「エンタテイメント論」(187)
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第 2 部 エンタテイメント論の本質
7 本質
●先月号での約束した事を果たす前に
先月号の終わりで解説すると「約束した事」を本号で果たし、その上で「作曲の解説」に戻りたい。
約束した事とは、日本の多くの会社が実施している社長教育、社員教育、リカレント教育などを主催する会社が期待した成果を挙げているか? 受講者が期待した効果を得ているか? 労力と時間と金などの無駄使いになっていないか? そもそも筆者は何故その様な疑問を持ったのかか?などに答える事である。
しかしこの疑問に正しく答える為には、紙面の許す範囲で、教育に関わる問題、社員に関わる問題などの背景にある日本が抱える問題、国際的な立場、将来の事などを論じる必要性がある。ついては以下に例示した幾つかの代表的な問題を先ず解説し、その上で約束を果たしたい。「作曲の解説」に辿り着くまで2~3カ月掛かる。お許し願いたい。
出典:背後の問題解析
dreamstime.com/looking
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●問題 日本の低い人材への投資額
一つ目は、人材への投資額についての問題である。
世界での人材投資額のGDP比では、日本は主要国で最低水準で「蚊帳の外」である。日本は米国の4分の1、仏国や独国の5分の1、英国の6分の1の低さである(経済産業研究所:2018年の調査)。
昔の日本の企業は、終身雇用制の影響が大きかったが、兎にも角にも、人材への投資は世界一であった。勿論、国際競争力も世界一。今は世界最低水準の国際競争力となった。何故、こんな情けない国になってしまったのか? この疑問に筆者なりの考えを別途の機会で述べたい。
さて昔、日本は「Japan is Number One」ではなく、「Japan as Number One」、即ち「世界一の日本として」と云うナンバーワンを当然の認識前提として扱われ、日本が世界に如何に貢献すべきか?が論じられた国であったのである。
筆者は若い頃、まさにJapan as Number Oneの時代、新日鐡ニューヨーク駐在員兼米国新日鐡のTreasurer(経理担当重役)の職務を遂行していた。筆者が接した多くの米国の企業人(社長&社員)は、筆者に「尊敬の念」と「妬みの念」等が混ざった複雑な思いを抱いていた様であった。
日本には昔から「国是」と云うか、「主義」と云うか、多くの国民が信じて守って来た事がある。その一つが「日本は天然資源が極めて乏しい。唯一の資源は人である。一人でも多くの優れた人材を育成し、国を豊かにするべし」であった。この日本は、今、人材育成の為の投資が世界最低になった。何とした事か! 信じられない国になった。この事を知る日本人は、今、どれほどいるのか?
●問題 日本の低い社員の平均賃金、マネージャー級の年収、そして高度専門人材の平均年収
2つ目は、「社員の平均賃金」、「マネージャー級の平均年収」、「高度専門人材の平均年収」に関する問題である。
「社員の平均賃金」の過去30年間の国際比較で、日本は約3万8千ドルで、過去30年間、ほぼ変わっていない。韓国は4万3千ドルで日本より多い。独国、英国、仏国、スエーデンは、4万8千ドルから5万ドルで米国に追従する。米国は7万5千ドルで、この間に1.5倍以上増えた。日本は主要国で最低水準。OECDの4万2千ドルより低い。またもや「蚊帳の外」に置き去りにされた(OECD 2021年調査)。
「マネージャー級の社員の平均年収」は、2019年~2022年までの国際比較で、日本は10万ドルで横這い。中国は12万ドルから14万ドルに増加、独国は15万ドルで横ばい。米国は19万ドルから22万ドルに増加。日本は米国の半分、中国よりも低い(米国人材コンサル会社:マーサーの2022年調査)。
「高度専門人材」の平均年収は、タイは6万5千ドル、日本は8万8千ドル、韓国は11万7千ドル、中国は11万6千ドル、独国は13万5千ドル、米国は19万7千ドル。世界各国は優秀な人材を確保する為の賃上げ競争中。日本は主要国で最低ではないが低い(米国人材コンサル会社:マーサーの2022年調査)。「今のまま」では日本に世界から高度専門人材が来ない。それどころか、優秀な日本人の高度専門家が日本から脱出中。この事を知る日本人は、今、どれほどいるのか?
