかと考えてみるのも良い。
また、人間関係を良好にするためにも、プラスのストロークで考え、行動し、「どんな自分も許せる」、「どんな相手でも許せる」を実践してみるのも良い。
5. エピローグ
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提案する「個人のキャリアの8割は、予想しない偶発的なことによって決定される。その偶発を計画的に設計し、自分のキャリアを良いものにしていこうとする考え方。が参考になる。
“計画された偶発性”を起こす行動特性
- 1. 好奇心
- 2. 持続性
- 3. 柔軟性
- 4. 楽観性
- 5. 冒険心
心が変われば、態度が変わっていき、それが習慣となり、人格が形成され、よい人生となる。
♦ 講演を聞き終えて
今回の講演では、講師の鈴木和夫氏の体験談、実践実例をもとにした貴重なヒントをいただけました。
様々なことが切っ掛けで訪れる人生の転機に対し、自分らしく生きるための考え方は、今後の自分の人生に役立つものとなりました。
私自身、これまでの自分であればやらなかったであろうことにチャレンジしたことで、例会のメンバーに参画し、さらには鈴木和夫氏の貴重なお話しをお聞きできたことは、まさに「計画された偶発性」の産物だと感じました。
例会を通じて、貴重なお話しをしていただけたことに、心より感謝を申し上げます。
当日参加された皆さま、何かヒントになることはありましたか。
例会では、今後もプログラムマネジャーや、プロジェクトマネージャーにとって有益な情報を提供してまいります。
引き続きご期待ください。
ご講演の資料は、協会ホームページの「ジャーナルPMAJライブラリ」の月例会開催資料に、発表資料をアップロードしていますので個人会員の方はご参照いただければと思います。
尚、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集していますので、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
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