「第287回例会」報告
枝窪 肇 : 10月号
【データ】
開催日時: |
2023年8月25日(金) 19:00~20:30 |
テーマ: |
大規模プロジェクトのPMOに求められること
~うまく運営するためのコツ~ |
講師: |
苅谷 大介 氏/TIS株式会社 ビジネスイノベーションユニット プロジェクトマネジメントビジネス部 |
日頃、プロジェクトマネジメントの実践、研究、検証などに携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、8月に開催された第287回例会についてレポートいたします。
~はじめに~
プロジェクトを実践する多くの会社では、PMO業務を行う部署を設置し、プロジェクト遂行を支援していることと思います。私(筆者)の会社でもPMO部署がプロジェクト遂行のために色々な支援を提供しています。
今回のご講演では、大規模プロジェクトのPMO経験が豊富な講師から、自らの経験を踏まえたお話を伺えるということで、プロジェクトをうまく運営するための具体的なヒントを得られると期待しながら拝聴いたしました。
~講演概要~
- 〇 「PM支援」「実行支援型PMO」の役割
「PM支援」「実行支援型PMO」は右図赤枠の「第1層」「第2層」のレイヤのサービスを提供する。
〇 プロジェクトの成功とは?
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、「Q(品質)」「C(コスト)」「D(納期)」の3つの側面で2019年のデータをもとに総合評価したところ、情報収集したプロジェクト全体の59%は「成功」、残る41%はQCDのいずれかで「失敗」という結果であった。
QCDを管理してプロジェクトを推進し、PMをサポートするのがPMOならば、その役割はとても重要である。
〇 プロジェクト管理のコツ、勘所
・ 立ち上げ前
- ① PMOはできればPJ計画作成段階から参加すべき
PJ管理の観点でQCDに加え「P: Planning=提案」が追加されることがある。
顧客への提案段階で、QCD全般のPJ管理に必要な工期がマスタスケジュールに盛り込まれているかをチェックする。
・ 立ち上げ時
- ① PMあるいは開発現場の有力者を味方にすべき
PMOにとって、特に大規模PJにおいて、情報収集は命である。「現場の生の声」も貴重な情報源である。
- ② PJ管理ルールの定着は粘り強く対応すべき
PJ管理ルールはメンバーに使ってもらえなければ意味がない。
「絵に描いた餅」にならないよう、ルールの定着に向けて粘り強く対応する。そのため、現場の声を聴き、時にはルールの見直しも検討する。
- ③ PMOの敵味方を見分ける
PMOに行為を持ってくれる人、役割を理解してくれる人(味方)もいれば、敵対心を見せる人(敵)もいる。「味方」と「敵」を整理して、特に「敵」に対してはどうアプローチするかを検討する。
・ 運営開始時
- ① 「ことなかれ主義」の打破を目指す
ルールを守ることと問題を発生させないことはイコールではない。「問題発生を報告しないことこそが罪である」ことを価値観として共有できる職場づくりに貢献する。
そのために、PMOはいわば「表と裏の顔を持つ存在」となる。現場への対応はいつも「穏便・笑顔」、でもその裏側では現場の報告をうのみにせず検証し、未報告の潜在課題をあぶり出す。
- ② 「プロセスの見える化」を実現する
遅延リスクの芽を摘むために、タスクや課題対応の途中のプロセスを見える化する。
~筆者所感~
今回の講演では、PMOがプロジェクトや遂行メンバーを支援する際に、どのような観点を大切にし、また、陥り易い罠にかからないようにどのようなチームを醸成しているかが理解できました。自分がPMOとして活動するときにはもちろんのこと、PMやプロジェクトメンバーとしてプロジェクトを遂行する立場の時でも気を付ける/心がけるべきことがわかり、PMOの手を煩わすことなくプロジェクト成功に近づくヒントも得られたと思います。
例会という機会を通じて貴重なお話ししていただけたことに、心より感謝を申し上げます。
ご講演の資料は協会ホームページの「ジャーナルPMAJライブラリ」の月例会開催資料に、発表資料をアップロードしていますので個人会員の方はご参照いただければと思います。
なお、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。ご興味をお持ちの方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
以上
|