●問題 日本の低い労働生産性
3つ目は、生産性についての問題である。
日本の時間当たり労働生産性は49.9 ドル。OECD 加盟 38 カ国中 27 位。米国は85.0 ドル 6 割弱。1970 年以降、最低順位。日本の一人当たり労働生産性は、81,510 ドル。OECD 加盟 38 カ国中 29 位。ポーランドは85,748 ドル、ハンガリーは76,697 ドルと云った東欧諸国、ニュージーランドは85,383 ドル、ポルトガルは77,970 ドルとほぼ同水準、西欧諸国では英国は101,405 ドル、スペインは97,737 ドルより 2 割近く低い。1970 年以降で最低の 29 位に落ち込んだ(OECD 2021年調査)。
日本生産性本部の2021年調査では、下図の通り、日本はOECD加盟国中で27位。OECDの平均より下回る。日本は情けない国に凋落した。この事を知る日本人は、今、どれほどいるのか?
●問題 日本の低いベンチャー企業への投資流入額
4つ目はベンチャー企業への投資流入レベルの問題である。
2021年のベンチャー投資流入額は、1位は米国の3761億ドル(約49兆円)で全体の62%、2位は中国の611億ドル、3位はインドの477億ドル、日本は11位の35億ドルで0.6%、米国の100分の1。日本より上位の国は英国、独国、仏国、スエーデンなど。世界のベンチャ―企業が重点的に投資し、成長しているフィンテック、健康、交通の3分野では、2018年~2021年の日本の投資成長率は10%~40%。世界の110~140%(日本経済新聞社の2021年度の調査)
日本の事業~産業~経済の発展を牽引する「ベンチャー企業」への日本の投資流入額は、米国の100分1である。また日本の成長率は世界の10分の1である。日本はベンチャー事業分野で世界の潮流の「蚊帳の外」にいる。これでは日本は発展しない。この事を知る日本人は、今、どれほどいるのか?
●問題 日本の世界最低の英語力
5つ目は、世界の国と国、企業と企業などの国際競争の場で、相互の意思疎通、情報交換等は、如何にすれば、適時、適切に実施できるかの問題である。
この問題は詰まるところ、全世界で最も適時、適切に相互の意思疎通や情報交換等を可能させる言語となった英語(米語)を如何に巧くに操れるかの問題に帰着する。英語を母国語とする米英豪などを除いた111ケ国の中で独国は1位、伊国は30位、韓国36位、中国62位、日本は80位である(EFエデュケーション・ファースト・本部・スイス 2022年調査)。
筆者は「日本は世界最低の英語力の国」と断定する。何故なら日本が国際競争の真の相手となる国々の中で最低だからだ。競争しない相手国と英語力の差を云々しても無意味だからだ。この事を知る日本人は、今、どれほどいるのか?
何故、日本の政治家、官僚、教師、教授、ジャーナリスト、企業人などは、「日本の英語力が世界最低である」と認識しないのか? 何故、世界各国が躍起となって英語力を向上させようとしているのに、日本だけは「抜本的英語力向上対策」を実践しないのか?
そもそも日本の全ての学生は受験英語の為に必死で英語を学んで来た。最近は小学生まで学んでいる。しかも日本中、英語が溢れている。
出典:英語の授業
bing.com/images/school_class_
english.png&exph=408&expw
にも拘わらず、日本は世界最低の英語力の国になった。この暗い問題はこれ以上知りたくないだろう。しかし知るべきである。何故なら我々の未来に関わるからだ。英語に関する問題の続きを次号で解説したい。
つづく
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