グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第174回)
製造業向けプロジェクトマネジメント研修モデル

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :9月号

 7月初めに一泊で、妻と日光旅行をした。昨年12月末に予定した金沢旅行は、すべてをセットしてから金沢の強い雪のため、足元の不安を考えて直前に中止したので、本当に久しぶりの家族旅行となった。
 
 日光市内の東照宮や輪王寺参詣に始まり、いろは坂を越えて中禅寺湖へ。華厳の滝を見た後は、戦場ヶ原を越えて湯元温泉の入り口の湯ノ湖まで観光できた。滝では、湯滝、竜頭の滝も見てきた(これで日光三名瀑巡り)。中禅寺湖畔の宿に泊まって2日目は中禅寺湖のクルーズ船に乗り、湖面からの男体山の雄姿やワンストップでの旧跡参りを楽しんだが、梅雨時にめずらしい快晴に恵まれた。
 
 日光を訪れたのは社会人二年目の紅葉時の中禅寺湖社員旅行以来で、55年ぶりとなったが、観光地としての日光の価値の高さに感銘を受けた。我が住所からは箱根が割合近いし、湖があって、温泉や高原があって、日光は箱根と同じような所と思っていたが、スケールと深さが全然異なっていた。
 
 奥日光で、栃木県と群馬県の位置関係について自分の完全な思い違いに気付いた。関東育ちで埼玉県にも住んでいたこともあるのに、両県の位置の右と左(正確には東と西)を完全に間違えていたのだ。湯元温泉の入り口で、観光タクシーの運転手さんから、この先は金精峠で、沼田方面に行きます、の一言で、はっと我に返った。
 
 このような思い違い・思い込みが多くなり、認知力の低下と戦いながら、新たなプロジェクトマネジメントのテーマに臨んでいる。今やっているのは、一つはナレッジバランス型プロジェクトマネジメントの概念作りで、もうひとつは、製造業向けのプロジェクトマネジメント研修モデルの開発だ。
 
 前者については、6月号で紹介したが、再度、何を言いたいのか、をお伝えすると、
 
  • 世界のプロジェクトマネジメント界は学、実践者とも極めて保守的で、プロジェクトマネジメントの発展を考える際に、自己(PM界)中心にしか思考しない。
  • PM運営を取り巻く社会・経済環境は大きく変化しており、プラントなど50年以上にわたりプロジェクト運営手法が確立している業界以外では、新たなプロジェクト要素や環境が多々あり、在来のPM体系だけでは対応できない。
  • 現下のプロジェクト類型を観察し、より広範にメタ・プロジェクトマネジメント体系を考える必要がある。
 
との趣旨で、次の図に示すような、プロジェクトマネジメントの「ハードナレッジ」の他に、変わりゆくプロジェクトのコンテキストに対応するための「プラグマティックナレッジ」(文化人類学の大家Geert Hofstede (1928-2020)が提唱するような、“世界の状況は常に変動するという前提で、変化に対応して行動し結果を出していくためのナレッジ“)、そして、現在の特徴である、価値共創時代にあって、「場」の理論知識をうまくバランスさせていくことが重要である、とするPM観である。これは、筆者の今世紀に入ってからやってきた、プロジェクトマネジメント進化モデルの研究の一環でもあるので、なんとか、概念を発表できればよいと思っている。

ナレッジバランス型プロジェクトマネジメントのプラットフォーム
ナレッジバランス型プロジェクトマネジメントのプラットフォーム

 製造業向けのプロジェクトマネジメント研修モデルというのは、筆者が定常的に研修を行なっている海外産業人材育成の協会で、プロジェクトマネジメント研修に参加する海外製造業のビジネス人は、全体の受講者の過半数を占め、製造業の受講者は、同じプロジェクトマネジメントといっても、コンテキストがかなり異なることが多いので、今後の研修機会のために(筆者のではなく、むしろ後継の講師のために)、製造業にフォーカスした研修モデルを作るというオウン・プロジェクトである。教材の一次開発は終えて、10月に実践オンライン終日セミナーをやり、来年からレギュラー研修にも取り入れていく計画だ。
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